360度回転するアーティストのためのスタジオ「The Observatory: The Study and The Workshop」

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黒くて小さな2つの建物は、アーティストのためのアトリエ兼住居として制作された。この家に12人のアーティストが2ヶ月ずつ暮らす。そして半年ごとに計4か所、英国内を移動する2年間のプロジェクトの一環である。
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2つの建物、それぞれに名前がある。The Studyと The Workshop
役割分担も決まっている。The Workshopは社交的。アトリエであり、住人の作り出す世界を人々に紹介する場でもある。
The Studyはといえば、自らを振り返る場所。よりプライベートな空間を提供し、住人はゆっくりとくつろぐことができるのだ。

この家の大きな特徴は360度回転できること。回転にはハンドルを使って6分。太陽を追いかけてもいいし、自分の好きな方向に向けることができる。
年間を通じて、雨の日が多く、冬には夜が長い英国で、太陽光を積極的にとらえられる、というのは大きなメリットだ。作品作りに影響することもありえるだろう。建物は移動が容易なように2m×10mの板とスチールの車輪フレームの上に設置されている。

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外見の黒い色は日本の木材加工技術「焼杉」からなる色である。表面を焼いて炭化させ、耐候性、耐久性を増す手法である。
ガラスの窓にかけられている、マクラメ編みのスクリーンは家の中にきれいな影模様を写しだす。必要な電気は、屋根に設置されたソーラーパネルによってまかなわれる。部屋の温度管理は電気を使わず、ログストーブで部屋を暖める。レインウォーターを貯めるタンクとフィルターが設置されているので、アーティストが絵筆を洗ったりするのに不自由はない。
内装は木でシンプルに。The studyにもベッドと必要最小限の設備がある。
可能性として、ポータブルトイレの設置が考えられている。

一番初めの設置場所Winchester Science Centerで実際に2ヶ月間、生活をしたアーティストが語るには、Winchester Science Centerには、ときには800人もの見学者が訪れ、とても賑やか、また、ある時には誰も居なく、とても静かだそうだ。彼はこの静と動のコントラストを楽しんだそうだ。この家も静と動の二面性を持っている。周囲の環境と家が持つ特性が織りなす、このつながりはとてもおもしろい。

英国4か所のそれぞれ異なった場所で、この家がアーティストに与える影響の大きさを考えると、なんだか誇らしくさえも思えてくる。
この日本のテイストを持つ家に「山椒は小粒でもピリリと辛い」と言う言葉を添えたくなった。
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VIa:http://www.archdaily.com/595429/