極北の地、最果ての「島」が舞台。絶景を主役にした小さな家

Via: dwell.com

強風が吹く荒野の岩場の上に、肩を寄せあう双子のような、かわいらしい小さな家。まるで自然の造形物のように、風景に溶け込んでいます。

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ここはノルウェーのヴェーガ島。北極圏に隣接する、小さな島です。ここでは厳しい寒さ、変わりやすい天候、強風といった気候条件にもかかわらず、1万年以上前から人々が暮らしてきました。厳しくも美しい自然と折り合いをつけながら農業、漁業を営む人々の暮らしが作り上げ育んできた素晴らしい景観により、世界遺産に登録されています。

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この島の出身で、今はスウェーデンなどで活躍する劇場ディレクター Alexander Mørk-Eidemさんは、仕事のためのインスピレーションを得たり、親戚が集まって一緒に過ごすための家を、この静かな島につくりたいと願いました。

依頼を受けたスウェーデンの建築家Erik Kolmanさん(Kolman Boye Architects)は、オーナーさんと相談し、次の基本方針で家をデザインしました。

  • 景観を損なわないこと
  • 激しい風雨や寒さにも耐える、頑丈な家にすること

風雪に耐える家の形としては、現地にうってつけのお手本がありました。naustとよばれる、この地域の伝統的なボートハウス(ボート格納用の小屋)です。

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お手本にならい、風で飛びそうなもの、たとえばデッキの手すりなどを作らなかったので、結果的に家まわりがすっきりしたデザインとなりました。
また、景観になじみ、あたかもずっと前からそこにあるかのような家にすることも大事な目標だったので、当初は外壁を黒く塗装する計画もあったそうです。ところが、建てて1年後には、外壁に使われた無塗装の木の板が、風雪によりグレーがかった色に変化しました。自然とのコラボレーションで、まるで岩から家が生えたように、違和感なく景観に溶け込む外観になりました。

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オーナーの劇場ディレクターは、ここでは「家」は脇役にとどめ、周囲の「景観」を主役にすえることにしました。そのため家の外観も内装もごくシンプルにした代わりに、大きな窓をつくりました。足元から広がる大きな窓からは、雲の上にそびえる山や、はるか遠くまで広がる海といった、雄大な眺めをたっぷり楽しめます。これなら一日座って景色を眺めていても飽きないかもしれませんね。ちなみにこの大きな窓は、寒さや風に耐えるよう、厚さが4cmもある丈夫なガラスを使っているそうです。

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この島生まれの劇場デザイナーが、「島」を舞台に、世界遺産に指定されるほどの絶景を主役にすえてつくった家。建築家と協力し、伝統的なボートハウスをお手本にしつつも、そのまま復元するのではなく現代のデザインと技術を駆使して、景観を乱すことなく景観を楽しめる居心地の良い空間をつくりあげました。

この景観は一朝一夕でつくられたものではなく、長い長い年月をかけて、この地の自然とそこで暮らす人々がつくりあげてきたもので、オーナーさんと建築家が、そのことをとても大事にして家づくりをしたことが感じられます。厳しい自然と正面から向き合い、その力を借りつつ上手に折り合ってきたであろう、この島の人々の姿を体現しているような、素晴らしいおうちですね。

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