【タイニーハウスに行ってみた】子供時代を育む「Tiny Village Kleinhuizen」(後編)

(c)Naoko Kurata

オランダでは2015年以降、トレーラーハウスをはじめとするタイニーハウス生活に踏み切る人々が増えてきています。どこにでも野放図に住める訳ではありませんが、そんな人々の機運をくみとり、自治体のほうでも実験的にタイニーハウス居住区を作り出してきているのです。前回は、Nieuwegeinの郊外に住むKarinさんたちのタイニーハウスをご紹介しました。今回は、彼らと同じ「Tiny Village Kleinhuizen」に移住してきた方々のタイニーハウスをご紹介したいと思います。

太陽に向かう黒いタイニーハウス

(c)Naoko Kurata
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「Tiny Village Kleinhuizen」は、2017年後半にオランダ中部の自治体Nieuwegeinがトレーラーハウス専用の居住区として開放した敷地です。最大10軒のタイニーハウスが最長2年ここに居住できることになっています。取材時の2018年夏の段階では、6軒のタイニーハウスが移住してきています。
ちなみに前編でご紹介したKarinさんたちは、この土地への最初の移住者。暖かくなってきてから移住してきた方が大半の中で、すでに一冬を越している先輩なのです。

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占有率6割ということもあり、敷地はまだ余裕がありますね。

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まずご紹介するのは、こちらの黒いタイニーハウス。他の家に対して背中を向けるように設置されています。最初は「プライバシー確保のため?」と思いましたが、理由は全く異なりました。

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こちらが、出入り口側に回ったところ。全体が黒いので気が付きにくいですが、屋根にはしっかり太陽光パネルが取り付けられています。そう、日当たりの良い方向に太陽光パネル及び採光窓にもなるエントランスが向いていたのです。効率よく日光を取り込みたいオフグリッド・ハウスには、方角は重要ですからね。逆に言うと、採光性の高い方向に好きに設置できるのは、モバイルハウスの利点でもあるのではないでしょうか。

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こちらの家には、Natasja さんとGerbrandさんのご夫妻が住んでいます。窓辺に飾られている「Just Married!」のオーナメントがまぶしいですね!
なんとGerbrandさんは、この「タイニーハウス・オーケストラ」の記事をご覧になったことがあるそうです! 実は以前掲載された「先駆者たちのタイニーハウス村」の記事を、中心人物のMarjoleinさんがご自身のFacebookページで紹介してくれていたのです。もちろんGerbrandさんは日本語は読めませんが、その時の記事を覚えていてくれたのだとか。うーん、感動です!

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2018年3月に「Tiny Village Kleinhuizen」に移住してきたばかりですが、ここでの暮らしは非常に快適だと教えてくれました。2018年は日本と同様にオランダも猛暑でしたが、それも無事に乗り越え、何の不満もなく生活できているそう。

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そして夏の暑さが過ぎ去ったいま、今度は来るべき冬の寒さに対する備えを見せていただきました。てっきり薪ストーブなのかと思ったら、これは「ペレットストーブ」なのだそう。ペレットストーブの燃料は、木の切りくずなどを粉砕して圧着した「木質ペレット」です。間伐材の不要部分などから作られるので、薪を用意する手間も要らず、石油ストーブが抱えるCO2 に関する問題とも無縁。ランニングコストも非常に経済的で、いいところ尽くしの暖房なのです。
ぜひこのペレットストーブで、冬を乗り切っていって欲しいですね!

素敵なテラスのタイニーハウス

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2軒目のお家は、残念ながらご不在でした。

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家の前のテラスに屋根がついていて、リラックス・スペース兼作業場のようになっていました。雨の日は、ここに洗濯物を干すのも便利そう。
外観だけでこんなに素敵なので、ぜひ中も見学したかったです。ぜひまた次の機会にお邪魔させてほしいと思います。

「小さな暮らし」パイオニアの住む「Porta Palace」

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実は、今回の「Tiny Village Kleinhuizen」訪問で一番驚いたのは、この「Porta Palace」(ポータブル式宮殿という意味)との出会い。実はこの家のオーナーであるJelte Glas氏は2015年秋にタイニーハウス生活を始めた、オランダのムーブメントの中でもアーリースターターなのです。早い段階から雑誌をはじめとするオランダ・メディアの取材を受けていて、私も以前からその存在を知っていました。
「Tiny Village Kleinhuizen」に移住してきている方々のプロフィールを確認せずに訪れたので、まさか「Porta Palace」の見学ができるとは思っていず嬉しい驚きでした。

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「Porta Palace」は、床面積18㎡とタイニーハウスの中でもコンパクトな部類に入ります。Jeltさんは恋人のAnnemarieさんと一緒に住んでいますが、手狭感は全くなく非常にすっきりとした暮らしぶりです。

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コンパクトでありながら、バスルームやミニキッチンもしっかり完備しています。ちなみにバスルームは、寝室として使用しているロフトの下にありました。

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Jelteさんが2016年にうけた雑誌インタビューの記事を読み返してみると、彼は

「誰かの家の裏庭にタイニーハウスを置いて住んだりするのは嫌だな。どこか素敵な都市の近くに、同じような人々と小さな村に住みたい。でも残念ながら、(オランダには)まだそんな場所は存在しないけど」

と語っていました。
このインタビュー当時彼は、アムステルダム近郊の一時滞在スペースに「Porta Palace」を設置していて、「半年後はどこに居るか分からない」とも書かれています。それが2年の時を経て、こんなに素敵な場所にたどり着いたのですね。
その2年の間にオランダ各地の自治体でも対応が進み、よりトレーラーハウス生活を始めやすい土壌ができつつある風潮を感じます。彼が過ごした2年は、まさにオランダ社会の変化とともにあった2年と言えるのではないでしょうか。

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実はこの取材日は、晴れと雨を繰り返す不安定な天候でした。2軒の見学を残しながらも、豪雨に見舞われ撤退となってしまいました。非常に残念です!
「Tiny Village Kleinhuizen」に10軒のタイニーハウスが揃った頃に、ぜひ改めて訪れたいと思います。

ライター:倉田直子