世界の小さな住まい方

これぞスモールハウス的「オレ部屋」の本命か?騙し絵的なメゾネットが楽しい「A Photographer’s Escher Like Apartment」

伊藤 愛プロフィールアイコン | 2015.4.13
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大自然に囲まれたシンプルで小さな小屋にも惹かれるけれど、都会のどこかにひっそりと生息する、ヤレたアパートのリノベ部屋も捨てがたい。今日ご紹介するアメリカ・バーモント州のフォトグラファー、Brendan McInerney氏の小さなアパートは、そんな欲張りなアナタをもきっと虜にする、37㎡の珠玉のリノベ空間だ。

百聞は一見にしかず。まずはこの部屋のデザイナー兼ビルダーであるJoseph Chiarucci氏の希望により、サイレントで作成された上の動画を見て頂きたい。

古びたアパートの扉をあけ、McInerney氏が天井際にぐるりと回された足場のような厚板のスイッチを入れる。するとダウンライトにふわりと照らされて、一階の室内がまるでステージのように明るく浮かび上がった。そこに現れたのは数歩歩くだけで奥の階段にたどり着くようなごく小さなメゾネット。けれど天井の高さゆえか、はたまたパイン材か杉と思われるフローリングの質感ゆえか、不思議と閉塞感を感じることはない。

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エントランスを入って正面右手のコーナーはL字型の無骨でシンプルなキッチン。実験室にあるような琺瑯のシンク、黒のキャビネット、水回りの白のタイルやレトロなケトルがいい。

そのキッチン左手のリビングスペースに目をやると、そこにはフォトジェニックなビンテージ風のカラシ色のソファーが。そのちょうど目の前に来るフォーカルポイントのシェルフには、いかにも写真家らしいカメラやレンズのコレクションやピンナップ、つい見いってしまいそうな個性的な小物などがざっくりとまとめられ、まるで『casa BRUTUS』のインテリア特集にでも出てきそうな味のある雰囲気を醸し出している。

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リビング左手にはキッチン同様コーナーを活かした作業用のデスクを配置。全ての家具を一直線に置いてしまうと面白味のない空間になってしまいがち。この部屋の様にコーナーにL字家具を置くと視線が両方向に分散されるので、空間の単調さに悩むなら試してみたいテクニックだ。

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そしてここからがこの家の真骨頂、楽しい二階スペースの始まり。リビング奥の階段から二階に行くのかと思えば、McInerney氏はダウンライトの板の上を渡り始めた!えっ?それってただのデザインじゃなかったの??人によっては軽くめまいを起こしそうなワイルドな渡り廊下の先には一体何があるのか…。

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なんと身を挺して取りに行ったモノとは、天井のバーに掛けられたハンギングプランター…。グリーンを愛する素敵男子か、見習わなくては…ってプランターの移動も命がけかよ!というツッコミはさておき、突き当りは1メートル四方ほどのこじんまりしたオープンなスペースだ。
これは撮影用のアンブレラやリビングに飾られたギターのケースが置かれたミニロフトらしい。ここで階下に足を投げ出して鼻歌まじりにアコギなぞかき鳴らしたら、さぞ気持ちの良いことだろう。こんな階段の踊り場のような一見無駄なスペースに、家好きは秘密基地的なスリルを感じて身悶えしてしまう。

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二階の吹き抜け側にはベンチのようなくつろぎスペースがあり、先ほどのミニロフトのちょうど真横にはシャワーとトイレだけの簡素なバスルームがある。外部に通じる窓はないが、正面のミニロフトが見える開口が窮屈感を緩和する役目を果たしているようだ。

水圧の問題がクリアできれば、バスルームの隣に寝室というのは動線的には都合がいい。シャワーの後にベンチに腰かけてビール、汗が引いたらほろ酔いかげんでベッドにダイブ!という流れが目に浮かぶ。独立した寝室は作れなくとも、バスルームと壁の間の狭い空間をうまく使うことで、適度な落ち着きのある安らぎのベッドルームを生み出すことができた。

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スモールハウスは非常に限られた空間であるため、収納に工夫を凝らすことが必要になる。このベッドの下には階段状の引き出しが造作され、住人のスノーボードが収められていた。子供がお気に入りのぬいぐるみを肌身離さず眠るように、ボードは彼にとって常に身近に置きたい大切な相棒なのかもしれない。

その他には収納場所に頭を悩ませそうなクリーナーは壁に埋め込み、ヘッドだけを持ち運ぶ仕組みが秀逸だ。重いクリーナーの持ち運びがないことで掃除の面倒臭さが半減され、いつでも人を呼べる空間を維持できるのは小さな家ならではのメリットだろう。

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ところでベッド前のフロアが階段状になっているのは何のためなのだろうか?一階には大きなテーブルらしきものが見当たらないので、ここはわんさかゲストが集まった際のベンチやテーブルになるのかもしれない。居心地のよさそうな家や部屋には共通して住まい手やゲストが寛げる仕掛けが散見されるものだ。

しかし悲しいかな、こういう部屋を見ると「年を取ったらどうするんだ?」、「あんな場所にロフト作ったらデッドスペースにならないか??」などと、つい夢のないことを考えてしまう。でも待てよ、世の中一体どれだけの人が生涯同じ家に住み続けることができるのだろう?住宅ローンの終わる35年後にどんな未来を過ごしているかなんて、本当の所、誰にも分かりはしないのではないか?

だったら今自分が楽しめる身の丈にあった小さな家や部屋に住むことは決して贅沢なことではない。イマジネーションを刺激するようなワクワクする空間に、住人のライフスタイルを彩る厳選されたモノたちと、趣味の良いグリーンを点々と散りばめたなら…そこは間違いなく貴方にとってのワン・アンド・オンリーな家や部屋となり、毎日に潤いと癒しを与え続けてくれるだろう。

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Via:
tinyhousetalk.com
brendanjoe.com

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YADOKARI「未来働き方会議」オープン!

伊藤 愛プロフィールアイコン

Writer 伊藤 愛

1975年、北海道羊蹄山麓の雪深い町に生まれる。
半ミニマリスト的生活を送る中で小さな家に興味を抱く。
元々美しい家やインテリアが三度の飯よりも好き。

学生時代訪れたイギリスで古い建築が市井の人々の生活の場として機能していることに感銘を受ける。
そのノリで札幌市郊外の中古住宅に住み、真夜中に突如思いつきで家のペイントを始める「ゲリラ的DIY」を敢行するも、
往々にしてあまりに微妙過ぎて家族にも気付かれていない。

そんな生活から一変、降って湧いた引っ越しで持ち家や車を手放すと、人生一度きりという言葉がリアルに迫ってきた。
今では美しい風景を求めて旅に出たいとウズウズする毎日。

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