無人ショップで生鮮食品を買いたい?「Robomart」に見る小売店の未来

via: robomart.co

地域の小さな八百屋さんや魚屋さんで買物するのは楽しい。活きのいい本日オススメの魚や調理法を聞いたり、ときにはおまけしてくれたり冗談を言いあったり。大げさにいうと生きている実感を感じられる買物体験がそこにある。

一方そんな街の小売店は、大型スーパーや今後拡大するだろうオンラインの生鮮食品販売で、その存在が脅かされている。カリフォルニア州のスタートアップ Robomartによる生鮮食品の自走ショップのビジョンから、小売業の未来と顧客体験について考えてみたい。

 

アメリカではウーバーやテスラの自動運転車が立て続けに死亡事故を起こし、現時点での自動運転テクノロジーの未熟さを露呈してしまった。自動運転に積極的に門戸を開いているアリゾナ州やカリフォルニア州などの今後の対応も注目されるが、自動運転という巨大ビジネスチャンスを世界の自動車メーカーやIT企業があきらめることはないだろう。そして世界のスタートアップたちも、独自のアイデアでこの分野への参入を図っている。

Robomartのコンセプトはきわめて明快だ。オンラインショッピングで伸び悩む生鮮食品を、自動運転ショップで顧客のもとに届けるというアイデアだ。米国での食料品全体のEコマース率はわずかに4.3%(2016年)で、今後の伸びが大きく期待されるものの、オンライン販売がもっとも苦戦しているカテゴリーの1つ。Robomartの創業者のAhmed氏は、「消費者は生鮮食料品を自分の目で確かめて買いたいという思いが強い」と分析している。

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バンタイプの電気自動運転車「Robomart」は、消費者のアプリのコールに応えて最高時速40kmで自走してやってくる。顧客が車体に近づくとリモートで認証してドアをオープン。好きな商品を選んで棚から取り出すと、特許申請中のセンシング技術で購入品を特定、顧客のアカウントに課金する。

車内のほとんどはチルド棚や保温庫が占め、温かいお惣菜、野菜、果物、精肉、乳製品などの専門店としてデリバーする。単体のショップとしてだけでなく、グループを組んで総合食品売り場的な営業もできる。

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Robomartのプラットフォームには、車両のほかにワイヤレス充電装置、運行管理システム、注文管理システムが含まれ、大手食料品チェーンや食品卸売業者、小規模小売店のグループなどに24ヶ月リースで提供するプランだ。

オンラインショップか自動運転の無人店舗か?

2017年の4月に満を持して日本上陸を果たした、生鮮食品や日用品のスピード配送を行う「Amazonフレッシュ」。Amazonの掲げる徹底した顧客第一主義は、Eコマースの顧客体験をめざましく向上させて、日本の消費者のオンラインショッピングに対する意識を劇的に変化させた。Amazonフレッシュが全国展開した後、消費者が生鮮食料品のオンライン購入に抵抗を感じない時代になっていても不思議ではない。

Amazonが密かに自動運転の研究チームを抱えていることは、メディアの報道から明らかになっている。自社で自動運転車を開発するのではなく、他社の自動運転車を物流網に取り入れる計画とみられる。日本国内の物流に自動運転技術が導入された際、ロジスティクスのオペレーションを担うのは、日本の物流大手ではなく、IT企業のAmazon自身である可能性もある。

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無人の物流と配送が可能になった未来では、Amazonなどのオンラインショップと移動無人店舗のいずれが生鮮食料品販売における勝者となるだろうか。

それはおそらく都会と地方で違ってくる。たとえば地方や田舎の消費者が地産地消のライフスタイルを選ぶならば、ローカルの生産者が配送ネットワークを構築して、自動運転の無人店舗を直接消費者のもとに向かわせることができる。いわば草の根式の直販のショップとして。

世界初の無人ストアは、スウェーデンのVikenにオープンした「Näraffär」だと言われているが、考えてみれば、日本の田舎には昔から野菜の無人販売所があった。そこでは店主や店員とのコミュニケーションがないのに、買物体験はなぜか心地いい。販売所のひなびた感じや周りの自然豊かな風景のおかげで、置かれた野菜の背景に生産者の顔がなんとなく思い浮かぶからだろうか。

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つまりは地方の最寄りの生鮮食料品店が消滅してしまった将来に、人々はワンクリックのスマートなショッピングよりも、ローカルの生産者をより身近に感じられる、無人の自動運転店舗での買物体験を選ぶ可能性があるということだ。

無人店舗のデザインはRobomartのようなロボット的なものより、フォルクスワーゲンのバンのようなレトロな親しみやすい外観で、内装もタイニーハウス風のウッディで素朴な感じの方が合うだろう。そして、店内のそれぞれの食料品棚には生産者による手書きの品名やメッセージと顔写真が添えてある。

これならAmazonフレッシュにはない、昔ながらの野菜の無人販売所のような、無人の中で“人”を感じる顧客体験を提供するものになるだろう。

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