オリジナリティ溢れる工業規格品。快適な暮らしを叶えた小屋

via: https://www.dwell.com/

ここは北の大国・ロシアの田舎の村。アーセナル国内現代美術センターの館長として働くアンナは、友人と楽しく休日を過ごしたり、ゆっくり読書をしたり、花を生けたりするためのホリデーハウスを購入した。

この形を見ただけで、建築好きの方はピンとくるかもしれない。高さに比べて横幅があり、そしてこのシンプルそうで独特なフォルム、DublDom製の小屋だ。

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DublDomは、モスクワを中心に活動する建築家のイヴァン・オフチンニコフが主体となって立ち上げた会社。ロシアの田舎の「ロークオリティー」な小屋をアイデアのベースとし、それを発展させ、プレハブ式でシンプル、かつローコストで満足度の高い小屋を顧客に提供する会社として評価を得ている。

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この家は2ユニットからなり、それぞれのモジュールは6メートル以下。これはロシアの木材の標準規格に合わせたものだ。横幅は約2.4メートル、高さは3メートル。これもロジスティクスの制約に合わせたものだ。この家は他の家と同様いわば「工業製品」の部類に入るが、全くそれを感じさせない、むしろ非常にオリジナリティー溢れる小屋となっている。

この小屋は「DublDom 2.87」というバージョンで、傾斜のある屋根にキャビンと非常にシンプルなつくりだ。しかしオーナーであるアンナの細かな要求に応え、単なるシンプルさを超えた、ログハウスにも共通するような非常に心地よい雰囲気を醸している。

正面から見ると、左右サイドに縦長の板が壁材として貼られている。真ん中には、木でかたどられたマツ材フレームの中にガラス窓がはめ込まれている。

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外見からみてなんとなく想像がつくかもしれないが、この小屋には敷居があまりない。見ただけで風通しが良さそうだ。これはオーナーであるアンナの要望だったそう。都会での多くは狭い部屋での生活となり、だんだんと心理的にも閉じた状態になってしまうが、オープンなスペースを作ることで心も開放されるというのだ。

梁や柱もまるでデザインの一部だ。落ち着いた色の材木が、この家の趣を演出するのに一際役に立っている。

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南に面したベランダには屋根が。夏の日差しが強い日は日よけとして役立ち、冬の日差しが弱いときでも、たくさんのガラスによって室内に光をたくさん取り込めるため、寒さを和らげることができる。

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中側から見ると外がクリアに見えることに気付く。ガラス材が壁の大部分に貼られているだけでなく、配置された家具が少ないことで、外の景色も大きく見えるのだ。これもアンナさんのこだわりで、家の中ではなく回りの風景にフォーカスしたかったのだそうだ。

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日本の家は、海外の家と比べると「個性の違う一個人が住む家」としてのオリジナリティーがあまり感じられない。
しかし、アンナさんの家のように「工業フォーマットに則った家」であっても、要求に細かく応えることで、非常にオリジナリティーが溢れた、魅力のある家を生み出すこともできるのだ。このような事例から、日本の住宅も何か学び取ることができるのかもしれない。

 

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