三輪車でメガネを売るというチャレンジ。Rivet&Swayに学ぶ小商い

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三輪車が好きだ。と言っても、子供用の三輪車じゃなくて大人の商売用の三輪車。ダイハツ「ミゼット」のレトロでポップなスタイル、タイやインドのトゥクトゥクにオートリクシャー。オート三輪のちょっと動物っぽい顔のフロントやコンパクトなボディに、なぜか心惹かれてしまう人は少なくないだろう。

ここで紹介するのは、Rivet & Swayの “Specs on Wheels(車輪の上の眼鏡たち)” と名付けられた可愛らしい三輪自転車のポップアップ・ショップ。

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Rivet & Swayは、2011年アメリカ・シアトルで、女性専門のアイウェアのオンラインショップ・ブランドとしてスタートアップした企業だ。度付き眼鏡のフレームを、$169という先行ライバルよりはるかに高い価格を付け、デザインオリエンテッドな戦略で果敢に勝負を挑んだ。そう、巨人IBMに挑んだAppleのように。

via: statesofmatter.com specsは[spectacles: 眼鏡]の略語

Rivet & Swayのデザイン性の高いファッショナブルなフレームは、セレブたちのフォローも味方につけて、人気は一気に上昇。 シアトルの街の、ビューティーサロンを巡るポップアップ・ショップとして開発された “Specs on Wheels” も、一躍話題となりブランドイメージの浸透に貢献した。女性がお洒落に関心を持つ絶妙のタイミングに、メガネを小商いする心憎いマーケティングだ。

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陳列棚を自転車から降ろして昇降機付きのカートに乗せれば、タイニーショップに変身。これならスペースの限られたサロンでも設置できる。

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これまでメガネを実店舗で購買していた女性たちを、オンラインでの購入へと導くためには、自宅での試着を可能にする必要があった。そしてRivet & Swayは、それを実現した。しかし、試着済みのフレームを新品同様にするためのコストは予想外に重くのしかかり、同社の経営を次第に圧迫していった。

2014年、ファンドからの投資を集めることに成功し、ビジネスも順調に推移していると思われていたRivet & Swayは、突然ブランドの終焉をアナウンスする。ブランド・フォロワーの女性たちは、みな驚き、悲しんだ。
三輪自転車のポップアップ・ショップは、こうしてビジネスの頂上でその姿を消した。

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Amazon出身の女性CEO・Sarah Bryarは「ブランドを、自分のチームを手放すことで生き延びらせることはできたかもしれない。でも、それはもうRivet & Swayじゃない。花道は頂上で飾りたかったの」と振り返る。

社員14人のスタートアップRivet & Swayは、アメリカの女性がメガネを実店舗で購入する習慣を、大きく変えるまでのインパクトは与えられなかった。それでも、三輪自転車のポップアップに象徴されるDIY精神に満ちたそのチャレンジは、きっと未来にその種を頂上から見事にばら撒いたはずだ。
わたしたちも、小商いを通してブランディングを行うという彼らの残した一つの種から、何かを学べるような気がする。

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