工業地帯から芸術の街へ。地元にこだわった「世界一美しいホットドッグ屋」

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芸術の街として有名なスペイン、バスク地方に在るビルバオの街。そこに「世界一美しいホットドッグ屋」と称されるホットドッグカートがあります。

カートの名前は「salchibotxo」といいます。salchiはスペイン語でソーセージの意味、botxoはビルバオの愛称です。名前から伝わってくるように、salchibotxoのテーマは”地元”。カートのデザイン、建築からホットドッグに使う食材まですべて、地元のものでまかなっています。
salchibotxoの後ろに見えるのはビルバオの観光名所、グッゲンハイム美術館です。

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デザインを手掛けたのは、これまでも斬新な作品を手掛けてきた地元の建築事務所、arquimañaです。カート本体はスチールの部分と、木製の部分で構成されています。
面白い特徴は羽のようなアルミ製の扉が二つ付いているところ。使わないときには閉じて、営業中には屋根のように開くことで、売り手もお客さんも日差しから守ることができます。

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カートには最大150本のビールと500本のソーセージを保管することができます。見た目の可愛らしさだけでなく、機能性も備えられています。
カート横に添えられた植木鉢は美術館のシンボル、花で作られた犬のオブジェの「Puppy」を意識しているのでしょうか。

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メニューはホットドッグとビールのみと、いたってシンプルですが、ここでも地元へのこだわりが光ります。ソーセージはビルバオの精肉店、La Moderna butchersから。パンは地元のパン屋さんから。そしてビールは地ビールLA SALVEを。地元の味がするお店だから地元の人にはもちろん、観光客にも喜ばれそうです。
メニュー表は可愛い絵で表現。とっても分かりやすい! これならスペイン語が分からなくても簡単に注文できますね。

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その場で鉄板で焼いて提供してくれます。

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salchibotxoを企画したのは地元のレストランBistro Guggenheim Bilbaoです。本店はグッゲンハイム美術館の中にありますので、セットで訪れるのも面白そうです。

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動くからこそ、会いに行きたくなるお店です。

現在は芸術の街として知られるビルバオですが、かつては鉄鋼業を中心とした重工業の都市でした。転機が訪れたのは1980年代のことです。重工業の衰退にともない、街の活気もなくなっていきました。
行政は街の潤いを取り戻すため、抜本的な再開発事業に乗り出します。港に面した重工業の街に、空港や高速道路などの近代的な交通インフラを整備していきました。

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そして、街に観光名所を設けるために発案されたのが美術館の誘致です。ちょうどそのころ、国際戦略を計画していたのがアメリカ・ニューヨークにあったグッゲンハイム美術館でした。
両者の努力によりビルバオは美術館を中心に芸術の街へと発展を遂げました。今では地元の人の人材育成の拠点にもなっており、観光資源にとどまらない恩恵をもたらしています。

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観光面での発展はグッゲンハイム美術館に留まりませんでした。ビルバオの美しい景観は、世界中の著名な建築家たちによってもたらされました。日本人建築家、磯崎新によるイソザキ・アテアもその一つです。客船の寄港地にも指定され、街は活気づきました。

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salchibotxoがなぜ自動車でなく、昔ながらの手押し車なのか。そしてなぜ地元にこだわるのか。それは、街の再興に隠れたビルバオの人々の並々ならぬ想いによるのではないかと思うのです。現在のビルバオと、受け継がれてきたビルバオの歴史、両方を知っている地元の人の想いこそ、アーティステックな外観を持つ昔ながらのホットドッグ屋さんを生み出す源になったのかもしれません。

ビルバオのみならず、街の姿は世界規模で変わり続けていくでしょう。国境を越えて人間同士が知恵を出し合い、次々と住みやすい街が生み出されています。それは私たちが安全で快適な暮らしをするためにも歓迎すべきことです。
一方で、どんな場所にも長年の歳月を経て築かれた独自の文化があります。気候に左右され、時に周辺国に影響されながらも、生み出された地域の文化は、唯一無二の宝物ではないでしょうか。

私が感じたsalchibotxoは、新しいビルバオを楽しみつつも、決して本来の土地の魅力を損なわない、世界一美しいホットドッグ屋さんでした。

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