第9回:鳴子温泉で“伝統手法”の小屋づくり(2)〜製材見学・刻み体験編〜|エコ・フレンドリー

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日本の伝統構法である「板倉構法」で、木の伐採から小屋作りを学ぶ板倉マイスター講習。前回の伐採講習に続き、今回は伐採後の製材工程の見学や、刻みの体験、また小屋作りのための祈祷をしてまいりました。(1回目のチェーンソー講習の様子はこちら

板倉構法とは

板倉構法とは、古来より神社や米倉に使われてきた構法で、厚い板と角材のみを使用し、伝統的な継手・仕口や柱の溝に板を落としこんで壁を作る、日本の伝統建築構法の一つです。今回もまずは座学で、丸太から木材になる過程について図や写真を見ながら学びます。

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年輪の中心を「樹芯」といい、その周りの赤っぽい部分を「芯材」や「赤身」、さらにその外側の白っぽい部分を「辺材」や「白太」と呼びます。赤身の芯材は、かたくて腐りにくく、虫に強いことから、家の構造材に使用されます。

こちらは伝統的な継手・仕口の例。

継手は部材を長手方向に繋ぐ接合。仕口はそれ以外のL形、T形、X形、その他の接合というのが、一般的な区別とのこと。
継手は部材を長手方向に繋ぐ接合。仕口はそれ以外のL形、T形、X形、その他の接合というのが、一般的な区別とのこと。

「樹」から「木」へ

座学で木の部位の特徴を学んだ後は、製材所の見学です。丸太から柱材や板材を製材し、乾燥させていく過程を拝見し、オペレーションの一部を体験。

丸太を角材にする作業中。
丸太を角材にする作業中。

見学をさせていただいた製材所は、株式会社くりこまくんえん。燻煙乾燥と天然乾燥の組み合わせで木材を乾燥しています。燻煙乾燥の際のエネルギーには、化石燃料は使わず、木質エネルギー(ペレットや木っ端)を使用。乾燥後には化学物質は使わずに、燻煙乾燥の際に副産物として得られる木酢液に漬け、防虫防腐処理を行っています。環境負荷を減らし、人の健康を配慮した木材生産をされていらっしゃいます。

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自分で刻み体験!

製材所の見学の後は、いよいよ自分達でも仕口の刻み体験です。現役の大工さんに習いながら、各々刻んで一つの仕口を仕上げます。今回挑戦してみる仕口は「腰掛け蟻落し仕口」。…なんだかすごい名前です。

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まずは大工さんが刻んでおいてくれた実物の見本を拝見。
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接合を外してみるとこんな感じです。

美しい直線の組み合わせ。

シンプルな構造のように見えますが、素人が実際に刻んでみようとすると、どこから線を引いたら良いのか躊躇してしまいます。頂いた図面のようなものには、「cm」の記載がありません。木材の寸法に合わせて、刻むための寸法が調整できるようになっているのですが、この時点から私はすでに苦戦です。
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まずは材木の寸法と、その中心を出していく作業から。大工さんですと、ここで「墨壺」を使用して、切り出すための線引きをしていく「墨つけ」という作業をしていくのですが、素人の私達は鉛筆を使用して、線引きをしていきます。

差金(さしがね)または曲尺(かねじゃく)と呼ばれるL字の定規を使用。
差金(さしがね)または曲尺(かねじゃく)と呼ばれるL字の定規を使用。
計算をしながらの寸法出しと線引き。
計算をしながらの寸法出しと線引き。

線引きが完了したら、鋸(ノコギリ)や鑿(ノミ)刻みで開始です!ノコギリでは縦挽き、横挽きを使いわけます。木目を直角に切るには横挽きを、木目と平行に切るには縦挽きを使用します。

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材に穴をあけたり、細かい部分を削り取ったりする時にはノミを使用します。ノミはこの種類の多さ。素人ではどれをどんな時に使うのか見当がつきません。

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使用するノミの種類、刃の当て方など、大工さんに教えていただき、自分達でも刻みましたが、大工さんの刻みのスピードの早さたるや、さすがとしか言いようがありませんでした。

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必死に刻み、他の皆さんがどんどん完成させていく中、私もやっと完成の瞬間を迎えることができました!…が、うまくハマりません。どうやら線引きの時点で間違っていた箇所があったようで、うまく接合しません。「ここまでやったのに…」とガックリしましたが、大工さんに調整をしてもらって、何とか接合!

見本と比べると断面がガタガタ。隙間もあるのが判ります。それでも何とかくっついて良かった!…とホッとしました。
見本と比べると断面がガタガタ。隙間もあるのが判ります。それでも何とかくっついて良かった!…とホッとしました。

伝統構法の継手・仕口の存在は以前から知っていましたが、自分でその刻みを体験して、改めて先人の知恵と、繊細かつスピーディーなプロの技に感嘆してきました。次回は、板倉構法での小屋作り講習最終回。いよいよ小屋の組立になります。

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関連リンク

NPO法人しんりん(板倉マイスター講習主催団体)
一級建築事務所 株式会社 里山建築研究所