恵比寿に自然と廃材と5万円のスモールハウス

この小屋のほとんどが廃材と自然素材でつくられています。柱は、岐阜県中津川市の森に倒れている木を伐採し、茅葺き屋根の材料のススキは、神奈川県相模原市の開墾中の土地から伐採して束ねて運び、小屋の壁に使われた荒板は、世田谷区の築60年の民家を解体した廃材。そのほかの廃材も横浜市から四国へ引っ越しする人から譲り受け、窓は高知県の古道具屋さんが売れないからとタダで譲ってくれたモノで、すべてゼロ円です。


ぼくたちの暮らしには「使えるモノ」「使えないモノ」という曖昧な境界線が走っています。今回、ゼロ円だった廃材も専門店では、数千円で売っていますし、木枠の窓も同様です。自分で集めてくると重労働ですし、材料が汚れていたり傷んでいたり使いものにならなかったりしますが、お店で買えば綺麗で質もよく、すぐ使えます。境界線は見方によって変化していきます。

古い家は、ほんとうにボロボロで暮らせないのでしょうか。森にたくさんある竹や檜は、利用価値がないのでしょうか。住宅や建築というフレームでは、切り捨てられてしまうような材料を使って小屋を建てたらどうなるか。

それが恵比寿ガーデンプレイスの「Ebisu Urban Garden Festival」で企画された恵比寿新聞プロデュース「サステナブル・キャビン・プロジェクト」でした。役目を果たした材料で小屋を建てるためにSNSで呼びかけてみると、あちこちから材料が集まってきました。それらを組み合わせて生活芸術家のわたしたち夫妻(石渡のりお・チフミ)が、約2週間ほどで完成させました。
安全のため構造材にツーバイフォーを使用し、茅葺きに透明トタンを組み合わせて屋根にして、自然素材を補ったり、最終的に材料費で約5万円がかかりました。こうやって、身の回りの材料で、何かをつくることを「サバイバル・アート」と呼んでいます。

ぼくたち生活者が「使える/使えない」の価値判断ができるようになれば、たくさんの可能性を手にすることができるのです。この日本は経済的な話を抜きにしても、資源豊かな国です。周囲を海に囲まれ、内陸には山と森が広がり、四季に恵まれています。都市でも自然のなかでも、よく見渡してみれば、誰かにとってのゴミを宝物に変えることができるのです。人生の宝物は、すぐそばにあったりするものです。

この小屋のモデルになっているのが、アフリカのザンビアで建てた泥の家。yadokariにも記事を掲載した旅が本になりました。

「生きるための芸術 40歳を前に退職。夫婦、アートで生きていけるか」
世界中で逞しく生きる人々のライフスタイルをが詰まっていますので、ぜひ読んでみてください。勇気が湧いてきます!amazonはこちら