作りたかったものは、お客さんが安らげる時間。木々に囲まれた贅沢な離れ「Wakatipu Guest House」

Via:inhabitat.com
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もしあなたが、周囲を美しい白樺の木々が囲む家に住んでいるとして、自宅の敷地内のスペースが少し余っていたとしたら、何を建てようと思うだろうか?この建物のオーナーが、建築家に出したリクエストは、実にシンプルであった。私の家族と、そして友人たちが、心からリラックスして泊まれる空間を作ってもらえないだろうか?

ニュージーランド南島のオタゴ地方にある街・クイーンズタウン。周囲を山々に囲まれた美しい観光地で知られており、夏は避暑地としてゴルフやバンジージャンプなどのアクティビティ、また冬になると、近隣のコロネット・ピーク やリマーカブルズといったスキー場でウインタースポーツを存分に楽しむことができる。そこからほど近い、ニュージーランドで3番目に大きい湖であるワカティプ湖に面した小さな街・Dalefield。周囲にそびえる山々を臨む、自然豊かなこの地に住むオーナーは、白樺の木々に囲まれた自宅の敷地内に、家族や友人達のためだけの、シンプルな離れ家を建てた。

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この建物を建てたのは、主にクイーンズタウンでキャリアを積んだ建築家を中心に、2013年に結成されたTeam Green Architects。周囲の自然環境への調和・配慮と、建物のエネルギー効率に着目した建築のスペシャリスト集団だ。106㎡の離れ家は、設計図を見てのとおり、二方向にエリアが分かれている。一方はモダンなリビングダイニング、そしてもう一方が寝室のエリアとなっている。

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Via:teamgreenarchitects.co.nz
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離れ家の外観は、周囲の環境に馴染むよう、極限までシンプルに設計された。外壁は、周囲の白樺の木々にあくまで自然に調和するよう、羽目板が垂直に並べられる形で覆われている。そして灰色の波型のスチールの屋根は、なんとこの一帯に建つ、地元の農作業小屋との調和を意識したものだ。

この建物のオーナーは、ここに泊まるゲストが、母屋を気にすることなく、ゆったりとくつろげる空間とすることを何よりも重視した。そこで、建築家に次のような依頼を出した。「もとからある白樺の木々を活かし、新しく建てる離れが、母屋からの視線を遮るような設計にしてもらえないだろうか?」周囲の環境と建物との調和を重んじるTeam Green Architectsは、オーナーの思い描く、”ゲストたちが、心おきなく逃避できるような、秘密の隠れ家”のイメージを、実に見事に体現してみせた。この建築物は、地元のアワードを受賞している。

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内装は、外装とはうって変わってモダンなデザインとなっており、そのコントラストの意外性にハッとさせられる。壁は白い漆喰で塗られており、床や家具は暖かみを感じる木目調。そしてひときわ目を引くのが、リビングダイニングのセンターに鎮座する、大きな赤い薪ストーブだ。冬になると、ゲストたちが雪山を眺めながら、ストーブを囲み談笑する光景が目に浮かんでくる。

Via:humble-homes.com
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またリビングダイニングから続く屋根の下は、広いウッドデッキとなっており、まさにアウトドアリビングとして利用できるようになっている。この空間には、ヒマラヤスギで作られた日よけ格子がついており、自由自在に動かすことができる。ゲストたちは、屋内に取り入れる空気と光の量を、この格子を操り自在に調節することができるので、季節を問わず快適な温度が保たれるのだ。

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寝室は、2部屋で構成されており、最大で8名まで宿泊できる。主寝室は、ゆったりと2名のゲストがくつろげる仕様となっており、リビングダイニングから1番遠い場所に位置している。またもうひとつの寝室には、2段ベッドが組み込まれており、最大で6名が一緒に寝ることができる。そして贅沢な空間となっているのが、バスルームだ。ガラス張りの天井のもと、ニュージーランドの満天の星空を臨みながら、最高の入浴タイムを過ごすことができる。また昼間であれば、コロネット・ピークなどの周囲の山々の絶景を眺めながら、まるで自然と一体化したようなひとときを過ごすことができるのだ。

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オーナーの思い描く、”メインの母屋を気にすることなく、ゆったりとくつろげる空間を作る”ことは、何よりもゲストのためを思ってのことであった。こんな極上の空間があれば、ゲストはいつだって訪れたいと思うだろう。どの季節をとっても、四季のうつろいを感じながら、気の合う仲間と心からくつろぐ。この建物のオーナーは、人生を豊かにする極意を、熟知しているに違いない。

(文=佐藤香織)

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