アイデアは移住者の悩みから。ローカルな旅の手助けをする「国東半島手帖」とは?

旅行の計画を立てる時、どのように情報収集を行いますか?

書店へ向かいガイドブックを開いたり、ネットを使って検索したり、その土地出身の友達におすすめの場所を聞いてみたり。

王道のルートを巡るのも楽しいですが、せっかくならその土地のディープな部分を知りたくなるもの。

2017年10月に発売される「国東(くにさき)半島手帖」は、歴史ある行事や祭りのスケジュールが掲載されており、ローカルな旅の手助けとなります。

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大分県北東部に位置するげんこつのような丸い形をした「国東(くにさき)半島」。
全国の八幡の総本山である宇佐神宮を中心に栄えた、神と仏が絡まりあった独特な文化「六郷満山文化(※)」が残っています。
※六郷満山とは、1300年前に仁聞菩薩が開いた山岳宗教、また国東半島の六郷にある寺院の総称。

個性豊かな文化を持つ国東半島ですが、半島全体の情報がなかなか集めづらい現状があります。
そんな土地に長く愛され、継承されている行事をひとつの形にまとめたものが「国東半島手帖」。

今回、2017年秋の発売にむけて制作をすすめている「国東半島手帖プロジェクト」のメンバー、清成麻理子さんにお話を伺いました。

自身の悩みから、半島を楽しめるツールづくりへ

2014年10月、豊後高田市の地域おこし協力隊となり東京から移住してきた清成麻理子さん。
映画の美術デザイナーとして働いていた清成さんにとって、大分県への移住は念願だったそう。

清成麻理子さん(以下、清成)「大分県は、日本の縮図かと思うくらいおもしろい県だなと思いました。高原地帯や国東半島のような秘境、別府みたいな観光地もあって地形的に魅力を感じましたし、文化の多様性もあります。大分県内を撮影した映画にも3本携わらせていただいて、ご縁を感じました」

清成さんを始め、「国東半島手帖プロジェクト」は国東半島の地域おこし協力隊の現役・OGの5名で結成されています。
プロジェクト結成の発端は、国東半島外からきたメンバーならではの悩みでした。

清成「メンバーとは、プロジェクトを立ち上げる前からいつもお互いの地域の情報をシェアする仲でしたね。それぞれが地域にあるおもしろそうなお祭りや神社を休日に探検していたんです。メンバー同士で話をしていく中で、ある共通の悩みの話になりました」

ー悩みですか?

清成「国東半島内の情報がまとまっている媒体がないということです。ネットを探せば出てくるけれど、市町村に検索をかけなければ見つかりにくい状況で。点在している情報が半島全体でまとめられていたらいいのにと感じた中で話にあがったのが『国東半島手帖』の作成です」

ーご自身の悩みから国東半島手帖のアイデアが生まれたのですね。「半島全体の情報がまとまっていない!」というのは移住者ならではの視点ですよね。実際に住んでいたら、自分の地域の情報が分かればいいという考えになりそうです。一緒に活動しているメンバーについて、教えていただいてもよろしいですか。

清成「プロジェクトに参加しているメンバーは全部で5名です。私含め2名がOG、3名が現役の協力隊。それぞれ国東半島を形成する国東市、杵築市、速見郡日出町、豊後高田市の4つの地域に所属しています。」

ーなるほど。メンバーが半島内に散らばっていると情報が集めやすそうです!

ー現役・OGの地域おこし協力隊によって作成される国東半島手帖。どのような内容なのでしょうか。

清成「読み物のような冊子をイメージされるかと思いますが、旅行のお供として持ち歩いていただけるよう、スケジュール帳の仕様になっています。手帖はシンプルに、メンバー5名でつくることのできる規模、なおかつ内容がまとまったものにしています。大きな特徴は、スケジュール部分に国東半島と宇佐神宮の行事予定が入っていること。半島内のお祭りは旧暦で開催されるものもあるため、旧暦の表示を入れることを大切にしています。」

ー例えばどんなお祭りが掲載されているのでしょうか?

清成「有名なお祭りですと「修正鬼会(しゅじょうおにえ)という火祭りがあります。1000年以上の歴史のあるお祭りで、国東半島では3箇所、豊後高田市と国東市(2箇所)で行われています。」

ー1000年!歴史のあるお祭りですね。

清成「そうですね。お祭りの話を地域の人としていると『そのお祭りは最近できたらしいよ』と言われることがあるのですが、最近といっても300年前なんですよ(笑)。国東半島のお祭りの歴史は深いなと感じましたね。2018年には『六郷満山』が開基して1300年を迎えるため、関連イベントも沢山開催されるんですよ。これからの時期は各地のお田植祭だけでも相当沢山ありますしね。行事の予定が多すぎて、スケジュールに書ききれないくらいです!」

足をつかって半島内の行事をすくいあげる

ーお祭りの情報はどのように集めていくのでしょうか。

清成「メンバーそれぞれが所属する自治体を担当し、実際に行事に足を運ぶことで生の情報を集めています。手帖内にはとじ込みで地図も入れる予定なので、どの行事がどこで開催されるのか確認しやすくなっています。国東半島手帳の本紙とは別に、お祭りの特集記事を盛り込んだ別冊も作成するんですよ!別冊には、毎年6〜10個ずつお祭りを取り上げ、より深くお祭りのことを知っていただけたらと思っています」

ー別冊もあり、充実した内容になりそうです…!

清成「観光協会ではすくい切れないような地域のちいさなお祭りも自分たちが足で集めたいと思っています。お祭りによってはギリギリにならないと日程がわからないものもあるのですが、なるべくたくさん!」

ー熱量がすごいです…!国東半島手帖はどんな方に手にとってもらいたいですか。

清成「主には旅をする方々と、実際に国東半島に住んでいてもっと半島のことを知りたい方々ですね。私や他の協力隊のメンバーが国東半島に訪れたときに感じた情報の集まりにくさを解決するよう、半島の行事を網羅しています!半島に足を運んでいただく前に読んでもらってもいいですし、長期滞在する方にも「今週末はこんなお祭りがあるんだな」と半島の歴史あるお祭りに興味をもっていただき、足を運んでいただけたら嬉しいです!。メインの手帖というよりは、サブの手帖として、旅行や余暇の予定を確認するのに使っていただけたらいいですね。現在、ゲストハウスなどの宿泊施設に置いていただこうとも考えています」

ー手帖を持っていたら気になるお祭りめがけて旅行ができそうです!制作状況など、今後のスケジュールについても教えてください。

清成「国東半島手帖は今年の10月に2018年版を発売予定です。6月中に制作資金を調達するためにクラウドファンディングの立ち上げ、試作版の作成をおこなっていきます。2017年7,8月の2カ月分の予定をいれた試作版からアンケート調査やご意見をいただき、内容を詰めてきます」

ー半年後の販売を楽しみにしております!

清成「2018年を皮切りに毎年発行していく予定です。半島に長くつづく文化をしっていただく足がかりにしていきたいです。なかなか足を運びにくいイメージのある秘境だからこそ『国東半島手帖』がパスポート代わりになれば嬉しいですね」

秘境のイメージから足を運びにくいと思われている国東半島ですが、東京、大阪からの移住者が増えているそう。東京からはLCCが、大阪からは別府までのフェリーもでています。
旅行先のひとつとして、国東半島を選んでみてはいかがでしょうか。
手帖片手に秘境をめぐれば、六郷満山文化をより感じることができるはずです。

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