斜めの屋根から光が降り注ぐ。サウスロンドンの極細テラスハウスの拡張デザイン

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サウスロンドンにある、幅わずか2.3メートルの3階建てテラスハウス。2つの家屋に挟まれた幅の狭い住宅は、外向きの壁がないために自然光が不足していました。傾斜した屋根を設置して天窓を配置することで、光がたっぷりと差し込む軽やかな住まいへと生まれ変わりました。

かつて大通りに抜ける路地だった土地に建てられた、若いカップルが暮らす極細のテラスハウス。ロンドンの建築スタジオAlma-nacは、限られた予算と敷地の制限のなかで、このスリムハウスの住宅拡張を見事に成功させました。

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「狭く奥まった住居は、まるで閉所恐怖症を呼び起こしそうな場所でした」とAlma-nacのパートナーのトリスタン・ウィグフォール氏。そこで、自然光がたっぷりと住まいの奥まで差し込み、部屋が広く軽快に感じられるようにするためのプランが練られました。

改築前のテラスハウスの日の差さない中心部分は、暗く陰鬱な印象を醸していました。3階建ての建物には、騒がしい大通りに面した窮屈な寝室と書斎の小さなサッシの窓、裏には南向きのバスルームが配置されていました。1階のエントランスのロビーはダイニングルームと兼用されており、申しわけ程度の後部の拡張部分は、キッチンを通って庭へアクセスするのを妨げている状態でした。

近隣の不動産では、アートギャラリーやスタジオなどが1階を占め、上階のアパートと共にテラスハウスが裏側のファサードまで敷地いっぱいに伸びていました。最初に、新しい裏のファサードに、周りと同様のテラスハウスの形状を維持することが検討されました。しかし複数のテラスと屋根の建築の複雑さは、法外なコストに上ることが判明し、住まいの中心まで光を引き込むという点でも問題がありました。

Alma-nacは解決策として、シンプルな施工が可能な、連続するスレートで覆った傾斜した屋根を取り付けることを決定します。住宅の後部を拡張し、緩やかにスロープした屋根に天窓を設置して、自然光が各階の部屋に入るようにデザイン。傾いた屋根を追加することによって、1階にダイニングエリア、2階に予備のベッドルームと、3階に書斎スペースを設けることが可能になりました。

拡張建築の重要なポイントの1つは、フロアをクランク状に折り曲げることで、敷地の裏に位置するメインの南向きの部屋の採光を増やし、庭と空の見通しを良好にすることでした。「各階の床板を曲げることで、フロアから天井までの高さが増して、自然光が住宅の奥まで差し込むようになります」とウィグフォール氏。2.5メートル以上に設定された天井高のデザインは、内部のスペースを最大にし、熱貫流率を最小限に抑えています。

2倍の高さになったダイニングは、幅の狭さを感じさせない開放感です。ドアを開けると裏庭の道と家が一続きになり、まるで美術館にいるような感覚が味わえます。

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天井を傾斜した屋根をオープンにすることで、中央の階段の上に明かり取りが設置できました。これにより、自然光が2階と3階の部屋まで降りそそぎ、天窓を開ければ煙突効果による自然換気が実現できます。両側のレンガの壁は、元の建物の屋根の形状を伝えるために、階段の吹き抜けの上にあえて露出したままにしています。

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天然石の外観のスレートタイルを使用して壁と屋根を覆い、屋根のスロープから垂直な裏側のファサードまで続く一貫したエクステリアのデザインとなっています。フレームにオーク材を使用したドアが、敷き詰められたスレートを突き抜け、住人をダイニングエリアから庭へと導きます。

狭い空間に十分なストレージを確保することは、もっとも熟慮を重ねた点です。ベッド頭部に収納棚を設け、最上階の上部のロフトスペースやコンパクトなバスルームのレイアウトに至るまで、収納を確保するための工夫が随所に施されています。

2階のメインベッドルームを細長い形状にして、ドレッシングルームを新たに作ることで、ベッドルームのスペースが家具でいっぱいにならないようにしています。

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ホテルの一室を思わせるクリーンなバスルーム。ミラーを兼ねた収納キャビネットが美しい。

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屋根に設置された天窓は、廊下に沿って外界への視界を保持して、傾斜した天井の上を照らすように構成されています。配置をずらした大小の窓のパターンが、ファサードに遊び心を加えてエクステリアをユニークに引き立てています。

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斜め構造の建築は、美術館や劇場などのパブリックな施設では珍しくはないものの、住宅の拡張に使うというのはユニークです。Aフレームの側面をファサードにすることで、施工と材料費も節約できます。うなぎの寝床のような日本の町家などにも活用できそうなアイデアです。

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配置をずらした大小の窓のパターンが、ファサードに遊び心を加えてエクステリアをユニークに引き立てています