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壊すのではなく共存を、19世紀のガス貯蔵庫が生まれ変わる「Gasometers」

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18世紀以降のヨーロッパは、古い時代から新しい時代への変革の時期であった。その変動はめまぐるしく、オーストリアのウィーンも例外ではなかった。そのような変革の時代、1896年に建てられたのが「Gasometers」だ。
Gasometersは、4つのレンガ作りの円筒型ガス貯蔵庫で、市民のライフラインとして長年利用され続けてきたが、都市ガスから天然ガスに取って代わったのを契機に閉鎖。そんなガス貯蔵庫として役目を終えたGasometersは、その後、まったく違った巨大施設として蘇ることになる。これがGasometersの第2の幕開けだったのだ。

Gasometers02ガス貯蔵庫として使用された、当時のGasometers

19世紀半ばのウィーンでの人口増加に伴い、 電気、水道、ガスなどの公共事業が発展。1つの大きさが直径60m、高さ70mという大きなガス貯蔵庫Gasometersのお陰で、それまでは一般化されていなかったガスの使用が、市民にも行きわたるようになった。しかしその後、都市ガスの利用が天然ガスにシフトし始めると、Gasometersも利用価値がなくなり、1984年に閉鎖されてしまうこととなった。

Gasometers03上空から見ると、Gasometers内部にも建物が建てられているのがわかる

そんなGasometersに転機が訪れたのは1995年。ウィーン市当局が舵を取り、現存する4つのGasometersを保存目的で再利用できないかとアイディアを出し合った。その結果、かつては市民のためにガスを供給する貯蔵庫だったGasometersは、アパートやオフィス 、そしてショッピングモールなどを融合させた巨大施設へと生まれ変わることとなったのだ。

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円筒形のガス貯蔵庫の形を活かし、昔はガスを貯蔵していた内部にも建物を埋め尽くすことで、空洞になっていた部分をうまく利用。4つのGasometersは、Gasometer A、Gasometer B、Gasometer C、Gasometer Dと呼ばれ、上階に共同住宅のアパート、中階にオフィス、1階にショッピングモールが存在する。

その他にも、映画館、3,500人収容可能なイベントホール、映画館、学校や幼稚園、学生用の寮(ホステル)、そして、医療施設と市の資料館が設備されている。1階部分はそれぞれ連絡通路で繋がっているので、天気の悪い日でも、濡れることなく移動できるのは嬉しい。
こういった新しい施設が元貯蔵庫内に次々と建てられながらも、外観は昔のままの姿を保っている。そのクラシカルなレンガ造りの外壁は、今でもウィーンの歴史的建造物として残されているのだ。

Gasometers05Gasometers内部に建てられたアパートや庭園

100年以上前にガス貯蔵庫として建設されたGasometers。市民の生活を長年支えてきたこのガス貯蔵庫は、時代の移り変わるなか、最初はガスの供給、そして今では多くの人の憩いの場所としてその形を変えていった。

古いものを壊して、何か新しく作り出すのもいいだろう。形のあるものはいつか壊れるし、新しいほうが何かと便利な場合もある。しかし、どんなに新しくても一度壊してしまえば元には戻らない。それゆえに、Gasometersのような古いものと新しいものを融合した建物は、人間と歴史の共存できる存在となりえるだろう。

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Via:
twistedsifter.com
wiener-gasometer.at
wien.gv.at
adaptivereuse.info

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Writer アプティグラフト佳菜

アメリカ在住。現在、アメリカの大学にてジャーナリズムを専攻し、学位取得を目指す。普段大学では、社会問題や法律に関係した記事を中心に執筆。

アメリカに移住してからというもの、アンティーク&ヴィンテージのグラスウェアや小物の収集に明け暮れ、他にも、時間が出来ると布小物を製作したり、写真撮影をしたりと、あちこちに手を広げては時間が足りないのが悩み。

将来は、とにかく日本語と英語でどんな記事でも書けるマルチなジャーナリストになれるよう、日々修行中。

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