第11回:宮古島で見た、入場料が野菜のフェスティバル|女子的リアル離島暮らし

YADOKARIをご覧の皆様、こんにちは。小説家の三谷晶子です。
現在、私は友人が住む宮古島に滞在しております。
今回の旅の目的は、宮古島及びこの連載の第5回でも登場してくれた友人の住む伊良部島に行くことと『ギブミーベジタブル』というイベントに参加するためでした。

宮古島から橋を通って行ける来間島のビーチ、長間浜。

入場料も出演料も野菜のフェスティバル


『ギブミーベジタブル』とは入場料が野菜やお米、肉、魚などの食材で、アーティストや料理人、スタッフの出演料も食材という音楽フェスティバル。
お客さんが入場料として持ってきた食材を、その場で料理人が即興で料理し、無料で提供。そして、残った食材をアーティストや料理人、スタッフが出演料として分け合うイベントです。
詳しくはこちらの『ギブミーベジタブル』のAboutページをご覧ください。

会場に持ち込まれた大量の野菜。入場者が増えるに従い、テーブルに乗り切れないほどに。

第5回でも登場してくれた伊良部島でレストランを経営する友人夫妻が料理人として出演するということで知ったこのイベント。

入場料が野菜ってどういうこと?

即興で料理ってどうやってやるの?

全部無料ってどんなシステムで行っているの?

これはぜひ見てみたい、と思い、私は半年ぶりに宮古島行きのチケットを予約しました。

イベントのスタートは12時から。13時頃に行くと会場のレーべの村のテーブルの上には大量の野菜や豆腐、宮古そばや伊良部島で栽培した無農薬ハーブがぎっしり。また島の漁師の方や、小麦粉農家の方、泡盛の酒造からも協賛として食材や飲み物が提供されていました。

タープの中では、料理人の方が汗だくになりながらどんどん料理を出していきます。大皿に盛られた料理は会場にあるテーブルに出され、お客さんは次々出てくる料理をどんどん食べていきます。
もちろん、ステージではライブやDJが随時行われ、会場にはお子さんから犬、出演者やスタッフの友人やイベントの噂を知って来た方々などさまざまな方がいらっしゃいました。

海が間近な貸しスペース、『レーべの村』のステージ。
海が間近な貸しスペース、『レーべの村』のステージ。
会場に作られた即席キッチンで持ち込まれた野菜をどんどん料理する調理人の方々。

『ギブミーベジタブル』では、野菜がお金の代わりになります。
そのことでお金の役割とモノの価値について考え、交換することの楽しさを感じてもらえたらと思います。
ギブミーベジタブル aboutより

HPの趣旨を拝見して、このイベントは本来「野菜さえ持って来れば無料」というものではなく、「自分の技能やできることを持ち寄り、それをお金ではないもので交換し合う」というコンセプトだと私は思いました。
来場者も自分の使ったお皿は自分で洗うなど、「サービスを受ける側」という心持ちではなく、「同じイベントに参加している」気持ちが必要とされるのではないかというのが私が受けた印象です。

今回のイベントに行って、そういった趣旨が来場者やスタッフ全員にまで伝わりきっていなかった部分があるのではないかと思いましたが、それでもこういった趣旨のイベントは面白いなぁ、と私は思います。

「お客さん」ではなく「場を作る一員」になる


「お客さん」の立場に立つと、「自分がその場を作る一員である」という意識はなかなか持ちにくいものです。お金が介在する、しないは関係なく、レストランでもイベントでも「自分」がその場にいる以上、「場を作る一員」であることは事実ですが、なかなかそこまで考えられないものだと思います。

ところが、お金が介在しなければ「お客さん」になりようがありません。自動的に「場を作る一員」になるのです。

即興で作られる料理。こちらはイカ墨とスーチカ(塩豚)の焼きそば。
即興で作られる料理。こちらはイカ墨とスーチカ(塩豚)の焼きそば。
伊良部島の無農薬ハーブがたっぷりの島豆腐のマーボー豆腐。

「あ、あれ取ってきて!」
「このお皿、重いから手伝ってくれる?」

そういった会話をしながらお皿洗いなどしつつ、「どこから来たの?」という話をしたら共通の友人を発見したり、話が盛り上がったり。

せっかくイベントに来たのに働くなんていやだと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、共同作業をすることで人と人はぐんと近付けるもの。共同作業で生まれる対等なコミュニケーションは、お金ではなかなか得難いものなのではないかと私は思います。

野菜も、料理も、人が作ったもの


野菜も、料理も、誰かが手をかけて作ったものです。当たり前のことですが、それを実感する機会は特に都市部にいるとなかなか持ちにくいものだと思います。実際に野菜を作ったり、漁をすることも、住む場所によってはなかなかハードルが高いものなのではないでしょうか。

しかし、「買う」のではなく「作る」ということを、農業や漁業をしなくても実感できる方法もあると思います。そのひとつの形をこの『ギブミーベジタブル』は現そうとしているのではないかと感じました。

宮古島から来間島につながる来間大橋。ここを車で飛ばすのはすごく気持ちがいい!
宮古島から来間島につながる来間大橋。ここを車で飛ばすのはすごく気持ちがいい!
来間島の海へと続く畑。お年寄りが農作業をしていました。

『ギブミーベジタブル』は全国各地で行われ、そのノウハウは全て無償で提供されています。詳しくはこちら

自分にできないことを誰かがしてくれるということ、誰かができないことを自分がするということ。
単純だけれど、時に見落とし、忘れてしまいがちなこのことを身近に感じていれば、いつでも気分のよい心持ちでいられるような気がします。

参考、写真協力:ギブミーベジタブル