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【特集コラム】第2回:自分流を手に入れる! 北欧「夏の家」スタイルいろいろ

田村千夏プロフィールアイコン | 2014.8.12
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北欧の「夏の家(サマーハウス)」を切り口に、豊かな暮らしとは何かを考えていくこの連載。
第1回では、「夏の家」が北欧の人々にとってライフスタイルの基盤のひとつとなるまでの、社会的・文化的背景について見てきました。
豊かな暮らしのヒントがありそうな北欧の「夏の家」ですが、具体的にどんな人がどんな「夏の家」を持っていて、どのように過ごしているのでしょうか?
第2回では、北欧の「夏の家」の所有率や建築のタイプやインテリアについて見て行きたいと思います。

スウェーデンでは、2割以上が「夏の家」を持っている

北欧では多くの人が「夏の家」を持っていると言われていますが、実際その所有率はどのくらいなのでしょうか?
オンライン調査会社Cintが行った調査や、Sweden Sverigeの記事によると、スウェーデンでは、およそ20%の人が自分自身の「夏の家」を持っていて、家族や親戚が持っている場合を含めると、自由に利用できる「夏の家」を持っている人は30%以上に上るとのこと。
日本では、総務省統計局が行っている住宅・土地統計調査の報告によると、別荘(現住居以外の住宅のうち、用途が「二次的住宅・別荘用」のもの)を所有している人の割合はわずか0.63%! それに比べると、2割以上の人が所有しているというのは驚くべき普及率です。
自分では所有していなくても友人や知人の「夏の家」で休暇を過ごすという人もいて、多くの人が大自然の中でのんびり休暇を満喫していることが伺えます。

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ただ、近年は昔ほど「夏の家」の利用率は高くない様子。生活が多様化して、休暇に旅行をする人も増えているとか。
昔ながらの「夏の家」スタイルと言えば、とても不便なところにあって、お湯や電気はもちろん、水すら出ないような何もない環境の中で質素に暮らすことで、都会の喧噪を離れて日常の疲れをリフレッシュする、というのが一般的でした。でも最近は、便利さや都会との繋がりやすさを重視してか、「夏の家」エリアでインターネットが開通しているところもあるそうです。
休み中や旅行先でも仕事関係のメールチェックをしてしまう日本人の感覚からすると、当然の流れのように思いますが、時代と共に北欧の人々の感覚も変化してきているのかもしれませんね。

北欧の「夏の家」市場

近年の「夏の家」市場では、北欧諸国の中でも人気があるのはスウェーデンです。低価格で素敵な「夏の家」が手に入るということで、2000年頃からはノルウェーやデンマーク、オランダなど周辺国の人がスウェーデンで「夏の家」を購入する割合が多くなっています。
もちろんピンキリですが、スウェーデンの住宅の適正価格は2,700万円ほど。ストックホルム中心部で、少し大きめのアパートの一室を買うには3,000万円ちょっと必要です。「夏の家」なら、エリアや規模によって値段はさまざまですが、600万円くらいから手に入れることができます。
安くて大きな家が手に入ることから、都心に狭い部屋を持つよりもメリットを感じて購入する人が、30代以下の世代に増えているそうです。
また、「夏の家」や週末住宅をレンタルするサイトも多いので、シーズンごとに違う「夏の家」を借りてみるのも楽しいかもしれません。

多彩な「夏の家」バリエーション

これまで「世界の小さな住まい方」で紹介されたものを含め、北欧の「夏の家」にはさまざまなタイプがあります。昔ながらの小屋風のものから、建築家が建てたスタイリッシュなものや近未来的(?)なものまで、ライフスタイルや価値観の多様化と共に、そのバリエーションは広がり続けています。

スウェーデンなどで典型的なのは、赤い壁に白い縁取りの木造の小屋。絵本に出てきそうな可愛らしい家です。ボート乗り場のある水辺に建っているものなど、最も伝統的なスタイルです。
先日連載が始まった、サリーン森亜さんのスウェーデン暮らしの記事に登場する家も、まさにこのスタイルのものでした。
第1回:スウェーデンの伝統的な赤い家 〜ひみつの屋根裏部屋を覗いて〜

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Gotland Summer House / Enflo Arkitekter + DEVE Architects

また、現代的なタイプでは、この「夏の家」のように大きなテラスや壁いっぱいに大きな窓を設けているものも多く見られます。
北欧の夏は、白夜で朝4時頃から夜22時頃まで明るく、気温も10〜20℃くらいで涼しくて爽やか。外と繋がる開放的な「夏の家」が多いのも納得できます。
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via:http://www.archdaily.com/420696/gotland-summer-house-enflo-arkitekter/

Summer Cabin Design / WRB

こちらも開放的なタイプ。スウェーデンのWood Awordを受賞したこの「夏の家」は、ガラス張りのリビングに木ルーバーを施し、季節ごとに快適な環境になるよう工夫されています。
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via:http://www.trendir.com/house-design/summer-cabin-design-award-winning-wood-house-by-wrb.html

Swedish summer house / General Architecture

古家を改修して、古きよきものを引き継ぎながら自分流の「夏の家」を手に入れるというのも、選択肢のひとつ。
スウェーデンに建つこの「夏の家」は、小さな木造の穀物倉を解体し、その部材のモジュールに合わせて新しく基礎や開口を加えて組み直すことで家として再生させたものです。新旧の工法や時間の流れを包含した空間には、新築にはない独特の質感や空気があります。
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via:http://nykyinen.com/general-architecture-swedish-summer-house/

Building no. 8 / Skälsö Arkitekter

戦争中に使われていたバンカーの跡地を改修して「夏の家」にした、異色のものも。洞窟のような粗野な外観はそのままに、白い壁と木の窓枠や家具が、時間を経て得られた独特の穏やかさをつくり出しています。
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via:http://www.archdaily.com/509444/buildning-no-8-skalso-arkitekter/

この他にも、ここでは紹介しきれないほど、おもしろい「夏の家」はたくさんあります。詳細はまた「世界の小さな住まい方」の方でも少しずつご紹介していきたいと思います。
「夏の家」は、休暇を過ごすための非日常空間でありながら、自分のライフスタイルの延長でもあります。自分の感覚にぴったりな家を見つけたり、自分自身で古家を改修して好みのものをつくったりできるのも、セカンドハウスである「夏の家」の身軽さならでは。
シンプルに、自分の好きな空間に包まれてゆったり過ごす。それが「夏の家」スタイルの真髄なのではないでしょうか。

今回紹介した「夏の家」は主にスウェーデンのものが多かったのですが、デンマークやフィンランドにもさまざまな「夏の家」があります。
また、これまで「世界の小さな住まい方」に登場した「夏の家」の中には、北欧だけでなくアメリカやイギリスなどの他の地域のものもありました。
国の違いによって、具体的に「夏の家」スタイルに違いはあるのでしょうか? 
第3回では、「夏の家」の地域性について考えていきたいと思います。
もし、日本流の「夏の家」スタイルがあるとしたら…? 地域性を読み込むことから、何かヒントが見えてくるかもしれません。

[参考]
第一回Cintスウェーデンミニ調査「サマーハウスの利用実態」
総務省統計局/平成25年住宅・土地統計調査
北欧総合情報サイト【北欧区】
Sweden Sverige/THE SWEDISH SUMMER HOUSE – A LOVE AFFAIR
The Local Sweden’s news in english
sweden-holidays.com
The Eden of Sweden
A Place in the sun-Guide to buying a property in Sweden

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Writer 田村千夏

たむらちなつ。東京在住、出版社勤務を経てフリー。

大学で建築設計を学び、建築をつくることだけでなく、建築や街ができるプロセスや、そこに関わる人々の手痕を伝える編集的な仕事に惹かれる。
もっと建築の可能性を探っていきたいという思いから「未来の住まい方会議」に参加。

近年中に地方へ移住を計画中。地方に軸足を置いた活動の広がりや、地方から発信していくことにも興味がある。

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