住宅をダウンロードして出力。「Building Blocks」なら100万円で家が建つ?

via: building-blocks.io

「本日の目玉商品は、15坪(49平方メートル)の家が104万円!今すぐダウンロードを…」
架空のテレビショッピングが呼びかけるフレーズみたいですが、これはオープンソースの建築プロジェクト「Building Blocks」のお話。建築データを無料で共有し、デジタル・ファブリケーションによって、世界中のどこででも住宅を“出力”してしまおうというものです。

via: medium.com/@miabehrens

YADOKARIでも度々取り上げている、コペンハーゲンにあるIKEAの未来生活研究所「SPACE10」のプロトタイプやアイデア。Building Blocksは、都市の世界的な住宅問題に対して、オープンソースとデジタル・ファブリケーションを使って解決を導き出そうとする同ラボのプロジェクトの一つです。

手ごろな価格の住宅の供給は、今日の多くの都市にとって緊急の課題となっています。2050年には25億人に増える都市人口は、住宅費用をさらに押し上げ、スラム街などの違法な仮設住宅のエリアが増大する可能性があります。SPACE10では、世界中の人々が、良いデザインの住宅を手頃な価格で手に入れられるための研究を続けてきました。

via: instagram.com/space10_journal

「グローバルに対応可能な、低コストで柔軟性のある持続可能な住宅デザインを開発すること」というSPACE10の課題におよそ半年に渡ってチャレンジしたのは、デンマークの建築科の学生ヨハンネ・ホルム=ジェンセンとミア・ベーレンスという2人の女性。昔ながらの職人技と現代の生産技術を組み合わせることで、「1つのマシン+1つのマテリアル=1つのスペース」というシンプルな公式を実現させました。

via: building-blocks.io Johanne Holm-Jensen (左) とMia Behrens (右)

Building Blocksのコンセプトは、デジタル・ファブリケーションのツールを用いて、ローカルで住宅を建築しようというものです。ここで言うツールとは、コンピューター制御のCNCフライス盤や、レーザーカッター、3Dプリンターなどのこと。これらは時代とともに進化を遂げて、より小さくより安く、ユーザーフレンドリーなものになって、やがて家庭や街角に工場が出現するかのような未来が予測されています。

Building Blocksの材料は、持続可能な森林資源と認められた「FSC森林認証」を受けた単一の合板を使用。場所を選ばず安価に手に入る標準化されたエコな素材であり、プロトタイプの製作に使われたCNCフライス盤にも適していました。

via: building-blocks.io

「持続可能なものを構築するためには、多くの人にとって魅力的な製品である必要があります。建築は柔軟かつシンプルな構造で、品質を犠牲にせずに手頃な価格でなければなりません」とミア・ベーレンス。

Building Blocksの最初のプロトタイプは、デンマークのスティーヴン市に2ヵ月間で建築されました。設置床面積は49平方メートルで、建築規制の承認の必要のない大きさに設定されています。システムはモジュール式になっており、ビルダーは必要に応じて寸法を調整できます。プロトタイプの建築資材のコストは、1平方メートルあたり163ユーロ(約2万2000円, 1ユーロ=130円)、合計で8,000ユーロ(約104万円)でした。

via: building-blocks.io

「オープンソースによって時間のかかる製造工程や中間業者を排除して、高額な輸送コストも削減可能です。グローバルに共有しローカルで生産することで、持続可能なソリューションを得ることができます。個別の用途や材料に従って設計を調整したり、追加することも簡単です」。

ミアの説明によると、Building Blocksのデザインアプローチには、「シンプルさ」と「正直」であることに焦点が当てられたとのことです。

「デザインは、世界中の様々なランドスケープやカルチャーに、機能的、構造的、視覚的にマッチする必要があります。私たちは、この条件を満たす唯一の方法は、非常にシンプルな構造デザインであると判断しました。シンプルさによって、外観はどんな場所でも場違いに見えることなく、機能と構造の変更も容易になります」。

via: instagram.com/space10_journal

「何も隠していない“正直な”アーキテクチャであることを心がけました。ビルダーや利用者は、目で見てBuilding Blocksの構造をすぐに把握できます。天井を支えている垂木や、支柱から床下の梁まですべての構造が見えるように、オープンにデザインしています」。

via: building-blocks.io

ミアが公開した記事では、現状のBuilding Blocksの問題点や課題も明らかにされています。

「フレームの組み立てとファサードの取り付けは、 IKEAの大型家具を組み立てるのと同じように簡単でした。高い湿度の中で、合板で建築することには懸念がありましたが、雨が接着剤に触れたり合板が反るのを防ぐために、タールを外壁全面に塗装しました。これにより建物の耐久性も向上しました」。

via: building-blocks.io

「建築前に、合板パーツが寒く、湿度の高い状態にさらされる時間を減らすことが重要です。そうしないと、それぞれが膨張してフィットさせるのが困難となります。
すべてを組み立てる前に、個々のパーツすべてをタール塗装することで、建築が容易になるだけでなく、タールによる確実な保護が期待できます。私たちの間違いは、最初にフレームを組み立て、ファサードを挿入した後に、全体をタール塗装したことです。フレームを組み立てるときにファサードを取り付ければ、時間を大幅に節約できます」。

via: building-blocks.io

プロトタイプの水平部分に傾斜がないので、水をうまく排水できないというのも未解決の問題とのこと。断熱材や換気を含め、耐久性と居住性を確認するための長時間のテストが必要だとミアは述べています。

Building Blocksは現在進行形のプロジェクトです。多くの建築家やビルダー、デザイナーからフィードバックを得て学習し、プロジェクトを改善するために、デザインファイルをオープンソースとして共有することが決定されました。デジタルデータのデザインは、ネットで伝送されオンデマンドでダウンロードできます。これは、ローカルでの建築を可能にし、持続可能な方法で得られた地産の材料の利用が期待できます。

via: instagram.com/space10_journal

Building Blocksのライセンスには、クリエイティブ・コモンズ BY 4.0 (Creative Commons Attribution 4.0 International License) が適用されており、適切なクレジットを表示して変更を示せば、許可なしにデザインを共有・コピー・改変できます。ファイルをダウンロードをしたい人は、files@building-blocks.io までリクエストのメールをくださいとのことです。

オープンソースによって世界中のクリエイティブと専門知識を、低コストで持続可能な良いデザインの住宅に活用すること。ダウンロード可能な住宅は、「未来の住宅の民主化」のファーストステップとして注目に値するものだと思います。
ちなみに、SPACE10のインスタは、アイデアに富むものが多くてとっても面白いですよ。

Via:
building-blocks.io
instagram.com/space10_journal
medium.com/@miabehrens