家が「おすわり」してるみたい!景観になじむ居心地のいい鎌倉の離れ家「Armadillo」

縁側
Via: archdaily.com

今回は、先日ご紹介したイギリスのキャビンに引き続き、「アルマジロ」の愛称を持つ日本の小さな家をご紹介します。

外観
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この家の施主さんは、数年前、鎌倉で古民家を手に入れました。鎌倉名物の細い坂道を登って山に突き当たったところにある、築約80年の木造平家建てをベースに、2階屋を増築した庭付きの家です。しばらくして、家具や楽器の収集家である施主さんのコレクションで家が手狭になったことや耐震対策を目的に、庭に「離れ」を建てることにしました。

庭といってもそう広くはなく、後ろは崖が迫り、前には柿の木があります。これらと母屋に囲まれた狭小スペースに、はたしてもう一軒、家が建てられるのでしょうか?

外観
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相談を受けた建築家の田辺雄之(たなべゆうじ)さんは、現地を訪れ、スケッチを描きました。この立地要件を満たしつつ、鎌倉の景観にも違和感なく溶け込む家の姿を模索し、ついに菱形の土台を持つ家を設計。でも、不思議な形の屋根のおかげでしょうか、建物が菱形だなんて気が付きませんね。

スケッチ
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平面図
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計画段階で田辺さんがこの案を模型にして見せたとき、施主さんは「かたちがアルマジロに似ているね」という感想を述べました。そこから「アルマジロだから耳はこのあたりにありますよね。だから天窓はここにしましょう」と計画はスムーズに進み、施主さんと建築家の二人三脚で、このユニークで愛嬌あるかたちの家が実現しました。

模型
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上空から
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「アルマジロ」は2階建て。1階は周囲の豊かな緑を取り込めるよう大きな窓を開け、どこからでも出入り自由な縁側でぐるりと囲んだ開放的なつくりです。対照的に2階は、上のデッキへ出る扉と2つの小さな天窓のみで、まるで巣穴のような閉じた空間。音楽を聴いたり眠ったりするのにぴったりな部屋になっています。この2階の天窓が、動物の目か耳のように見えませんか?

断面図
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天窓
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中を見てみましょう。1階は明るく開放的。風通しもよく、とっても居心地がよさそうですね。もちろん耐震性もあり、床下には蓄熱式の冷暖房システムも設置されていますから、一年を通して安全・快適に過ごせます。

一階の部屋
Copyright: Yuji Tanabe
一階の部屋
Copyright: Yuji Tanabe
一階階段
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2階には可動式の階段があり、階段下は収納スペースになっています。この階段を使って、デッキに出たり、天窓から外を眺めたりできます。デッキからは、鎌倉の山と緑と大きな空を眺められます。夜は星がきれいでしょうね。

2階の部屋
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可動式階段
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天窓からの眺め
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デッキからの眺め
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そしてもう一ついいことが。狙ったわけではないのですが、天井や壁が斜めであることなどから、「アルマジロ」はとても音響がよい建物になったそうです。普通にスピーカーを鳴らしてもよいのですが、イコライザーという音響装置を使うことで、1階の天井=2階の床が振動板となり、アルマジロ全体が高音質なスピーカーになるのだそうです。これは、音楽好きの施主さんにとって、何よりの贈り物となったことでしょう。

スピーカー
Copyright: Yuji Tanabe

「アルマジロ」のサイズは52㎡(約15畳)。小さいけれど安全・快適な空間で安心して遊んで眠れる、頼れる存在です。こんな可愛くて居心地の良い小さな家を、建築家さんと楽しく相談しながら建てられたら素敵ですね。

平面図
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夜景
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yuji-tanabe.com (建築家:田辺雄之)