若者の住宅問題からホームレス・難民の宿泊まで。ロンドンのマイクロホーム「SHED」プロジェクト

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ロンドンでは、アパートの平均家賃が23万円を超え、毎年の高い上昇率も衰える気配がありません。住宅価格の高騰は、特に若年層にとって深刻な問題。近年、この住宅問題の解決策の一つとして注目を集めているのが、空きビルに宿泊施設を設け、低家賃で貸し出す「不動産ガーディアンシップ」と呼ばれるアプローチです。

不動産ガーディアンシップでは、住居者が空きビルを保護して良好な状態に保ち、不法占拠者に占有されることを妨ぐ努力が求められます。この働きの対価として、空きビル内の居住スペースを格安な家賃で提供するという仕組みです。イギリス全土には、放棄や放置されたビルが60万棟あると言われています。一方、若者のための手頃な価格の住宅は、年々見つけにくくなる一方。

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そこで、不動産管理のスタートアップのロウ・ガーディアンが、ロンドンの建築事務所スタジオバークと協力して開発したのが、「シェアード:SHARED」からネーミングされたSHEDプロジェクト。放置ビルの不法占拠の状況を目撃した共同設立者のティム・ロウが発案した、DIYの住宅モジュールを不動産保護の新しい方法として活用しようというアイデアです。若者は空きビルの管理人として働く代わりに、SHEDのマイクロホームに低い賃料で住むことができるというもの。

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SHEDは、環境にやさしい木材ボード、リサイクルポリエステル、ウール断熱材を使用して、廃棄物を最小限に抑えて製作。モジュラー構造のプレファブ住居は、入居者自身が木づちとドリルを使用して、1日で組み立てられるように設計されており、分解して別の場所に輸送して再建築することも容易です。

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周りは、ホルムアルデヒドを含まない木材ボードのOSB(配向性ストランドボード)で囲まれ、棚のように空いたスペースにウール断熱材をはめ込んで、保温・防音効果を高めています。

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天窓やウィンドウ、エントランスには、波状のリサイクルポリエステルを利用して、プライバシーを確保しながらたっぷりと採光が可能。収納棚やパーテーションを使って、マイクロホームの中に集中できるスペースを確保しています。

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SHEDはビルの中に設置されるので、キッチンやバスルームは建物付帯のものを利用するか、別途で共有施設を設ける必要があります。

SHEDプロジェクトは現在、目まぐるしくライフスタイルを変化させる若者やクリエイターに適した仮住まいとして想定されています。ロウ・ガーディアンは将来的にはこのSHEDのデザインを使い、イギリスはもとより、ヨーロッパ各地のホームレスや難民のための宿泊施設として提供することも視野に入れているとのこと。

SHEDのコストを重視したミニマルなデザインは、イギリスの朝食を連想させる簡素さですが、1日で組み立てられるシェルターとして考えると悪くないんじゃないでしょうか。日本での天災の時の体育館での避難風景も、このようなアイデアで解決できたらいいのに。

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