【インタビュー】こんな場所で勉強したい! 個別指導塾Study Roomがつくる新しい塾のカタチ

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塾とは思えない温もりのある空間|写真提供:京都市の個別指導塾 Study Room

みなさんは学生時代、学習塾や予備校に通っていただろうか? その当時は勉強が嫌いでしょうがなかったが、大人になってから勉強の愉しさを発見する方も多いことと思う。
この記事で紹介するStudy Roomとは、京都市左京区に教室を構える中高生向けの個別指導塾だ。ここでは、学校の授業のような1人の先生が複数の生徒に対して勉強を教えるのではなく、先生が生徒の横に座りマンツーマンで生徒の理解度に合わせて勉強を教えている。
一般的な個別指導塾の教室は、周りの状況に影響されず集中できるように仕切りが使われ、小さなブースがいくつも並ぶ空間になっている。しかし、Study Roomは一見カフェを思わせるような、樹を使った温もりが感じられる、オープンスペースの環境を提供している。
今回は、Study Roomの教室長 原田翔一さんに、特徴的な塾を始めたきっかけや、今後の目標についてうかがった。

教育が多様化する中で生徒と先生が交流できる塾を

ここ数年で教育業界が少しずつ変わり始めている。きっかけのひとつは教育のIT化だ。大手予備校や学習塾では映像授業の提供が一般的になってきた。そのため、ネット環境を通せばどこに住んでいても一流講師の授業を受けられるようになった。また、国内外トップレベルの大学の講義がweb上で視聴できるようになってきている。
2015年、大学入試制度でも改革が行われることが文部科学省から発表された。現在の大学入試センター試験が廃止され、2020年度より新たに「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が実施される予定だ。現在のセンター試験の評価はどれだけ知識を身につけたかで決まるが、新たな試験は知識の活用能力や課題に対する発見力・探究心・表現力が問われるようになる。このように急激に変化する社会に適応できる人材の育成のために、教育業界では抜本的な改革がなされようとしている。

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ロゴのRには?と!が隠れている|写真提供:京都市の個別指導塾 Study Room

Study Roomは、最寄りの京阪三条駅から歩いて約10分。いつものんびりとした空気が流れている鴨川を眺めながら、繁華街を離れ北上していくとStudy Roomにたどり着く。マンション前に置かれている黒板の看板を頼りに2階へと上がると、そこがStudy Roomの教室だ。2015年6月にオープンしたばかりで、ドアを開けると樹の香りが出迎えてくれる。生徒は毎月増えていて教室の活気は日々高まっているようだ。
この場所はもともと事務所としてそのまま使える物件であったが、心地よい教室にするため、空間を丸ごとリノベーションした。

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床ははがし、天井も取っ払った。天井部分のペンキはDIYだそう|写真提供:京都市の個別指導塾 Study Room

教室を訪れた大人たちのほとんどが、「こんな塾があればもっと勉強したのに!」と言いたくなりそうな空間には無垢材がふんだんに使われている。教室で時間を過ごすと、円形にデザインされた内装と、やさしい樹の色と香りが気持ちを落ち着かせてくれる。
勉強をするだけなら、机と椅子を並べれば事足りるはず。いったいなぜ教室をカフェのようなスペースにしたのだろう?この空間をプロデュースした、Study Roomの教室長 原田翔一さんに、お話をうかがった。

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柔らかで落ち着いた話し方が印象的だった原田さん|写真提供:京都市の個別指導塾 Study Room

成績を上げるためには、居心地の良い勉強部屋が必要

── 「なぜ、このようなおしゃれな学習塾をつくったのですか?」

原田翔一さん(以下、敬称略)「私が勉強や作業に集中できる場所がカフェなんです。居心地の良い内装でコーヒーの匂いがして、程よい雑音と周囲に人がいるのが最高で。調べてみると、無垢材と程よい雑音が集中力を高めてくれるという研究結果を発見して、それが決め手でした。それに、無垢の木材がたくさん使われている空間ってそれだけで気持ちいいじゃないですか。だからおしゃれ感を第一にしたというよりは、この内装は居心地の良い空間を目指した結果なんです。」

── 「確かに居心地の良い空間だと、やりたくない勉強もやってみようと思えそうですね。生徒の反応はどうですか?」

原田 「生徒の反応は上々ですね。起業する際にエリアは関西と決めていましたが、具体的な場所は決めていなくて。その時、いくつかの街にあるカフェをまわって、カフェで勉強している中高生を探してみると、京都が一番多かったんです。それが京都にStudy Roomをオープンした理由のひとつなので、環境を気に入った生徒は授業時間以外も勉強しに来てくれますよ。自ら勉強しに来る姿勢が成績アップには重要ですし、成績が上がるとそれに比例して本人のやる気も上がってきます。」

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黒板にはStudy Roomの理念が描かれている|写真提供:京都市の個別指導塾 Study Room

── 「成績を上げるには自習が大事なんですね。でも自習ってなかなかやる気になれないと思いますが、どんな工夫をしているんですか?」

原田 「たしかにほとんどの生徒にとって自習は避けたいものですよね。自分で目標を立てて勉強する習慣がある生徒はいいんですが、そうでない生徒には自習時間を1ヶ月のスケジュールに組み込むようにしています。成績を上げるためには勉強の質と量の両方を確保しなければいけません。正直言って、週1度の塾の授業で学校で習う膨大な範囲はカバーしきれません。だから、自宅でやる気がないままダラダラと長時間勉強をするよりも、決めた時間内は塾で勉強に集中して、それ以外の時間は好きなことをしていいよと生徒に言っています。だから自習を終えてから『帰ってゲームする〜』と嬉しそうに帰っていく生徒もいますよ。こういうメリハリが大事ですよね。」

前職時代の経験が活きたクラウドを活用した雑務と情報管理

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丸みのある机と椅子は、他の生徒とのつながりを感じさせる|写真提供:京都市の個別指導塾 Study Room

── 「ホームページにStudy Roomの特徴として『クラウドシステムで効率的な教室運営』とありますが、具体的にはどのような運営をされていますか?」

原田 「この教室では、Evernoteという、メモを作成・管理できるアプリを使って情報管理を行っています。日々のスケジュールなどの情報や生徒の授業進捗情報など、教室運営に関わるもののほとんどをEvernoteで整理し保存しています。これによって、パソコンかスマートフォンさえあれば場所を問わずに情報確認や仕事ができるので便利です。紙で生徒の情報を管理している場合、講師(大学生)は教室に来なければ生徒の情報を見ることができませんし、授業後は引き継ぎを書くために帰る時間が遅れてしまいまい、講師のストレスになりかねません。クラウド上で情報を共有していれば、これらの作業をスキマ時間で効率よく行えて自分の時間を大切にすることができるんですよ。それに全て紙で管理だと、探す手間や場所を取ってしまうなどデメリットも多いですからね。」

── 「確かにそれは便利ですね。他にクラウドシステムを導入したメリットはありますか?」

原田 「前職で教育系の会社に勤めている時に、大量の手書き書類の作成に追われたり紙で保管されている生徒の情報を探すのに手間取ったり、とにかく雑務で時間に追われて大変でした。そのため生徒とコミュニケーションを取る時間がなかなか確保できないと感じていました。大人数の生徒を相手にする学校の先生と違って個別指導塾の先生の重要な役割のひとつは、一人ひとりの生徒としっかり向き合ってあげることだと思うんです。それは勉強を教えるだけではなくて、生徒が一人では抱えきれない問題について一緒に考えてあげる時間も必要だと思うんです。」

学校の勉強だけでなく将来を考え生活の幅が広がるサードプレイスに

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イベントは時折笑いがおき和やかな雰囲気で進んだそうだ|写真提供:京都市の個別指導塾 Study Room

── 「勉強以外の面でも生徒と向き合うためにどんなことをされていますか?」

原田 「生徒との挨拶をはじめ、勉強以外の面でもいろいろと話を聞くようにしています。最初はなかなか話せなかった生徒もだんだん慣れてきて、自分のことを話してくれるように変化していますよ。塾としては、定期的に生徒と講師が自分の興味感心や身の回りの出来事と向き合うワークに取り組んでいます。中高生の生徒はもちろんのこと、講師の大学生も、何気なく過ごしがちな日常や、これまでの積み重ねを自覚することを目的としています。このワークは紙に書き出すので、授業後に生徒と講師のペアで行うと自身のことを知れるだけでなく、相手のことも知れて信頼関係を築くきっかけにもなるんです。」

── 「生徒と講師が共に成長できる環境は素敵ですね。そういえば、最近生徒と講師向けにイベントをされたそうですね。」

原田 「社会人の方を招いてトークイベントを行いました。今回は某飲料メーカーの営業の方をゲストに迎え、自身の仕事や学生時代について話をしていただきました。中高生や講師にとっては普段接することのない大人の話を楽しみながら聞いてもらえましたね。私自身も大学でたくさんの人に出会い、様々な生き方や考え方に触れたことが今に活きているんです。だから、今後もこのような機会を作って生徒と講師にいろんな大人と接点を持ってもらうことで、何か掴んでほしいですね。」

── 「他の塾とは違った取り組みとして、塾内に図書館を設けたり、レンタルスペースとして運営されているそうですが、これらの目的はなんですか?」

原田 「中高生は家と学校以外のコミュニティに属していることはほとんどありません。それではどうしても見れる世界が狭くなってしまうので、中高生が定期的に訪れる塾として地域に貢献できることを考えました。それが教室で行っているイベントや、まちライブラリー、レンタルスペースなどの活動です。
まちライブラリーは場所を設けて、地域の人から持ち寄られた本で運営する図書館で、現在全国で200ヶ所ほどあるそうです。この取り組みでは、地域の人と本を介してつながれる場となるので、これから生徒と地域の間にどのようなことが生まれるのかが楽しみですね。それに生徒にとってもたくさんの本を目にするチャンスがあるってすごくいいじゃないですか。
レンタルスペースは、Study Roomが閉まっている平日・土曜の午前中と日曜日に行っています。『居心地の良い空間』という強みを活かしてなにかできないかな? と考えたものです。まぁ単純に塾として使っていない時間にも家賃が発生しててもったいないなと思ったのもありますが(笑)。そのまま場所として使っていただけるのも嬉しいですが、近頃は共催イベントの企画を考えています。具体的には、Study Roomとして場所を規定の価格より安く提供し、利用者の方と教育系のイベントを一緒に作ることやイベントレポートにStudy RoomのPRを書いてもらうなどの方法を考えています。誰かの想いやチャレンジを表現する機会に場所として関われるなら、大人が挑戦する姿を生徒に見せることもできますしね。
それに、場所を活用してまちライブラリーやレンタルスペースを運営して出会った素敵な大人の方に、生徒向けのイベントゲストになってもらうなど、有機的なつながりが生まれると嬉しいしワクワクするじゃないですか。」

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日中は窓一面から柔らかな光が差し込む|写真提供:京都市の個別指導塾 Study Room

教育に求められるものが多様化している今だからこそ、塾としての役割は持ちつつ生徒や地域と協働していくStudy Roomのような塾のカタチはこれから増えていくのではないだろうか。
学校で教わるような答えがある教科としての勉強をしながら、答えのない問いにも目を向けて考えていく子供が増えることは、これからの未来を考える上で重要なことだ。なによりそんな子供がたくさんいる社会は、今よりきっと楽しくなることだろうと思う。Study Roomの今後の取り組みに注目したい。

Study Roomの詳しい情報はこちら

Study Roomでは以下の募集を行っています。
・中高生の入塾生
・大学(大学院)生のアルバイト講師
・レンタルスペースの利用者
・まちライブラリー@Study Roomへの寄贈本
詳しい情報は公式HPをご覧ください。

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