【タイニーハウスに行ってみた】持続可能性を目指すタイニーハウス村「Proeftuin Erasmusveld」

(c)Naoko Kurata

パーマカルチャーという言葉をご存知でしょうか。これは、永続性を表すパーマネント(permanent)と農業のアグリカルチャー(agriculture)を組み合わせ、「永続する農業」という意味を持たせた造語。タイニーハウスに住みたいと考える人は、環境問題に関しても強い問題意識を持っていることが多いようで、オランダにおけるタイニーハウス・ムーブメントはパーマカルチャーとは切り離せない関係です。この秋、オランダにパーマカルチャーを追求しながら生活するタイニーハウス村が誕生しました。そのオープンデー(一般公開日)が開催されたので、筆者が垣間見た村の様子をご紹介いたします。

大都会に生まれたタイニーハウス村

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その村の名前は「Proeftuin Erasmusveld」。オランダのデンハーグという、政治経済の中心地でアムステルダムに次ぐオランダ第二の都市にあります。大都会の中にありながら、実はこのデンハーグでは大規模な「パーマカルチャーおよび近隣住人との共生を目指す集合住宅」の開発が進んでいるのです。畑や緑に囲まれた350戸を有するマンションを建築中で、2018年春に一斉に売り出し予定なのだとか。

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そのマンションはタイニーハウスという訳ではないのですが、2017年秋、その敷地の一部にタイニーハウスの集落が誕生しました。住めるのは2年間という期限付きですが、5軒のタイニーハウスが集う(予定の)「Proeftuin Erasmusveld」。彼らの暮らしぶりや集落の様子を公開するオープンデーが開催されたので、筆者も見学に行ってきました。

タイニーハウス村の美しい農園

(c)Naoko Kurata
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敷地に入ってまず目につくのは、住人とボランティアたちによって管理されている畑。

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ハンモックや遊具のあるプレイエリアもありました。農作業の合間に、ハンモックでゆったり休憩なんて最高に贅沢ですね!

そもそもこのオープンデーの目的は「人々に自然の素晴らしさを感じて欲しい」「シンプルライフと持続可能性に基づく生活から刺激をうけて欲しい」ということだったそうです。
早速筆者は、彼らの農園から刺激を受けることができました。

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オープンデーには、タイニーハウス村関係者が出品するガレージセールも。古い倉庫が良い雰囲気を醸し出していました。

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けれど、何といっても来場者の関心はタイニーハウスの見学。畑や倉庫のあるエリアとタイニーハウスたちは区切られていて、30分おきにガイド付きで一斉に見学に回ることになります。この画像は、ゲート前で見学を待つ人々。30分おきにこれくらいの人数が集まるのってすごくないですか? この村の注目度の高さがうかがえます。

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満を持して、筆者もいよいよ見学ツアーに出発です!

猫と共に住む美しいタイニーハウス

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この敷地内には5軒のタイニーハウスが建築される予定ですが、まだオープンから日が浅いこともあり見学できたのは3軒のみ(2軒はまだ建設の初期段階のようです)。そして前述のように2年限定での居住なので、3軒すべて移動が可能なモバイル・ハウスでした。

(c)Naoko Kurata
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まず1軒目は、このモバイル・ハウス。オランダ人カップルが、2匹の猫と暮らしています。余談ですが、「タイニーハウスの住人のアンケート」内でこのカップルは自分たちを「猫の召使」と書いていました。猫と召使の住むタイニーハウスって可愛らしいですね。

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入口の上には、猫のためのつり橋兼ハンモックが。さすが召使は、主人のために尽くしています!

(c)Naoko Kurata
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この2枚は、入口の左側。下にくつろぎのリビングスペースがあり、上にはロフトが。4.8mという家の高さを生かしたロフトは、生活スペースとしても十分に機能しそうです。

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そして、家の右側にも同じくロフトが。

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こちら側のロフトは梯子ではなく、キッチン奥にある階段で上っていくスタイルでした。ロフト手前に設置した本棚のおかげで、下からの視線をさえぎることができるので、タイニーハウスでありながらしっかりとプライベート空間を確保できているのです。時間の都合で筆者はこのロフトをのぞけませんでしたが、おそらく寝室として使っているのでしょう。

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そして筆者が一番驚いたのが、天井に半透明な素材が使われていたこと。日本の夏などはこれでは辛いかもしれませんが、冬が暗く長いオランダでは、太陽光は貴重な存在。日中は電灯の使用も不要になりますね。

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彼らは生活水に雨水を浄化して使っているのだとか。トイレはコンポストトイレですが、それ以外の排水も浄化してから処分しているそうです。

友人や父親と作り上げるセルフビルド・タイニーハウス「Soleros」

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2軒目は、「Soleros」と名付けられたタイニーハウス。ちなみにこの家は、筆者を案内してくれたガイドの男性の家でした。

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2016年12月に建築をスタートしたのだとか。その時はまだこの「Proeftuin Erasmusveld」はオープン前だったので、別の場所で友人や父親の助けを借りながらコツコツと作り上げていったそう。

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コンポスト・トイレなどまだ完成していない部分も多くありましたが、屋根のソーラーパネルからの送電や雨水のリサイクルなどは順調におこなえているようです。

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ここでガイドの男性が面白いことを教えてくれたのですが、彼らの公式な住所は、「Proeftuin Erasmusveld」敷地内にあるこの建物になっているのだとか。「共通の家」(het gemeenschappelijk huis)と呼ばれるこの場所は彼らのコミュニティ・スペースのような存在で、個人の郵便物や請求書などもこの建物宛てに届くのだそう。

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そして敷地内には、公共コンポスト・トイレも設置されているので、タイニーハウス建築中に自宅にトイレが無い状態でも困ることはないのだとか。これなら、完成前にタイニーハウスに住みながら作業することも可能ですね!

家主のセンスが光る、青いタイニーハウス

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そして最後になる3軒目は、この青いタイニーハウス。

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反対側から見ると分かりませんが、微妙なせり出しが。室内のロフトスペースがより広く確保できる構造になっているのです。

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23㎡の室内は、男性の一人暮らしには十分な広さ。

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木の香りのする室内はセンス良くすっきりとまとめられていて、家主の「ガールフレンドが長居していく」というコメントも納得の心地よさでした。

(c)Naoko Kurata
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室内ばかりではなく、エクステリアにもそのセンスは生かされていました。こんなに可愛いタイニーハウスなら、ぜひ住んでみたいですね!

環境に配慮された「Proeftuin Erasmusveld」

(c)Naoko Kurata
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タイニーハウスのエリア内は、歩いても良い場所が決まっています。先ほど見た畑のスペース以外にも、タイニーハウスの住人が植物の種をまいたりしているので、注意が必要なのです。それを知らず、家の写真を撮影しようとグリーンスペースに踏み込んだ筆者は、一度注意されてしまいました。環境への配慮が足りなかったと反省です。

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環境といえば、住人のゴミはこのように分別されていました。これとは別に、個人でゴミを使ったコンポストを設置している方もいました。

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今回のオープンデーに手ごたえを感じたのか、以降は毎月「Proeftuin Erasmusveld」オープンデーを開催してくれることになったようです。それ以外にも、1500㎡ある農園部分での農業ボランティアを体験できる「Natuurwerkdag」なども順次開催予定。けれどすべて不定期開催なので、ご興味ある場合は、まめに彼らのホームページの新着情報をチェックしてみて下さい。

デンハーグという都会にありながら、これほど自然に恵まれた場所があったなんて、今回の見学ツアーは筆者にとっても驚きの体験になりました。畑での自給自足と、自分で建てたタイニーハウスに住める幸せを両立できる住人たちを羨ましく思います。
筆者もぜひまた、別の季節にこの「Proeftuin Erasmusveld」を再訪したいです。

Via:
proeftuinerasmusveld.nl