ライフスタイルが広がるバックヤードルーム。趣味に仕事に没頭できる空間
絵を描いたり、文章を書いたり、クリエイティブな趣味に没頭できるような、自分だけの空間。また、在宅ワーカーでは日常生活を送る家の中とは別の仕事用の空間。クリエイティブな作業にあたり、雑然とした騒がしい環境でインスピレーションを得る人もいるだろうが、静かで穏やかな場所で、考えをまとめることのできる環境を望む人の方が多いのではないだろうか。
今回ご紹介するような小さな部屋が自宅の庭に建っていたら、それぞれの目的に合わせて空間を使え、生活が豊かになりそうだ。
ここは、ロンドンのハックニーという地区。イギリスのWeston, Surman & Deaneという会社が、イラストレーターや作家として活動し、児童文学や神話を愛する依頼人のために、作家のための小屋(Writer’s Shed)を設計し建築した。
この「Shed(小屋、納屋などという意味)」という言葉は、誤解を招くかもしれない。というのは、この言葉からはかろうじて立っているようなぼろぼろで簡素な建物が思い浮かぶかもしれないからである。実際には、美しいという言葉を超えた、部屋が一つだけの家といった様相である。床面積は22平方メートル。予算は31,000ポンド(約450万円)だったそうだ。
小屋の前面の壁は、細くカットされた木材が並べられたデザインとなっている。木材には杉が使われており、時間とともに自然に淡いグレーへと変化をしていくという点を考慮に入れて選ばれた。アイデアや作品を変化させていく場所であるという、小屋の役割への意味づけも兼ねているそうだ。夜になると、スギ材の隙間から明かりが洩れ、暖かなまだら状の光で裏庭が照らされる。
前面の壁と部屋の間の空間を利用して、小屋を暖める暖炉で使うための薪をストックできる場所を設けてある。壁材としてこけら板を使用している。また、その横は板張りの床として、ベランダのようになっている。
小屋の内側はガラスのスライドドアとなっており、母屋と裏庭が見渡せる。大きな窓があるおかげで、英国特有の曇り空のもとでも明るさを確保し、空模様を楽しめる空間となっている。
内部は清潔でシンプルな造りである。空間の許す範囲で、トイレや本棚や洗い場など最低限の器具と機能を備えている。真ん中に暖炉を設置し、その周りの空間を埋めるように壁一面に棚をつくりつけているため、まるでプライベートな図書館のような雰囲気だ。ちなみに、この棚はパーティクルボードで作られており、床は塗装したパイン材で張ってある。
洗い場も棚の一部に設置。水はね防止用の真鍮の板と庭にあるような蛇口は、再生材料を利用して作られている。絵を描くときに使う筆を洗ったりする、小さなシンクとして使うことができる。
本棚の前に置かれたひとつのデスク。アシンメトリーな角度をした屋根に設けられた天窓のちょうど真下に配置されている。この天窓のおかげで作業場は自然光で満たされ、木を用いたインテリアも手伝って明るく温かみのある雰囲気だ。机に向かって空を眺めていれば、いいアイデアが湧いてくるかもしれないと思わせてくれる。
この小屋を作ったWeston, Surman & Deaneは、イギリスのロンドンにある国立の美術大学Royal College of Artで建築を学んだ3名で2012年に立ち上げた会社だ(現在ではSurman Westonという会社名に変更されている)。このプロジェクトでは、それぞれの多岐にわたる専門のバックグラウンドを利用し、デザイナー、プロジェクトマネージャー、建築業者の指揮や管理などの役割をこなして完成した。
自宅の庭にこんな素敵な小屋があったなら、自分だけの空間で作業や仕事に没頭できるだろう。趣味や仕事に打ち込むのに理想的な場所である。小さな空間を最大限に活用するよう巧みにデザインされ、配置されている。また、木の温もりを感じられる外観、飛び出たかわいい煙突、収納力のある本棚、光が洩れる前面の壁は、おとぎ話に出てくるような隠れ家のような雰囲気を醸し出す。
Via:
dezeen.com
surmanweston.com
ajbuildingslibrary.co.uk
theultralinx.com
lunchboxarchitect.com
(提供:#casa)