世界の小さな住まい方

川面に浮かぶ船、あるいは家「Port X」

那須崇利プロフィールアイコン | 2015.5.5
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チェコ共和国の首都プラハを流れるヴルタヴァ川はスメタナの交響曲「わが祖国」第2曲「ヴルタヴァ」のモチーフとなっており、チェコ国民にとっては祖国を象徴する河川だ。日本では、ドイツ語名「モルダウ」が定着しているこの川。オオハクチョウの行き交う静かな川面に浮かぶのは、浮力居住型組立てユニット「Port X」だ。この船は家である。

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プラハの建築設計事務所「アトリエSAD」の建築家Jerry Kozaの設計による「Port X」。住居用途に限らず多目的に使用でき、モジュールユニットの接続により拡張も可能だ。3モジュールによる住居モデルに、スタジオや会議室などを増やすことができる。
各部材は、壁、床、天井一体になっておりで、ヨットメーカーとの共同開発による外皮を持つ。各ユニットの値段は、おおよそ55,000ユーロ(約730万円 2015年4月現在)となっている。

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「Port X」は、水陸ともに建てることができる。5~6年の水上生活を経て、子供たちが巣立っていくときなど、生活の変化に応じて、陸の丘陵地に移設することも可能だ。
水上を牽引することにより移動することができ、地上では、クレーンで吊るすことで移動ができる。移動を想定した設計のため、家ごと引越しができる。また、電力や上下水道を独立させオフグリッド化が可能で、ソーラーパネル、風力発電、貯水タンクを備える。汚水処理はタンク交換や浄化装置を使用する事で解決している。

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左右のハメ殺し窓と水面側を含めた3面に加え、天井にはプラスチックの天窓が設けられ、東欧で貴重な陽射しを多く取り入れることが可能だ。室内環境は、床暖房による室内暖房が採用されている。

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内部空間は石膏ボード壁で仕切られ、主要壁、天井、床は唐松材の羽目板が張られている。リビングルームは常に水面側を向かせることにより、広大なプライベートビューが手に入る。また、川幅により、対岸に対して、プライバシーを保つこともできる。
これなら、過密な都市部においてありがちなカーテンを閉め切っての生活とも縁がなくなりそうだ。水面側のファサードはフランス窓を通じてテラスに出ることができる。

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プラハは、近年洪水による被害を受け、数千人の市民が避難生活を余儀なくされた。
チェコに海はない。1000年以上、ヴルタヴァ川と暮らし続けるプラハの人々。水面に浮かぶ住居という発想も、プラハ市民の川に対する悲喜交々の思いから生まれたものなのかもしれない。

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Via:
http://www.dwell.com/
http://www.portx.cz

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那須崇利プロフィールアイコン

Writer 那須崇利

世界の小さな住まい方ライター担当。

身長150㎝の頃から、180㎝になる頃まで、チェコ共和国プラハで育つ。
現在は東京都世田谷区在住。
自転車便メッセンジャーをやっていたが、タクシーに轢かれる。その後、構造設計事務所で建材開発に携わるが、リーマンショックで失業する。派遣社員として、住宅メーカーのBIM開発部門に入る。 現在、総合建設会社にてBIM職人および模型職人として、建築を楽しんでいる。将来は、SIなどの建築生産システムに関するイノベーターでありたいと考えている。
躯体や設備など「スケルトン・サポート(S)」を建設会社が、内部空間など「インフィル(I)」を自動車メーカーやハウスメーカーが、提供するようなイメージなど如何でしょうか。

FB:那須 崇利
HP:poetic systems

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