第1回:アーバニズムの旅するサーカス|ポートランドの小学校の廃校活用プロジェクト、ケネディスクール

こんにちは。
主に北米を中心に移動しながら、フリーランスの編集者・ライターとして各都市のまちづくりに関するトレンドをリサーチしている杉田真理子です。世界各地で筆者が目にしたまちづくりの面白い事例を、「Traveling Circus of Urbanism(アーバニズムの旅するサーカス)」というプラットフォームで英語での情報発信を行っています。今回、その中からいくつか、日本語でYADOKARIに記事を寄稿させて頂くことになりました。

タイニーハウス、コミュニティビルド、多拠点居住などに興味がある読者が、思わず旅をしたくなるような世界各都市の街づくり・建築のトレンド情報を紹介していきます。毎月「○○編」として、異なる都市から発信をしていくので、お楽しみに。

第一回は、「適応型再利用(Adaptive reuse)」というキーワードのもとに、ポートランドの廃校活用プロジェクト「ケネディ・スクール」を紹介します。

そもそも「適応型再利用(Adaptive reuse)」とは

「適応型再利用(Adaptive reuse)」という言葉をご存知でしょうか?
廃棄物になるかもしれない建物や、使われていない土地に手を加え、元々の用途とは違う目的で使用し付加価値の高いものへと作り変えること、またはその手法をさします。ただ単に再利用するだけでなく、素材として使用したり、原型の特徴をできるだけ生かしたまま、より良いものへ作り変えるという意味で、アップサイクルの手法に似ています。

単なるリノベーションではなく、文化財などの歴史的価値のある建築物を、移築、あるいは用途変更をすることで、保護と活用(商用使用)を両立することが出来るという意味で、非常に画期的でもあります。例えば、昔は工場として使われていた建物をリノベーションし、用途変更をしたうえでホテルやコミュニティセンターとして使用している事例は、「適応型再利用(Adaptive reuse)」といえるでしょう。以下、実際に訪れることが出来るポートランドの「適応型再利用(Adaptive reuse)」の事例を紹介します。

適応型再利用のパイオニア、マックメナメンズ

ポートランドに詳しい人であれば、マックメナメンズ(McMenamins)という会社の名前を聞いたことがあるかもしれません。1974年にマックメナメンズ兄弟によって創業されたマックメナメンズ社は、オレゴン州ベースの地元民にも大人気の会社です。経営を中心はホテルやパブの運用ですが、創業当初から、使われなくなった学校、教会、シアターや住宅などの古い建物を再利用して店舗を作ってきたことで有名です。

もちろん、ただ単に古い建物をリノベーションをするだけではありません。歴史的に価値はあるのに上手く使用されていなかったり、解体の危機にある建物を選定したうえで、既存の良い部分を極力残しながら、独特で不思議な世界観を練り上げるのが非常にうまいのです。

環境的な配慮も理由のひとつ。マックメナメンズ(McMenamins)は、工事の際には、出来る限り廃材を再利用することを大切にしていることことです。ここから、使用されていない建物にポートランドならではのローカルな価値を見出し、未来につなげていくことが出来ます。

マックメナメンズ(McMenamins)の店舗はポートランドの街中にありますが、その中でも探検欲を満たしてくれるのが、ケネディスクールです。

日本の廃校活用にも参考にしたい!複合施設ケネディ・スクール

ポートランド北東部に位置するケネディスクールは、元々1915年に開校しました。その後閉校し、小学校としての機能を失ってからしばらく放置されていたのを、マックメナメンズが買い取ります。2階建ての校舎全体がリノベーションされ、かつては教室や職員室などであった場所が、現在はホテル、レストラン、バー、映画館、スイミングプールや醸造所として使われています。まさに、盛り沢山の複合施設です。

いかにも学校らしい、広々と長い廊下には、小学校として使われていた当時のサインや装飾がそのまま残っていたりします。これに加えて、マックメナメンズ独特の新しい装飾や仕掛けが付け加えられており、遊び心満載の世界観を細部まで楽しむとことができるのです。全く統一感のない奇妙奇天烈な世界観は、マックメナメンズ特有でしょう。

コミュニティに解放された中庭のプール

宿泊客でなくとも、無料で自由に立ち寄れるのがケネディスクールの魅力。
特に、かつてのボイラー室を使用したバー、体育館であった映画館はおすすめです。

ビールを飲みにふらりと立ち寄るもよし、安い映画を見るのもよし。プールは地域住民に解放されているので、誰でも自由に立ち寄ることができるんだとか。過去の匂いをかぎながら、現代風にエッジを効かせた楽しみ方を提案するマックメナメンズの事例からは、遊休不動産の活用や、コミュニティビルド、DIYなど、多くの学びがありそうです。

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