元日本軍居住区にある日本家屋をリノベーション。台湾と日本の要素を調和させた家

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台湾の黄埔新村は、第二次世界大戦時に日本軍が南へと進軍するために軍人向けの居住区として使われた村であり、台湾では初めての軍事用地区であった。村の住宅では伝統的な日本式の建築がみられ、特有の歴史がある。日本が敗戦し降伏したのち、1947年に陸軍の訓練総司令部は隣の鳳山区へと移されたが、黄埔新村の元日本軍居住区はしだいに荒れてさびれていった。

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2013年に再建プロジェクトが立ち上がり、かつての日本軍居住区は取り壊される方向で計画が進んでいた。しかし、さまざまな方面からこの村を守ろうという声があがり、政府によって歴史的建築として黄埔新村を保存していくことが承認された。その後、2015年には「保存再生のための居住促進プロジェクト」が立ち上げられ、居住期間の期限付きで入居者を募集。台湾のHAO Design社はそのうちの一軒を「生活実験室」と名付け、リノベーションすることにした。

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HAO Design社では、この家屋を元々の構造を保ちつつユニークな空間にしたいと考えていた。歴史的な背景を壊すことなく、創造的な「生活実験室」とし、セミナー、デッサン、スケッチ、セメント作業などといったワークショップに使えるようにしようとした。アート系の学生やリノベーションプロジェクトのメンバーに、インテリアデザインのスキルを修得したり、理想とする生活スタイルを自由に創り上げたりすることができるように計画していた。この古い家屋のリノベーションは心躍る楽しい計画ではあったが、HAO Design社が手掛ける際には建物がほとんど崩れかけていた。

リノベーション前 via: designboom.com

水道や電気も通っていなかった。建物の歴史的な重要性や文化的価値を考慮すると、あまりダメージを与えることなく、今までとは異なる空間を実現したいと考えた。例えば、屋根瓦。屋根からの雨漏りがひどかったので改修する必要があったが、元々あった屋根瓦は日本家屋の特徴のひとつであるため、新しいものと取り換えるのではなく、防水処理を施して瓦を復元したのだ。

リノベーション後 via: haodesign.tw

軍事用地区の象徴であった赤い門は、既に現代的なアルミニウム製の門と取り換えられてしまっていたので、地元産業の特徴である貨物輸送用コンテナの赤い扉を取り付けることにした。

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コンテナの扉を入ると、玄関へのアプローチがある。それぞれの部屋へと続く歩道をグラウト材で作った。砂利や砂を歩道の脇に敷いて、台湾南部の気候に合う、多肉植物、ツタ、サボテン、リュウゼツランなどの熱帯植物を植えたことで、植物がもつ生命力による活気を感じられるようになった。

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家屋の庭側には、エアコンの室外機をカバーする役割もある小さな木製のテラスを、引き戸と接するように作った。日本の「縁側」のエッセンスを取り入れたこのテラスでは、外のそよ風を感じながら座ってのんびり過ごすことができる。日本の家屋でよく見られる置石の代わりに、レゴブロック形をした足台を木材で作成して、ピンク色のドアの近くに配置。木材には防水加工が施してある。空間に楽しみやイマジネーションをもたらしている。

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黄緑色の玄関ポーチを通って家に入ると、日本の家そのものであるように感じられる。元々寝室として使われていた和室が「生活実験室」のメインスペースである。押入れのふすまは取り外し、元の棚の形を活かして機能的な壁面キャビネットとした。本の収納に使用したり、ラジオ、タイプライター、花瓶、スーツケース等といったインテリア用小物をディスプレイしたりしている。

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天井もそのまま活かしてあるが、部屋の木の雰囲気と合うようにココア色に塗りかえた。庭に面する木製の引き戸はリメイクし、窓の下の部分を透明ガラスに取り換えたことで、外からは日光が差し込み、部屋の中からは座ると外が見通せるようになっている。

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隣の部屋は、元々の天井、セメントの床、茶色の壁をそのまま残し、伝統的な美やシンプルさを保っている。天井レールとそこに照明を取りつけ、50年代の台湾製のアームチェア、60年代に人気のあった日本のカリモクソファー、70年代のポップアートを思い起こさせる台湾製のトランペットスツール、60~70年代のスペースエイジのデザインの象徴である黄色いフロアランプなどを配置。上品な古い薬棚や籐製テーブルは昔から使われていたままである。

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台湾と日本のテイストの組み合わせが、対立することなくマッチして、ユニークな雰囲気を醸している。古い家屋は淘汰されることなく、時代が移りゆく中を生きながらえてきた。そのことを理解し、プロジェクトメンバーなりの解釈を取り入れることで、昔の良さや美しさを守りつつ、現代ならではの多様性や可能性を示している。

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(提供:ハロー! RENOVATION