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ちょっと広いタイニーハウスがあってもいい、これなら住めると思わせる「LebenHütte」


タイニーハウスやそこで生活している人を見ると、心踊りませんか?
鴨長明が草庵で送ったような、つつましくも豊かな暮らし。そんな暮らしに憧れて、僕は4畳一間や10平米の狭小住宅に住んだこともあります。

でもいざ住んでみると、やはり工夫が必要でした。収納がないので物は減らさないといけませんし、スペース不足から炊事や洗濯などに少々不便を感じることも。

一人暮らしでこのような具合ですから、夫婦や子連れ世帯には、よりハードルが高くなってしまうでしょう。現に、タイニーハウスに憧れていても、「実際に住むと、ちょっと手狭じゃない?」と思う人は多いと思います。

暮らしていると物は増えてしまう。でもタイニーハウスには収納が少ない。じゃあ物を減らそうかと考えても、捨てられるものは少ない。最終的に外に物置でも置こうか、なんてところに着地しがちです。

小さな暮らしを実現しながら、必要な空間はほどよく広い。そんなタイニーハウスはないだろうか? と思っていたら風の噂が。岩手県の住宅メーカーが、ひそかにタイニーハウスキットの開発を進めているようです。

噂を聞いたらいてもたってもいられない。僕は東北新幹線に乗って、岩手県の小岩井に完成したという情報を得て、現場へと向かいました。

【インタビュー】
ちょっと広いタイニーハウスがあってもいい、これなら住めると思わせる「LebenHütte」

ヤマミチ建築設計事務所 × YADOKARI

田山 祐智
ヤマミチ建築設計事務所 代表/二級建築士
無垢材を手掛ける住宅会社で現場監督として建築のノウハウを学んだ後、岩手県盛岡市でログハウスやタイニーハウス、リフォーム&リノベーションを手がけるヤマミチ建築設計事務所を設立。2018年からはタイニーハウス専門ブランド「LebenHütte(レーベンヒュッテ)」を販売している。

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コンセプトは「ミニマム&リッチ」、レーベンヒュッテはどんな家?

到着した場所は雪深い高原地帯。歩くと足首まで雪に埋まってしまいます。トレッキングシューズで向かってよかった……。

雪の中を歩いていくと、見えてきました! これが今回紹介するタイニーハウス、レーベンヒュッテです。

早速中を見せてもらいましょう。中に入ってみると……。



無垢の木の質感が心地よい空間が広がっていました。温かみがあって居心地もいい。印象的だったのが間取りの広さです。タイニーハウスと呼ぶには少し広い気がしますが、これはなぜなのでしょうか? そこで、レーベンヒュッテを作ったヤマミチ建設設計事務所の代表、田山さんにお話を伺ってみました。

- 先ほどモデルハウスの中をひと通り見せてもらいましたけど、間取りに余裕がありますね。二階は2室で風呂場も標準サイズ、収納もある程度確保できている。まるで小さなコテージみたいです。タイニーハウスとしては少し大きめの間取りにしたのは何か理由があるんですか?

田山 祐智さん(以下、田山さん):小さくても生活できる「リアルなサイズ」で家を作りたかったんです。

タイニーハウスはご存知のようにアメリカのトレーラーハウスを源流のひとつにしていますよね。でも、そのサイズではお風呂やトイレが作れなかったり、収納が確保できなかったりと無理が生じてしまい、人が家に生活を合わせていた。だからレーベンヒュッテは間取りも機能も、実際に住んで困らないように設計しました。

- レーベンヒュッテは「書斎や事務所向け」「ファミリー向け」「シニア世代向け」の3つのシリーズに分けて、9種類のキットが販売されてます。キット単体で、下は350万円(4坪)から、上は830万円(23坪)まで。基礎工事費や施工費を加えると1000万円を超えてしまうものもあります。タイニーハウスとしては少し高めの値段設定だと思いますが、これも意図しているのでしょうか?




田山さん:それも意図したものです。タイニーハウスや小屋のなかには200万円くらいで買えるものもありますが、小屋の用途では住宅ローンが組めないんです。

また、住宅とした場合でも低価格すぎるとやはり住宅ローンでは借りられません。しかし、フリーローンになると金利は一気に高くなります。趣味の用途として使うものに、現金で200万円をポンと出せる人は少ないですよね。ならば、住宅ローンが組みやすい価格設定をして、家として使ってもらった方がお客さんも購入しやすいだろうと考えました。

- ローンのことは見落としていました。たしかに、200万円って一般的なご家庭では気軽に出せる金額ではないですよね。お話を伺っていると、すごく地に足がついた家ですね。間取りにしても価格にしても。

田山さん:ヤマミチは住宅メーカーですから、家というものを現実的な視点で捉えています。とにかく小さければいいとは思いませんし、建築家の作るような「作品」にしたくなかった。僕たちにとって家は商品ですし、購入するお客さんにとっては生活の場です。そう考えたら、必然的にいまのスペックになりました。

そういう方向性の一例を挙げると、レーベンヒュッテは基本的に正方形で設計しているんですけど、これにも理由があるんです。一般的なトレーラーハウスは長方形をしていますよね。たとえば、同じ16㎡でも正方形と長方形では外周の長さが異なるんです。

- 本当だ! 正方形だと16mで、長方形は20mですね。

田山さん:たった16㎡での比較でこの差ですから、家の面積が大きくなればその差はさらに大きくなります。外周が短くなると、外壁や内装のコストが抑えることができ、ほかの部分に費用をまわせます。これもお客さんのことを考えて出てきたアイデアです。

- ローンにしても外周にしても、住宅メーカーならではの視点ですね。タイニーハウスは面白いライフスタイルだけれど、憧れから抜け出せなかったり、「実際に住むのは難しいかも……」という感覚が拭えなかった人が多いと感じています。

その要因は大きさや価格、デザインなど様々だと思いますが、レーベンヒュッテは従来のタイニーハウスよりも大きく、戸建て住宅より小さい。間取りの選択肢が増えることで、タイニーハウスの間口は広がるのではないでしょうか。

全プラン薪ストーブ対応、遊び心もゆとりも欲しい


田山さん:レーベンヒュッテのもうひとつのコンセプトは「ミニマム&リッチ」なんです。タイニーハウスはミニマルな方向に向かって行きがちですが、ゆとりを持って住めるように内装は無垢の木で作り、キッチンやトイレなどを広めに設計しています。見学会でも「家は小さいのに風呂は大きいね」とよく言われるんです。

また、LebenHütteは一番小さいプランから大きなプランまで、すべてに薪ストーブを設置できるように設計してあります。やはり無垢材の内装に似合いますし、なにより薪ストーブほど豊かさを象徴するアイテムはないと思っているからです。

暖房器具として見た時、薪ストーブは他の物と比べるととても手間も時間もかかるもの。それを受け入れた上で使うことのできる精神的、時間的な余裕。そういう意味での豊かさです。「小さい家だから我慢して暮らそう」なんて思う必要はないと思います。

- 家は毎日過ごす場所だからこそ、遊び心やゆとりは大切なことですよね。逆にデメリットも聞いていいでしょうか? 少し答えづらいとは思うのですが……。

田山さん:デメリットはどうしても収納スペースがとりづらいですね。特にファミリーで住む場合は、衣服や家電、寝具など生活用品が多くなりますから、少し物足りなくなってしまうかもしれません。

一応、そこを見越して内装はすべて無垢の板張りを標準としていますので、いざ生活するなかで足りなくなったときは、オーナーさんの方で必要なだけ棚などを取りつけてもらえたらと思います。壁は木でできていますので、すべてが下地として使えますから強度的も心配無用です。

- 創意工夫が必要な家と言って良さそうですね。ところで、レーベンヒュッテはどのようにして生まれたのでしょうか? エピソードを聞かせてもらえますか?

開発のエピソード、レーベンヒュッテはなぜ生まれた?

田山さん:レーベンヒュッテの原型は、自宅の庭に建てた小屋でした。以前からタイニーハウスに興味を持っていて、いずれ商品化もしたいなと考えていたところへ、ちょうど補助金事業の当てがついたので建ててみました。これは9.9㎡の小屋、事務所としても使っています。

田山さん:その後、この小屋を見たお客さんがセカンドハウスの設計・施工を依頼してくれたんです。そのオーナーさんは定年を迎えたご夫婦で、畑仕事をしながら過ごせる第二の家を求めていました。こちらは大きなロフトがついた7坪のタイニーハウスになりました。

田山さん:実は、このご夫婦のように「小さな家を建てたいんだけど」という問い合わせは、今までにも何度か頂くことがありました。ご年配の方が多くて「平屋でいい」と。そうした需要もありましたし、タイニーハウスムーブメントの盛り上がりもありましたから、「日本人にも馴染みやすいサイズと設備のタイニーハウス」を目指し、商品化に向けて動き出しました。

- 商品化に向けてまずは何をしたのでしょうか?

田山さん:色々ありますけど、まずはデザインでしょうか。その時、以前アメリカで買ったアウトドアマガジンの広告に載っていた三角屋根の山小屋を思い出したんです。三角屋根の家って誰もが心に思い描く、「家」の原型じゃないですか。小さな子どもに家を描かせても、そう描きますよね? そうした経緯もあって、どうにも山小屋の立ち姿には惹かれるものがありました。

商品ブランド名のレーベンヒュッテという名前は、ドイツ語で直訳すると「生活の山小屋」という意味ですが、趣味で山登りをしていたので「ヒュッテ(=山小屋)」という名前に愛着があったんです。語感も良かったのでこの名前でいくことにしました。

- 最初に見たときは三角屋根が印象的でしたけど、そういう理由があったんですね。

費用や施工期間など、現実的なところも聞いてみましょう

- 最後に、実際に購入する場合はどれくらいの費用と期間で建てられるのかを教えてください。

田山さん:レーベンヒュッテは現在9種類のキットを販売しているので、一概にこうだとは言えないんですが、必要な費用は「キットの代金」「土地の代金」「工務店さんの施工費および外注費」です。施工期間は基礎工事を除いて、およそ2ヶ月だと考えてもらえれば無理なく建てられると思います。

- キットは全国に届けてもらえるんですよね?

田山さん:はい、47都道府県どこでも届けます。あとは地元の工務店さんに頼んでください。一般的な在来工法なので、全国どの工務店さんでも施工が可能です。岩手県内であれば弊社でも施工を承っていますよ。

それと、断熱は標準仕様外としてありますが、地域や用途によって求められる性能も変わってきますので、ここは工務店さんと相談して決めていただければと思います。

- インタビューの場所になったこの家が、レーベンヒュッテの記念すべき1軒目とお聞きしました。
9種類のラインナップがあるので、購入する人に合わせて間取りや価格が選べる、「現実的な視点で選べる」タイニーハウスになりそうですね。今日はありがとうございました!

じっくりと話を聞いたせいか、外に出てみるともう日が傾いていました。田山さんの話を反すうしながら帰路につきます。

「家は作品ではなく、オーナーさんが住む場所。だから現実的な間取りにした」という話は、住宅メーカーだからこそ出てくる視点でした。

実際の生活はリアリティにあふれているし、ライフスタイルも変化するもの。5年も住めば「収納が欲しい」「キッチンにもう少し余裕があれば」と要望が出てくるでしょう。

そんな時に、間取りに少し余裕があれば生活の質は向上するし、伴侶や子どもなど新しい家族を受け入れることもできる。その点、レーベンヒュッテは「ちょうどいい」タイニーハウスなのではないでしょうか。

▼レーベンヒュッテについての情報はこちら

ライター:鈴木雅矩(スズキガク)

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