世界の小さな住まい方

大恐慌時代に建ち、うち捨てられた農家が美しい自然の中で再生「Farmhouse Redux」

石井敦子プロフィールアイコン | 2014.10.25
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米国ノースカロライナ州の山に位置する、うち捨てられた農家はこの地域に独特な景観を与えている。西部のブーン郊外の、崩壊しつつある遺跡と化したこれらの家々は、かつての繁栄や持続可能だった、過ぎ去った時代を思い起こさせる。
今回ご紹介する「Farmhouse Redux」は草原に位置する忘れ去られた建物の一つだった。

これらの農家は世界恐慌の吹き荒れた1930年代に農村部に入植した人々の家屋の原型だ。断熱材としてまだ段ボールが使われていた家々は、時の流れと共に、減衰し、消え去っていった。

建築家のチャド・エバハートは2007年にこの土地を訪れた。そこは三方に小川が流れる非常に美しい牧草地で、クリスマスツリーの植林が周りを囲んでいた。エバハートとその妻は、この地に惚れこんで、その当時で一番安かった72,000米ドル(*約770万)で9307㎡の敷地に建つ農家を購入した。購入した当初、まさにその農家は崩れ落ちる寸前だった。

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エバハートは自身がデザイン学の教鞭をとるアパレシアン州立大学で学ぶ、将来の建築会社のマネージャーの卵たちを雇った。学生たちは辛うじて残る基礎をもとに改築する、生きた体験をすることになった。「予算にも限りがあったので、僕たちは使えるものはなるべく使うことを考えた。」とエバハートは言う。「そして、生徒たちは一からデザインを考えるという体験を実地でしたのさ。」

元の農家は64.5㎝角の板だけで、間柱なく建築されていた。その当時の建築は厳しい経済状況に基づいたチープなものだった。元の農家の骨組みは、慎重に解体され、釘が抜かれ、ツガと栗の床やホワイトパインの厚板などの仕上げ材と構造は再利用された。新しい仕上げと骨組み用の材料は、地元の金物屋、製材所、材木置き場、農機具店から購入した。そして、その土地にコンクリートの土台を造った。

改装された「Farmhouse Redux」の赤と黄色のアクセントカラーは、ノースカロライナ州を象徴する紅葉を彷彿とさせる。

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農家の形はほとんど変えなかったが、家の両端にポーチを二つ付けることにした。ひとつはダイニングとして、もうひとつは娯楽場として使えるようにした。広くとられたポーチとデッキは日よけの深い影に守られている。

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この家は南東向きで日当たりはよいのだが、同時に小さな家のため熱がすぐこもる。そのため、採光用の窓で日当たりを確保しつつ、熱を遮ることが課題となった。窓は透明のポリカーボネートを採用した、これにより部屋の間に絶縁バリアを作り、ベッドルームやリビングに光を取り込みながらも、過剰な太陽光による熱が発生しない。家屋の木製とトタンの構造は、近隣の酪農納屋にならい、むき出しになっている。ポーチに作ったダイニングエリアのコーナーの開口式の窓からは近くの小川を望むことができる。

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また、象徴的な赤い正面玄関は、元の農家から取り外したパイン材を使った。家の両側は1メートル弱拡げられ、室内のスペースも確保された。

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地元産のホワイトパインは、ここから15分のところにある製材所で製材した。「ここでは木材は乾式壁よりも安く手に入るんだ。」とエバハート。「僕たちはテネシーのホワイトパインを使用した。ここからテネシー州の州境が見えるんだよ。同じ機械で床や壁も製材し、すべて地元の木材を使ったよ。」倹約家である、エバハートが、最終的にかけたコストは15万9千ドル(*約1700万円)。今の時代では安く済んだほうだ。

室内にはエアコンはなく、(ノースカロライナの山中は涼しいため不要なのだ。)ホームデポで購入したシーリングファンを夏は使う。暖房はクリーンなScanの薪ストーブが採用された。冬場はこれで家全体を暖めてくれる。家はオール電化で、毎月の請求書はほとんど50ドル(*約5,300円)を超えることはない。 その他すべての器具、冷蔵庫、コンロは、IKEAで総額5000ドル(*約53万5千円)と手頃な価格でそろえた。

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「僕は近代的な方法でその土地特有の建築を再解釈したいと思ったんだ。」とエバハートは語る。「僕のインスピレーションはなるべく小さく収めること。ここでは人々はそのようにして生きてきた。小規模だと管理もしやすいしね。」

80年もの歳月を経て、地元や歴史へ敬意を払いつつ、現代的な感覚をもって生まれ変わった「Farmhouse Redux」、素晴らしい山々の風景や小川のせせらぎを聞きながら、80年の歴史を足元に過ごす日々。実にロマンあふれる毎日ではないだろうか。

*円への換金額は2014年10月15日の為替に基づく。

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Via:
chadeverhart.com
dwell.com
livegreenblog.com
architectsandartisans.com
shingu-shoko.co.jp

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石井敦子プロフィールアイコン

Writer 石井敦子

世界の小さな住まい方ライター担当。

1970年東京生まれ、鎌倉育ち。幼少から未知の世界を求めて三輪車で近所を徘徊。米国への留学をきっかけに徘徊の規模が世界へと広がる。好奇心旺盛で、異文化への興味は特に強い。お呼びがかかれば、インドの結婚式にも馳せ参じるフットワークの軽さと、虫以外はなんでも食べる食欲がウリ。異国の住民目線の生活を好むため、旅の手段も現地人の家に転がり込む居候型。世界中で家族を増やす計画を実行中。鎌倉在住。好きな言葉「Nothing is useless(人生に無駄な経験なし)」

TW:@azkoishii
HP:Nomad Azko的世界放浪

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