六角形には訳がある、『ズベチノ(Zbečno)の小さな家』

チェコ共和国、首都プラハより南西に数十キロ離れたズベチノ村(Zbečno)は、歴史ある13世紀の古城クシヴォクラート城(Křivoklát)を主軸とする風光明媚な丘陵地域クシヴォクラトゥスコ景観保護地区(Křivoklátsko)内に位置する。

この地域で新たに建物を建てることは禁じられている。しかし、既存建築の改築に関しては、元の建築面積を超えない限り可能である。
この地に1950年代から建つ古い民家『ズベチノ(Zbečno)の小さな家』のリフォームを手がけたのは、Peter LackoとFilip Tittelbachを中心に2001年からチェコで活動を続けている建築設計事務所A.LT Architekti。彼らは、既存建物の石造ガレージの上に2層の増改築を行なった。

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そして樹々に覆われた丘の斜面に建つ立地から、増築部分は不規則な六角形のプランを持ち、四角形より2面増やすことにより、建物全面から多くの採光を得る工夫が施され、またそのことで、谷と村を眼下に見下ろす眺望を活かすことができる。
このユニークな角度を持つ壁面には、大きな窓と点在する小窓とがバランスよく交互に配置され、そのことで眺望の切り替えが効果的に行なわれている。建物北側の斜面とは距離が保たれているため、北側からの採光も豊かな立地条件になっている。この六角形は、まさに最適なプランである。まるで六角形プリズムが最適な光を取り出してくれているようだ。

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北側のコンクリート基礎部分上部の構造コア部分には設備が集約され、それをC字型に囲むリビングが前庭を跨ぐ谷側のオーバーハングとなっており、南面の日照を多く受け止め、日照時間の少ない東欧で日光浴を重要視するチェコ人には最適な住居だ。また、コアを囲むC字型の空間構成により、部屋の終点が見えず、視線は窓の外に誘導されるため、フロアを広く感じることが出来る。延べ床面積は94㎡、うち増改築部分は50㎡と狭小な条件の建物。

黒い鉄骨の螺旋階段が上階へと続き、上階には、二室の寝室と書斎がある。書斎は第三の寝室としても利用することができる。
施主が木造を希望していたので、壁はCLTパネルで構成されている。室内に使用する木材は敢えて、オイルを塗っただけの状態で、特に仕上げは施していない。外部には素のカラマツ材を垂直に張っている。
樹々が生い茂る森の斜面に暖かな光と樹々の温もりが感じられそうです。

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CLTパネル:板木材の繊維方向を互い違いに積み重ねた集成材の一種。近年、日本国内のJAS規格を取得。
構造コア:構造部分を一箇所にまとめた部分。便所や階段などを一箇所にまとめたものをサービスコア(設備コア)などと呼ぶ。目的空間(居住空間)を自由に計画できるようにする。両者共にまとめることが多い。

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via:
http://smallhousebliss.com/
http://www.archdaily.com/
http://www.a-lt.cz