女子的リアル離島暮らし

第14回:遠い島が近くなる時|女子的リアル離島暮らし

三谷晶子プロフィールアイコン | 2014.10.7
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YADOKARIをご覧の皆様、こんにちは。
小説家の三谷晶子です。
秋分の日も過ぎ、暦の上でも気温の上でも秋真っ盛り。ですが、加計呂麻島の海はまだまだ青く、晴れた日は海に入って過ごしています。

先日行った沖永良部島の鍾乳洞の中の様子。何万年もかけて作られた鍾乳洞は一見の価値があります。

先日行った沖永良部島の鍾乳洞の中の様子。何万年もかけて作られた鍾乳洞は一見の価値があります。

さて、今日は、12年前に島で出会った友人と島巡りをした時の話をしようと思います。

LCCの就航のおかげで島に来てくれた友人


奄美大島にはこの夏にLCCのバニラエアが就航し、島内で大きな話題となりました。夏の繁忙期でもセール時ならば、成田→奄美大島が最安値4000円という激安価格。おかげで奄美や加計呂麻島も例年より多くの方が訪れてくれたようです。

LCCの就航のおかげで私の友人も数多く島を訪れてくれました。その一人が沖永良部島で出会った友人、Yuhkiです。

彼女の長男はもう10歳。「時間が過ぎるのって早いね」なんてお互いしみじみしたり。

彼女の長男はもう10歳。「時間が過ぎるのって早いね」なんてお互いしみじみしたり。

彼女と出会った場所は鹿児島県沖永良部島。私がいる加計呂麻島からは船で6時間ほど、奄美より沖縄からのほうが近い離島です。
彼女と出会った当時、私は22歳、彼女は21歳。彼女は海外へ旅行する資金を貯めるために沖永良部島にリゾートバイトに来ていて、私は書きたいと思いながらも手をつけられなかった小説を今度こそ集中して書くために沖永良部島にいました。

LCC就航で人の流れがどう変わったか


現在、神奈川県に住む彼女が奄美諸島を訪れるのは、7年ぶり。今回、彼女が訪れるきっかけになったのは、やはりバニラエアの就航が大きな理由だったようです。
彼女は現在小学校4年生と3歳の子どものお母さん。子育てで時間もなく、また、二人を連れてくるとなると既存の価格だとなかなかハードルが高かったそう。

沖永良部島の空港近くにある道路から茂みをくぐっていく ビーチ。どこから空でどこから海なのかわからないぐらい透き通っています。

沖永良部島の空港近くにある道路から茂みをくぐっていく
ビーチ。どこから空でどこから海なのかわからないぐらい透き通っています。

今まで奄美大島から東京への便はJALのみ。オフシーズンにスーパー先得などの割引を使っても片道一人16000円~20000円以上かかりました。
その点、バニラエアはセール時期なら片道3000円代で行けることも。3人で来ても往復2~3万円もかかりません。

沖永良部島に訪れている間、たまたまあった島の若者主催のフェスティバルでベリーダンスを踊る彼女。お世話になった島で踊れることがすごく嬉しかったみたい。

沖永良部島に訪れている間、たまたまあった島の若者主催のフェスティバルでベリーダンスを踊る彼女。お世話になった島で踊れることがすごく嬉しかったみたい。

「下手したら、熱海とか行くより安いかも」
これは彼女のセリフ。
このように、LCCが就航することで「遠い場所でも近くに感じる」ようになるところがあると思います。

「東京行くんで、関西も行きます」


先日、関西在住の友人と連絡を取り合った時のこと。
「今度、京都で店を開くからおいでよ」
そう言われて、私はこう答えました。
「あ、じゃあ、私、10月下旬に東京で用事があるから、そこから行きます」
「え? 東京じゃないよ、京都だよ」
「はい。どっちにしろ近いし、陸続きだし。LCCとか使えば全然安いし」
「陸続きって! 島暮らしだとそんな風に思うようになるのかよ!」
そう言われて、何だか改めて自分の感じ方が変わったことにびっくりしました。

同じく沖永良部島の鍾乳洞の中にある結晶状の石。こんな綺麗なものが自然にできるなんてびっくりです。

同じく沖永良部島の鍾乳洞の中にある結晶状の石。こんな綺麗なものが自然にできるなんてびっくりです。

確かに東京に住んでいた頃、関西に行くことなど滅多にありませんでした。行くとしてもかなり『旅行』という感覚で行っていたと思います。
けれど、今、私は東京に行くのも関西に行くのも「ちょっと用事があるから」という気分です。
けれど、考えてみればそれは不思議なことではないような気がします。

例えば東京に住んでいた頃。
都心で友人が飲んでいる最中に呼び出しがかかったとします。例えばそれが深夜だとしたらタクシーで自宅から向かうと数千円。それから飲んで2~3軒ハシゴをしたりすれば、あっという間に数万円近く。そして、帰りもタクシーならまた数千円かかります。
その金額はLCCを使って、東京から北海道や沖縄に行くよりも高い金額です。

地方の方がリーズナブルに観劇や食事ができる


伊勢外宮近くのレストラン、ボン・ヴィヴァンのアミューズ。繊細な盛り付けが美しい。

伊勢外宮近くのレストラン、ボン・ヴィヴァンのアミューズ。繊細な盛り付けが美しい。

先日、私は10年前からファンのバレエダンサー、シルヴィ・ギエムの公演に行きました。2015年でダンサーを引退するというニュースが流れたこともあり、東京公演のチケットは既にソールドアウト。けれど、どうしても見たくて地方公演を検索したところ、なんと三重公演のチケットがまだある。三重にも会いたい人や行きたい場所があった私は、公演と飛行機のチケットをすぐさま予約しました。
ギエムの公演は相変わらずとても素晴らしく、また、行きたい場所のひとつである三重県伊勢市のレストラン、ボン・ヴィヴァンにも久しぶりに訪れることができて、とてもいい旅になりました。

伊勢市駅近くにある築70年以上の古民家を改装したバーRecipeもおすすめのお店です。

伊勢市駅近くにある築70年以上の古民家を改装したバーRecipeもおすすめのお店です。

そして、ギエムの公演も、レストランの食事代も、東京に比べれば格段にリーズナブルだったのです。
シルヴィ・ギエムの公演は東京バレエ団50周年記念公演で東京や大阪など各地を回るツアーでした。東京公演ではS席が22000円。しかし、三重公演ではS席が1万5000円でした。
また、伊勢市のレストラン、ボン・ヴィヴァンは大正時代の電話交換所を改装したすごぶる素敵な雰囲気の場所で、伊勢の素材をふんだんに使ったフレンチを食べさせてくれるところなのですが、夜のコースでも5000円代から。東京ではこのロケーションや雰囲気、サービスや味でこの値段はなかなかないと思います。

東京ではどうしても家賃が高く、それが公演のチケット代やレストランの値段に反映されるものです。また、宿泊代などを考えると、地方で遊んでも東京で遊ぶのと金額としては同じぐらいの場合も。しかし、このようにLCCなどのリーズナブルな移動手段ができたことにより、「行きたいところ、見たいものがあるところに気軽に行く」ことがずいぶん身近になったような気がします。

遠いと思っていた場所との距離が縮まる時


一緒に沖永良部島に行った友人も、このように言っていました。

「遠いと思ってたけど、意外と行こうと思えば行けちゃうんだね」
「そうだよ。冬季なんか夏よりももっと安いと思うし」
「家賃も安いもんね。何なら、いっそ家を借りちゃってもいいかも」
「いいんじゃない? 家賃も1万とか2万ぐらいだし。子どもが夏休みの時とか一ヶ月ぐらい滞在するの、すごくいいと思う」

昼間、砂浜で拾った貝殻やサンゴの欠けらで夏休みの自由研究の課題を作る彼女の子ども達の横でそんな風に話したり。

沖永良部島で一番私が好きなビーチ、泊浜。また来れたことがすごく嬉しかった。

沖永良部島で一番私が好きなビーチ、泊浜。また来れたことがすごく嬉しかった。

「いつでも、おいでよ」
「うん、また来る!」

別れ際、私たちはそんな風に気軽な気持ちで手を振り合いました。

「あそこに行きたいけれど、遠い」「これを見に行きたいけれど、時間がない」。人にはそれぞれ事情があるもので、「行きたいなら行けばいいじゃん」とは簡単には言えないものだとは私も思います。
けれど、遠い場所が近くなる瞬間は、きっと「行こう」と決めるその時です。

こちらも沖永良部島の鍾乳洞の中の風景。鍾乳洞探検は沖永良部島に行ったらぜひともやってみて欲しい体験のひとつ。

こちらも沖永良部島の鍾乳洞の中の風景。鍾乳洞探検は沖永良部島に行ったらぜひともやってみて欲しい体験のひとつ。

沖永良部島から帰るフェリーの中で見た夕暮れの景色。

沖永良部島から帰るフェリーの中で見た夕暮れの景色。

そして、「またおいで」と言われた場所に、本当に降り立つ時に聞こえる「おかえり」の声は、真っ暗な海の中でも光る灯台のように迷った道行きを時に照らしてくれるはずです。

写真協力/沖永良部島ケイビングガイド連盟

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三谷晶子プロフィールアイコン

Writer 三谷晶子

作家、ILAND identityプロデューサー。東京都出身。女性誌のライターを経て『ろくでなし6TEEN』(小学館)にて小説家デビュー。2012年、二作目『腹黒い11人の女』(yours-store)刊行。2012年、福岡県上毛町にて上毛町ワーキングステイに参加。そこから派生した短編小説集『こうげ帖』を展覧会『My home town わたしのマチオモイ帖』に出展。2013年、奄美群島加計呂麻島に移住。第30回国民文化祭かごしま2015・県民自主提案事業『海の上に浮かぶ森のような島は』にて加計呂麻島を舞台にした短編小説を執筆。小説・コラムの執筆活動をしつつ、2015年「加計呂麻島の文化的価値を発信する」ことをテーマとしたアパレルブランド、ILAND identityを開始。

FB:akiko.mitani.5
TW:@akikomitani
HP:Akiko Mitani Ameba Ownd

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