100 PEOPLE 未来をつくるひと。 / プレミアムメンバー限定

【対談】ブック・コーディネイター内沼晋太郎さん×YADOKARI|100 PEOPLE 未来をつくるひと。(VOL.001)

蜂谷智子プロフィールアイコン | 2014.12.5
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YADOKARIメンバーが未来をつくるひと100人に会いに行く対談企画「100 PEOPLE 未来をつくるひと。」VOL.001は、ブック・コーディネイターの内沼晋太郎さん。下北沢の書店「B&Bのオーナーであり、『本の逆襲』の著者であるといった「本の未来」をつくる活動を軸に、横浜みなとみらいにあるシェア・スペース「BUKATSUDO」のクリエイティブ・ディレクターも務めるなど、多彩に活躍されています。今回は出版業界の内外で野心的な試みを続ける内沼晋太郎さんに、今ある現実の枠を超えて、未来を作る発想法について伺いました。(進行・構成 蜂谷智子)

左から時計回りに内沼晋太郎氏 YADOKARIウエスギセイタ、さわだいっせい

左から時計回りに内沼晋太郎さん YADOKARIウエスギセイタ、さわだいっせい。

壊すのではなく、考え直す。

── 「100 PEOPLE 未来をつくるひと。」企画のVOL.001の対談相手を内沼さんにお願いしたのは、内沼さんとYADOKARIは、「本」「家」と、それぞれ取り組む分野は違えど、スタンスや方法が似ていると感じたからです。 内沼さんは今でこそ下北沢の「B&B」という書店のオーナーですが、活動を始めて10年程は、書店や出版社や取次といった、本にまつわる既存の業界に属するのではなく、「numabooks」という自身のブランドを持って、業界の外側から「本の未来」を作るべくアプローチをされていました。

YADOKARIも代表の2人は元々WEBが専門で、住宅業界にいたわけではありません。しかし今では商業的なものも含めていくつもの建築プロジェクトを動かすようになっています。

両者とも、業界の外側に居たからこそ「本」「家」の固定化した概念を拡張したり、硬直化した業界に刺激を与えたりする活動ができているのではないでしょうか。

B&Bは下北沢にある書店。「これからの街の本屋」をコンセプトに、営業している。本のセレクトに加えて店内で飲めるビールやコーヒーのおいしさや、毎日行われているトークイベントの面白さも評判が高い。

B&Bは下北沢にある書店。「これからの街の本屋」をコンセプトに、営業している。本のセレクトに加えて店内で飲めるビールやコーヒー、毎日行われているトークイベントも評判が高い。

内沼晋太郎さん(以下、内沼) そうですね。ぼくは「本」をもう少し広く捉えなおすべきだと思っています。

例えば、ひとくちに「本が好き」と言っても、人それぞれ「好き」と感じて大事にしている要素が違います。エンタテインメントとしての「物語」も、仕事に役立つ「情報」も、一見ムダだけど知的好奇心を満たす「知識」も、人生の様々な局面に実用的な「ノウハウ」も、あらゆる「中身」がすべて、本に書かれています。それらを読むことに即効性のようなものを求める人もいれば、中長期的に人生に作用することを求める人もいる。さらにただ「中身」を読みたいだけではなく、それが書かれた本を「モノ」として物理的に所有したいという欲求があったりもして、その中でも「コレクション」として綺麗に保存する人の欲求と、「道具」として直接線を引いたり書き込みをしたりして使う人の欲求とは、全然別です。まだまだ、言い出したらキリがありません。

「本とは何か」という本質についての認識には、大きな個人差がある。そういう前提に立って考え直すと、必ずしもこれまで出版流通が扱ってきた紙の本だけを「本」としなくてもいいわけです。誰かにとっては、それが電子書籍やウェブサイトでも構わないでしょうし、あるいは音楽や映像でもよかったり、具体的な場所があってそこで人とコミュニケーションすることでよかったりもする。

出版流通に乗っている紙の本だけを「本」としてしまうと、従来の出版業界の衰退とともに「本」が「元気がない」「なくなっていく」ということになってしまう。けれどこうした「本」の本質についてあらためて考えてみると、実際はただ「本」の領域が広くなってきているだけ、形が変わってきているだけと捉えることができます。

ぼくのこのような考え方を、「本」に対する冒涜だと感じる人もいるかもしれません。けれど一方で、「本の仕事に就きたい」と考える学生や転職希望の人に対して、出版業界のベテランの方々はすぐに「やめておけ」と言う。ぼくはそちらのほうがずっと「本」に対する冒涜だと思っています。出版業界全体の売上が下がっているからといって、素晴らしい物語に感動したいという気持ちや、世界についてもっと知りたいという知的好奇心が、人々から失われているということではない。「本はこんなに面白いよ」「本の領域はこんなに広いよ」と言い続けることで、広義の「本」に面白いプレイヤーが集まってくるようにしたいと考えています。

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Writer 蜂谷智子

東京在住。教育系出版社に勤める一児の母。「学び」というと学生時代を思い出す人も多いのでは? でも人との出会いや、新しい分野への挑戦にも、学びがありますよね。この大きな意味での学びを得る体験を、私は「マナビゴト」と呼んでいます。

ここ数年、取材などで日本各地のワークショップや勉強会での取り組みを知り、新しいマナビゴトの波を感じています。昔ながらの知恵と新しいアイデアを融合する数々の試み。そこに未来の暮らしを豊かにする可能性があると思うのです。このコラムではそんな現在進行形のマナビゴトをご紹介していきます!

FB:tmkhachiya

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