mobile casa


新型コロナウィルスの影響でリモートワークや在宅勤務が浸透するなかでいま注目を集めているのが、車輪を持った移動可能な小屋、モバイルハウス。高まるモバイルハウス需要に応えるべく、タイニーハウスづくりのノウハウを持ったYADOKARIとコラボレーションし、“移動可能な「casaの家」”として、最新トレーラーハウス『mobile casa(モバイルカーサ)』の制作が2020年の春にスタート。ついに完成しました。“移動”と“居住”の両方をかなえる、これまでの既成概念をくつがえす新しい暮らし方の提案です。

【特別対談】
車道を走る家?!「どんな暮らしを実現したいか?」をベースに居住地を考える未来へ。最新トレーラーハウス開発者たちの提案

カーサ・プロジェクト × 松尾建設 × YADOKARI

カーサ・プロジェクト × 松尾建設 × YADOKARI
今回は、共同開発元であるYADOKARI株式会社 共同代表取締役 ウエスギ セイタ氏、松尾建設株式会社 代表取締役 青木 隆一氏、数々の規格住宅「casaの家」を開発してきたカーサ・プロジェクト株式会社 設計 矢島 丈広(以下、敬称略)の3名にお話を伺いました。

“移動と居住” 相反する要素がかなう『mobile casa』とは?

Q.完成した『mobile casa』。“移動できるcasaの家”がコンセプトの最新トレーラーハウスについて教えてください

casa 矢島:「『mobile casa』は一時的な滞在ではなく、あくまで“移動”と“居住”の両方をかなえる“家”として開発しました。さまざまな要因をクリアしながら、トレーラー上に約8畳の居住空間を据えた『移動しながら暮らせる家』です。

ミニマムであっても豊かな暮らしをかなえたい居住空間には、casa cubeを始めとする「casaの家」開発で培ってきたカーサプロジェクトの“家へのこだわり”を落とし込んでいます。」

Q.『mobile casa』を開発するに至った経緯を教えてください

casa 矢島:「高まるモバイルハウス需要について、タイニーハウスづくりのノウハウをお持ちのYADOKARIさんとお話する中で『「casaの家」のデザイン性を持ち合わせたトレーラーハウスを見てみたい!』とご提案いただいたのがきっかけです。そこへ、コンテナハウスやトレーラーハウスの活用に長けていらっしゃった松尾建設の青木社長にジョインしていただき、開発を進めました。」

YADOKARI ウエスギ:「YADOKARIでも移動式空間、タイニーハウスの企画・販売は何度かおこなってきましたが、ボトルネックは全国にお届けできる販売・施工・納品のワンストップの流通システムでした。

可動産(=不動産の対義)をオリジナルで作れるだけではダメで、ハウスメーカー同様に全国に均一の商品を提供できるカーサプロジェクトさんの「仕組み」であれば『mobile casa』が実現可能で、広くユーザーにお届けできると感じました。」

“車道を走ることのできる家”を実現するために厳正された部材

YADOKARI ウエスギ:「法規や重量、移動を踏まえた構造や建具など、建築以外の注意点が数多くありました。それらを考えながらコストにも配慮する必要がありましたが、今回はそれぞれがプロフェッショナルの立場でジョインしてるため、専門性を持ち寄って解決していく事ができました。」

松尾建設 青木:「“移動”をするためには、車道を走行可能なものである必要がありました。『mobile casa』はかんたんに言えば、トレーラー(車)の上に家がある事になりますから、“車”と“家”両方の条件をクリアする必要がありました。その中でも重量制限については、部材の軽量化をはかりつつも、運搬リスクを解消できるよう、厳正なる部材選定をおこなっています。

さらに、移動にともなって懸念される電気や水道のライフラインについても、居住者自身でかんたんに脱着できる仕組みを採用しました。」

上_リビングスペースは十分な広さがあり、ゆったりくつろげる。天板や壁、床のラフ感が居心地の良さを生み出している。
中段左_ 空間を2層にすることで、スペースを無駄なく活用。ロフトも広々としたスペースを確保。中段右_IH クッキングヒーターを採用したキッチン。窓が開放感を演出。
左下_キッチンの奥にはトイレ。その奥にはシャワールームがある。右下_ 洗濯機置き場の上もロフトになっている。ロフトは、合わせて最大で大人4人が寝られる。

Q.「casaの家」には多種多様な規格住宅がラインナップされていますが、『mobile casa』にはどのような特徴があるのでしょうか?

casa 矢島:「通常、トレーラーハウスやキャンピングカーと言うとアウトドア要素が強く、アウトドア好きには好まれますが、それ以外の人には敬遠されがちです。「casaの家」は、どんなライフスタイルにも合わせられるシンプルなデザインが特徴ですので、その辺りを『mobile casa』でも表現するべく、素材や色の選定をおこないました。

また、「casaの家」開発でたくわえた性能面での住環境へのこだわりも詰め込んでいます。」

「どんな暮らしを実現したいか?」“家のある場所”ではなく個人の思想ベースで“居住”を考えられる未来

Q.将来、トレーラーハウスで実現できる未来にはどのような事がありますか?

松尾建設 青木:「トレーラーハウスは“車”である事の特徴を活かしており、土地に“建てる”ものではなく“駐車する”という概念のものです。これらは、住居地域ではない土地の有効活用にも大いに貢献できると考えています。」

YADOKARI ウエスギ:「2030年以降に訪れる自動運転領域の発達にともなう、モビリティのある暮らしを視野に入れた住居・店舗・まちづくりのグランドデザインが必須になってきています。コロナ禍の影響により働く場所に縛られなくなると、東京や中枢都市に居る必要性もなくなってくると思います。」

Q.では『mobile casa』があることで、どのような未来が実現できるのでしょうか?

YADOKARI ウエスギ:「コスト面や建築確認不要など、単なる建築の代替案として注目されることが多いトレーラーハウスですが、『mobile casa』は豊かなライフスタイルの提案ができると考えています。

地方を母屋にした二地域居住、商業宿泊店舗とドッキングしたツーリズムモビリティ、移動式サテライトオフィスなど「どんな暮らしを実現したいか」をベースに考えることが容易になるでしょう。これまでにはない、新しいライフスタイルの形が実現できるようになります。」

Q.『mobile casa』を利用するとしたら、皆さんはどのような使い方をしたいですか?

YADOKARI ウエスギ:「『mobile casa』を複数組の仲間や家族と共同所有することで、個人的なサテライトとしての利用はもちろん、時には家族や仲間とシェアで活用したり、つながりや居場所をつくるためのツールとしても活用したいですね。」

松尾建設 青木:「私の拠点は茅ヶ崎ですが、週末は夫婦で『mobile casa』で移動して別荘のように東北で過ごすなど、2拠点で活用してみたいです。」

Q.最後に『mobile casa』のこの先のビジョンを教えてください。

松尾建設 青木:「アドレスホッパーという言葉もあるように、独身の方に住んでいただいて、季節ごとに日本全国・津々浦々での暮らしを楽しんでいただけるようになるといいですね。」

casa 矢島:「カーサプロジェクトは『日本の家を変える』というミッションを掲げています。これまで不動産をつくってきたカーサプロジェクトの“動かせる家”というコンセプトのもと、デザインと居住性、そしてコストにもこだわりました。

『mobile casa』は色んな土地活用の可能性を秘めていますし、新築はもちろん、車のように中古での売買も容易な住宅となることも期待しています。

『mobile casa』の用途は限定していませんので、皆さんが思い描くあたらしい“暮らし方”によって、新たな市場をつくっていけたら面白いですね。そして『mobile casa』がきっかけとなり、住宅の流通が活性化することを願っています。」

ー 映画のワンシーンのようなキャンピングカーでの暮らしを、令和の日本で実現できるとしたら?
ー いまの暮らしを、そのままトレーラーハウスでも実現できるとしたら?

これまで“家”という不動のものを起点に考えていた“居住”の概念を、一旦まっさらに戻し『自分はどの場所で、どのように暮らしたいのか?』と問うた時に思い浮かぶ光景が、一箇所ではなく、無限の選択肢をもてる時代になって欲しいと三者は語ります。

令和のスタート共に、またwithコロナという現状においても、さまざまな固定概念が刷新されていっている今日。“ひとところに止まらない家”は新しいライフスタイルになるのかも知れません。

動画:ワールドビジネスサテライトでもご紹介頂きました