21世紀の健康で文化的なミニマム

メイクラブ♡を支援する家

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「少子化を解決する家」をコンセプトに


「日本の社会問題を解決する建築」という途方もないテーマと「実現可能なプラン」という制約のコンペで、途方に暮れた建築学科の学生に相談に乗った時の話である。

学生の求めに応えるのは好きだし、自分で言うのもなんだが得意だ。その前年の学生が別のコンペに応募した際には、知恵をつけた上で「大賞は取れないけど、特別賞が取れると思うよ」と“予言”して送り出したら、ちゃんと日刊工業新聞の特別賞をいただいた。その実績もあり、学生が頼ってきたのである。

困惑するのも無理はない。こんな漠然とした課題設定で、なおかつ、それを建築で解決して見せろと言うのだ。これはコンペを設定した側の不手際だ。賞とか助成金とか補助金の制度設計や審査をさんざんやってきた経験からそう思った。

幸いなことに相談に来たのが、与えられた課題の裏側も想像できる優秀な学生だったので 、運営側の阿呆さ具合を確認した上で、「どうやっても正解はない。模範解答を探すのはムダだ」「とびきり優れたプランを出して、それをあちら側が理解できるかどうかを試してやろうじゃないか」という話に至り、で、「二十歳の男子学生にとって最も差し迫った人生課題は何か?」と訊ねたところ「それは異性の話」(に決まってるわな、聞いた私が野暮でした)と返答があった。

露骨に「メイクラブ♡する家」との名称で応募するのはさすがにはばかられたので、「少子化を解決する家」をコンセプトに「日本のお父さんは仕事が忙しいので、どうせ週末にしか帰ってこない」というリアルなマーケットの実情に鑑み、「1LDK(生活スペース)+ベッドルーム(最初は子作りスペースで、できた後は、母子が過ごすスペース。男はこの時点で用なし)」という割り切ったシンプルモダンのレイアウトでプランを組んだ。

これが、YADOKARIが紹介する北欧のコンパクトハウスと、良く似ているのだ。

 

フィンランドには週末を過ごす「メイクラブ♡キャビン」がある


その後、フィンランドに視察に行く機会があり、大学教授の別荘に招かれる機会を得た。

湖畔沿いに建ててあった別荘は、セルフビルドだったので、YADOKARIで紹介されているような洒落たものではなかったが、オール木造の家屋は「1LDK(生活スペース+ベッド)+サウナ」で、来客をもてなす要素もあるにはあったが、カップルで過ごすことが主眼の小屋であった。実際、ゲストである我々をサウナに「押し込めて」、ホストカップルはあたりまえのように「メイクラブ♡」(ただし着衣レベルで)を始めた。愛し合うことに集中できるように、テレビもなければ、パソコンもない。勤勉なフィンランド人のエリートであっても、週末はオフプラグで過ごすんですね。なるほど、日本にラブホテルがあるように、フィンランドには週末を過ごす「メイクラブ♡キャビン」があるのだ。

YADOKARIで紹介されている家はシンプルで美しいけれど、「夫婦子ども二人の標準家庭」が生活するには収納はおろか寝るスペースも足りないし、キッチンもシャワールームも最低限しかなさそうだ。 で、実際にフィンランドも都市部の住宅はきっちり広い。YADOKARIで紹介される建物は—一部、オフィスはあるものの—「メイクラブ♡の小屋」と見るのが正しいようだ。

だからと言って、日本にこうしたスモールハウスのニーズがないとは思わない。

忙しく働く日本のビジネスパーソンは、どうせ、深夜に寝に帰ってくるか、下手をすると週末にしか帰ってこない。だったら、YADOKARI的な家で事足りる。

前年度に特別賞を受賞し、公費で、北欧を視察して、実際に北欧風リフォームを手がけた女子学生からは「ブラックユーモアな人」と折り紙をつけて頂いた不肖の先生である私としては、「イクメン」とか「男性の子育て参加」という理想論は踏まえつつ、コンペの主催者に皮肉の一つも飛ばさないとやってられない気持ちだったので、これ見よがしに応募案の頭の良さを誇示してやれと「n=n+1」(少子化を解決する家)と再帰的記述で名付けて応募した。思いっきりビーンボールだと自覚はあったけれど、コンペ主催者が何を考えているのかさっぱり想像がつかない以上、仕方ない。

 

日本人の生活に見合った、それでいて、週末は楽しく過ごせる家


残念ながら、この応募案で賞は取れなかったけれど、マーケッターとしてはYADOKARIの家は需要があると思っている。男は(雇用機会均等法以降は女性も)「会社に住んで、家に通う」(by宮脇檀)ありさま。おまけに離婚は当たり前のステップ婚時代。これからの日本のマイホームの全てがYADOKARI型になるわけではないが、独身やDINKS、あるいはシングルマザー(ファーザー)の過渡的段階には最適だ。

単に、北欧のモデルを輸入するだけじゃなく、日本人の(悲しく過酷な)生活に見合った、それでいて、週末は楽しく過ごせる家ってコンセプトで世に訴えたら、受けると思うし、また、過労死三万人/年への社会批判にもなるんじゃないでしょうか。

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月極本3 特集「好きなお金、嫌いなお金。」

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