場所にとらわれない、身の丈に合ったサイズの暮らしで、人生は豊かになる – 辻堂のスケルトンハットを選んだ2組のストーリー

YADOKARIとエンジョイワークスが共同開発したリアルに住める高性能小屋「THE SKELETON HUT」(以下スケルトンハット)が2棟、湘南の海の近くに建っています。こちらは、スケルトンハットとしては初の賃貸住宅。現在、2組がセカンドハウスとして利用中です。ここでいま、どんな方がどんな住まい方をしているか、YADOKARIがお邪魔してお話をうかがってきました。

左から、森田哲史さん、森田麻耶子さん、ショパン、佐藤幸恵さん

辻堂駅から車で海方面へ向かって約10分。もともとは雑木林があった土地を、新しい住まい方ができる場所として有効活用したい、というオーナーさんの要望を受けて、2棟のスケルトンハットが誕生しました。

それぞれ内装デザインは異なりますが、サイズは同じ。ウッドデッキと庭は共用で、独立しながらゆるやかにつながっているイメージです。庭には雑木林にあった木々がいくつか残され、かつての面影を伝えています。

2棟のスケルトンハットのうち、向かって右側のA棟を事務所として使っているのは佐藤幸恵さん。IT企業を経営しており、ご自宅は横浜市港北区にあります。左側のB棟で暮らすのは、会社役員の森田哲史さんと妻の麻耶子さん、そして愛犬のショパン。山口県にご自宅をお持ちです。そんな2組が、セカンドハウスとしてスケルトンハットを選んだ理由はなんだったのでしょう。

ご近所づきあいのできる、小屋暮らし

森田さんのお宅にて、美味しいお茶を囲む

——こちらを借りることになったきっかけを教えていただけますか?

森田哲史さん

森田さん:自宅は山口県にあります。東京にある会社の役員を任されることになり、会議などに出席するために時々上京するようになりました。当初はホテルを利用していましたが、妻と犬と一緒に泊まれるところを見つけるのは大変。しかも最近は仕事の頻度が増えて苦労していると会社に相談したところ、こっちで家を借りていいということになったんです。今お話ししたように出社する頻度が増え、最近は月に2週間程度はスケルトンハットに滞在しています。

森田麻耶子さん

麻耶子さん:私たち、元々は東京に住んでいて、山口の家は瀬戸内海でシーカヤックを楽しむためのセカンドハウスとして建てたんです。2ヶ月に1回くらいそこに行って休暇を過ごし、帰京するというサイクルで生活していました。当時主人はフランスの会社に勤めていて日本とフランスを行き来していましたが、仕事が忙しくなり、このままだと身体を壊すんじゃないかと不安を感じてしまって。彼の健康寿命を考えると、二人で生き生きと過ごせる期間は残り15年くらい。その時間を大切に過ごしたいと考えるようになったんです。

森田さん:それで5年前、老後の生活に入るつもりで会社を辞めて、生活の拠点を東京から山口に移しました。すると今の会社に役員として来ないかと誘われて、会議などに呼ばれた時に家内と犬と一緒に上京するようになりました。

佐藤幸恵さん

佐藤さん:私は横浜市内にパートナーと購入した一軒家を持っていて、スケルトンハットは事務所として使っています。それ以前は約10年間、港区のビルに事務所を借りていました。当時は10人ほどの社員を抱えていて、一年中彼らのケアをしているような状態でした。休暇中にもガンガン電話がかかってくるんです(笑)。それでも楽しかったんですが、そろそろ会社の規模を縮小して一人で自由にやろうかなあと思うようになりました。今まで港区に事務所を構えていたのは、クライアントに信用していただくためにそれなりの住所が必要だったから。でも今はそういう時代でもないし、これまでの10年間でお客さまとの信頼関係も築いてきました。月一回程度しか行かない事務所に高い家賃を払うより、安いところに移して経費を抑えれば、その分たくさん旅行に行けるなあと目論みまして(笑)。新しい事務所用の物件として3件問い合わせたうちの一つがこちらだったんです。

——辻堂という場所で、スケルトンハットという一風変わった物件を選んだ決め手はなんだったんですか?

佐藤さん:小さいとはいえ開放感があるつくりで、窓から木が見えるところが気に入りました。私はもともと田舎のおばあちゃんの家のような建物が好きで、最初にネットで見つけたのがまさにそういう物件だったので、そこにするつもりだったんです。でもここを内見したら一目惚れしてしまって(笑)。念のため信頼している友達に相談したところ太鼓判を押してくれたので、ほぼ即決でした。

森田さん:うちも迷いませんでした。実は仕事のこととは別に、妻がYADOKARIのフェイスブックでここを見つけていたんです。もともと「小さな暮らし」に関心があって、山口の自宅もほぼ同じ形とサイズで、「可愛いね」なんて話していたんですよ。

——でも一般的な物件を考えるとやっぱり小さい。そこに抵抗はありませんでしたか?

佐藤さん:ホテルを探すような感覚で見ていたかもしれません。ここはホテルよりは広いので、特に違和感はなかったと思います。

麻耶子さん:「小さく住まう」という自分たちのライフスタイルをキープできる物件だったので、抵抗はありませんでした。砂浜が近くて、犬が一緒でもいいと許可をいただけたのも大きかったですね。

森田さん:お隣の佐藤さんにも快く受け入れていただいたこともありがたくて。

佐藤さん:犬好きなら悪い人ではないだろうと(笑)。

麻耶子さん:時々ショパンと遊んでいただいてありがとうございます。

佐藤さん:とんでもない。私も犬は大好きですから。

2棟の間に塀などの仕切りを設けていないのは、お隣さん同士の距離を開けず、ご近所付き合いのある暮らしを実現できる小屋にしたかったから。そんな作りも含め、楽しんで暮らしていらっしゃる様子が伝わります。

身の丈に合ったサイズの暮らしが心地いい

——森田さんは「小さな暮らし」がライフスタイルとおっしゃっていましたが、そんな暮らし方に関心を持たれたのはいつ頃ですか?

森田さん:僕はフランスに23年間ほど住んでいた時期がありました。その中で実感したのが、フランス人があまり物を増やさないということ。テーブルクロスやナプキン類は最低限のものを持って、例えば3年に1回とか定期的に交換します。その時、前に使っていたものはきっぱりと捨てる。寄付するシステムも完備されているんですよね。

——確かにヨーロッパには、バザーや寄付など、物を上手にシェアする文化があります。

森田さん:食事もシンプルですよね。日本式だと、ご飯があっていろんなおかずがあって……とあれこれ準備が必要になり、それだけ食器もたくさん使いますが、フランスでは普段の食事はほぼワンプレートで済ませてしまうんです。その習慣がいつの間にか染み付いていて、8年前に家内と結婚してからもそのスタイルを続けています。一度「よく我慢しているね」と聞いてみたら、「特に我慢してないよ」と言ってもらえた(笑)。

麻耶子さん:私達はよく旅行するんです。山口と東京を行き来するのにも車を使って、いつも違うルートを選んでのんびり旅を楽しんでいます。そんな時、二人の1週間分の荷物が小さなバッグに十分収まるので、最近はこれだけあれば生きていけるんじゃないかと思うようになりました。南仏で、アパート形式のホテルに滞在した経験も影響しています。食器もリネン類もシンプルなものが4組ずつしかなかったのに、それがすごく快適でした。「溢れる物に振り回されないことは、こんなに心地いいんだ」って。それで山口にセカンドハウスとして小さな家を建てました。偶然にも、スケルトンハットもほぼ同じサイズです。そんな小さな家で、日用家電やお皿も真剣に選んで本当に気に入った物だけに囲まれて暮らすのが気持ちいいと思うようになったんです。

森田さん:何かを購入するときもとにかく吟味して、1個増やせば1個減らす。その行為自体が楽しくなったんだよね。

佐藤さん:私も旅好きなので、物はそんなに必要ないという感覚はわかります。紙袋一つくらいの荷物で海外旅行、というスタイルに憧れているんです。

森田さんのスケルトンハットは、山口の家に次ぐもう一つの生活の場。シンプルなデザインの棚やテーブル、機能性の高さで知られる調理器具や家電が限られたスペースにぴたりと収まっています。一方、佐藤さんは事務所としての利用。もともとお好きだというアンティークが基調の椅子やテーブルがゆったりと配され、非日常的でありながら居心地の良さが伝わるインテリアです。

森田さん:うちは生活できる環境を早く整える必要があったので、テーブルやワゴンなどの家具に関しては一気に買い揃えました。無印良品やカインズホームなどのシンプルなものが中心ですが、靴箱やベッドはデザインが気に入ったものを入れました。

森田家のキッチン。棚やワゴンはサイズピッタリ。そこに厳選された道具が整然と収まっています。

佐藤さん:テイストが統一されているからか、急いで揃えたとは見えないのがすごいですね。私はまだ部屋づくりの途中です。自宅でもこのスケルトンハットでも、「一生好き!」と思うほど惚れ込まなければ買わないと決めています。それでも若い頃はあれこれ買っていたんですが、今の自宅を購入して引っ越すとき、大量に捨てました。今まで何度か引越しをするたびにゴミを運んでいたのか、とショックを受けるくらいの量でした(笑)。間に合わせで買うと絶対に後悔するのに、もったいないと思って捨てるに捨てられず、それがストレスになってしまう。だから今、本当に好きなものを探している最中なんです。

——佐藤さんはこちらを事務所としてお使いとのことですが、どんな風に過ごされていますか?

佐藤さん:ほとんどのクライアントは東京の企業なので、事務的な打合せなどは大体都内でやっています。こちらには、うちの元社員で今はフリーランスのシステムエンジニアとして契約している人達に来てもらうことが多いですね。ストレスを抱えてメンタルの調子を崩す人が多い職種なので、ここへ来て海でも見てのんびりしてもらうんです。

大きな窓から木が見える佐藤さんのリビング。アンティークのテーブルと椅子が落ち着いた雰囲気。

——こちらを借りてから、何か変化はありましたか。

佐藤さん:以前の事務所に行く時は「書類や郵便物が貯まる頃だから、そろそろ行かなきゃなあ」と、重い腰をあげるような状態でしたが、今では「今週は辻堂に行ける!」と楽しみになりました。いつもの生活から離れた場所だと「しなければいけないこと」から解放された感覚がありますし、いかにも事務所的な殺伐とした感じでもないので、ストレスは感じないしいい発想も湧きます。そういえば来客が減ったのもよかったことの一つです。都内の事務所だとみなさん割と気軽にいらっしゃる分、どうしても要件以外のおしゃべりも長くなってしまっていたのですが、そういう時間がぐっと減ったのはありがたい(笑)。事務所をここに移したことで「鵠沼海岸の近く?なぜ?」なんて話のきっかけになって、営業的にも役立っています(笑)。

森田さん:一ヶ所だけで暮らすより、変化があるのも楽しいですね。一箇所にとどまっていると物の見方も内向きになっていきますが、生活の場所が定期的に変わると否応なく外を見るようになります。

麻耶子さん:歳を重ねた時に人に迷惑をかけず、自分も楽に暮らしていけるのはこのくらい小さな家なのかも。広い家だと掃除やメンテナンスにエネルギーを使わざるを得ないけれど、このくらいのサイズでシンプルに暮らして、その分夫婦二人のアクティビティに時間を長く使ったほうが、人生は豊かになると思うようになりました。

佐藤さん:わかります。横浜の自宅はこのスケルトンハットに比べて随分広くて、掃除をしていると、家が主人で私が使われているかのように感じることがあるんです。掃除は趣味の一つなので楽しんではいますが。

森田さん:フランスで世話になったご婦人と、何かのきっかけで議論したことがありました。僕がなんとなく「人間は幸せになる権利がある」と言ったら、「人間が幸せになるのは権利じゃない。義務なのよ」と反論されて。つまり、義務である以上は幸せになる努力をしなきゃいけない、と真剣に言われて、フランス人が毎日のご飯もおろそかにしない、毎週末の過ごし方も無駄にしないのは、そういう考えに基づくものなんだなと思って、以後、心にとどめて日々を暮らしています。

佐藤さん:今日お話しさせていただいて、思いのほか勉強になって、ついメモを取ってしまいました(笑)。ありがとうございました。

森田さん:こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。山口の家にもぜひ遊びにいらしてください。

佐藤さん:ぜひ!

一つの場所に囚われない暮らしがいい刺激になっている、と口をそろえるお二方のお話には、小さな住まいで豊かに暮らすためのヒントがたくさん散りばめられていました。クリエイティビティ次第で、スケルトンハットの可能性はかなり広がりそうです。

THE SKELETON HUT(スケルトンハット)の詳細はこちら

リアルに住める高性能小屋「THE SKELETON HUT