タイニーハウス・ワークショップ 前半戦ハイライト!
10月からスタートしたワークショップもおかげさまで前半の3回を無事終了しました。全国各地から12人の参加者が集まり、座学・実技の両方とも素晴らしい集中力で素晴らしいチームができてきています。ここで中間レポートをお送りします。
小さい暮らしは外とのつながりで補うの
緊張した雰囲気をほぐすように、ゆっくりとDee Williamsがタイニーハウスに暮らし始めた経緯や現在の活動をスライドを使って話し始めました。
タイニーハウス・ムーブメントの中でも先を走るミニマリストな彼女がどんなストイックな暮らしをしているのかと思えば、外部とのコミュニケーションを楽しみながら割と他力本願、のんきな考え方で(もちろんいい意味で)驚きました。
むしろ自分で生活の全てが完結してしまうほど道具に囲まれていることが、外とのつながりを失うきっかけになってしまっているのかもしれません。
「素人の大工仕事だから断熱もキチンとしてなくて、でも外気の温度の変化や雨の音、自然を暮らしのど真ん中で感じれることに喜べるようになったの。」社会だけでなく、自然とのつながりも強くなることに喜びを感じているようです。
道具も買う前につくれるか考えよう
参加者が集まる前に「ダンボールとテープが欲しい」とのこと。何やらゴソゴソつくってるな、と気づいてました。
スライドの途中でみんなを部屋の後ろの方へ誘います。何かと思えば、さっきのダンボールでできた小屋と部屋にあった木製のトラックのおもちゃ。タイニーハウスが移動するときにどんな力が影響するのか手づくりの振動シミュレータで説明してくれました。
その場でサッと道具をつくってしまうDIY力に脱帽です。Deeにとって住居も暮らすための道具という感覚なのでしょう。
夜はたき火を囲んでの夕食。みなさんの想いや、背景などをシェアする機会です。もちろんDeeにも多くの質問が。
日曜大工の手習い入門
2日目は翌日が雨の予報だったので、急遽実技に変更。ほどんどの参加者が木工の経験がなかったので、道具の使い方から説明しました。
初めて使う道具に戸惑いながらも1日かけて今後使う作業台を完成させます。たき火の時間のおかげか、みなさんお互いの顔を見ながら助け合って安全に作業ができたので一安心。これから3ヶ月で小屋をつくらなければならないのですから、チームワークが必要です。
無意識に流される暮らしとはさよなら
3日目はやはり雨模様。Deeのレクチャーもタイニーハウスの室内、設備などの詳細まで説明がありました。
タイニーハウスという限られた空間に暮らすことは、今まで無意識だった人の営みを強制的に見直すこと。水は水道を引くのか、タンクに貯めるのか、シャワーは、コンロは、トイレは…。ひねったり、スイッチを押したり、流したり、普段の暮らしの中では意識しない生活への入力と出力をどのようにするのか選択をすることになります。
その上で小さな小屋にどのように配置するのか。「1年のうち何日かはもっと快適なところに逃げたい。」と思ったりもするようですが、Deeは案外それも楽しんでいるようです。
暮らしをデザインすること、愉しむこと
「タイニーハウス」は小屋、容れ物のこと、「タイニーハウス・ムーブメント」は暮らしの哲学なのではないかと個人的には思っています。
このワークショップで重要なのは箱のつくり方だけでなく、それを使う人の暮らしのデザインが必須です。逆に、このムーブメントに共感する思想がなければ、箱をつくっても価値はないのかもしれません。ただの拷問部屋にしかならないでしょう。
小さな箱と住人をとりまく環境、そのつながりを教えてくれたのがパーマカルチャーデザイナーでSoil Design主宰の四井さんです。
四井さんは北杜市のご自宅で「暮らしの知恵の場」を実践しています。
「人が暮らすことで生態系を豊かにする方法もあるんだよ。」自然の循環を観察して恩恵を享受しつつ、その場に還していく。命の循環を意識することで生態系の一員としての役割を担う。と、そう書くとスピリチュアルな感じがしますが、四井家の暮らしは堆肥小屋を中心に暮らしのアウトプットが自然に還元される仕組み。
日本で数十年前まで脈々と受け継がれてきた伝統と適正技術の融合した姿です。
みんながそれぞれ1つの地球をつくるイメージだね
大きな仕組みに依存したことで分断されてしまった生き物とのつながり。1つづつ繋ぎ直してより有益な(お互いに)関係性をつくっていく。いつか地球のような大きな生命圏の縮図が暮らしの中に見えてくるように。「どこかに出かけなくても自分の家が一番楽しいし、美しいんだよ。」と四井さんは言います。
一番衝撃的だったのは「おしっこで代謝をして、身体が新しい組織になるのには5年くらい。ウチの子どもたちが生まれてから今までで、彼らの身体1つ分づつは我が家の土に還ったってことだね。」という言葉。
代謝される分身も下水管に流さず、その土地で循環することで小さな地球が豊かになっていく。みんなで目を丸くしました。
小屋の壁、半分できた
2回目の実技、どんどん作業のペースが上がってきます。シャーシに組み込まれる土台と壁のパネル2面を仕上げました。最後ちょっと雨に降られましたが、みなさん手を止めることなく集中して作業終了。小屋の大きさが見えてきました。
日本の森と暮らしのつながり
3回目のレクチャーは森と人をつなげる活動をしているmore Treesの事務局長、水谷さん。
国土の2/3が森林で覆われている国に暮らす私たちは、この数十年で森とのつながりを失いつつあります。安価な外材の流入で、国内の森林の4割を占める人工林は荒廃しています。タイニーハウスをつくるのに一般住宅ほど大量の木材需要はないのですが、大量に使わないから外材を使った場合と金額的な違いが少ないとも言えます。まずは森を知ることから始めます。
水谷さんから手渡されたのはすごろく。筆者にとって数十年ぶりのすごろくでした。コマを進める毎にいろいろな質問があります。
大人たちがすごろくの前で一喜一憂。こんな身近にあって知っていたつもりの森も改めて質問されると予想外の答えが。なかなか先に進みません。1番にゴールした人はmore Treesのオリジナル商品のプレゼントをいただきました。
地元の木を使いたいですね
次はスライドを見ながら答え合わせ。世界の森林、日本の森林の歴史や林業、林産物のことなど解説をしていただきました。
知っているようで知らなかった森の真実、たくさんの質問が飛び交う楽しい時間です。「日本の木は今までにないくらい多いのです。」燃料や建材としての利用が少なくなった日本の木はいま最大の蓄材量になっているとのこと。「世界の森林の問題と日本の森林のそれは別ものです。」海外では違法に伐られ、国内では放置、これを解決する方法のひとつとして森と都市をつなぐ活動をされています。
岩手県の住田町は「林業日本一」を掲げる林業の町。more Treesは東日本大震災後ここに仮設住宅を周辺地域の木材で建設。タイニーハウスも自然災害の際には機動的に必要な場所まで動かすことができるので仮設住宅としても活躍できるのではないかと期待していたところ、先進事例を見せていただき勉強になりました。また「木は建材としてだけでなく、エネルギーとしても普及し始めています。」とのこと。
とうとう屋根も
3回目の実技は小雨だったのでPICA山中湖ヴィレッジの温室をお借りして一気に組み上げました。作業スピードが速くなったので、みなさんに十分な仕事が回らなくなり、遊ばせてしまいました。
それでも小屋の屋根まで仮組みは終了。次回はとうとうシャーシに載せることになります。(実はシャーシの輸入が間に合わなくて、未だに地面でつくっています)
と、このような雰囲気でワークショップの前半が終了しました。あと3回で小屋の大まかなところは完成する予定です。
photo by Ben Matsunaga(未来シネマ)
OPEN HOUSE
このワークショップを通じてつくった(まだ終わっていませんが)タイニーハウスのお披露目をワークショップの最終日にします。
以下の日程で開催しますので、タイニーハウスやワークショップのことにご興味がある方は見学に来てください。小さなお店やライブもあります。詳しくはホームページでご確認ください。日本でのタイニーハウス・ムーブメントの第1歩(!?)にご一緒しませんか?
日 時:12月21日(日曜日)11:00 – 18:00
主 催:Tiny House Workshop
会 場:PICA 山中湖ヴィレッジ
アクセス:中央高速バス 山中湖ターミナルとなり
入 場:無 料
注1 )高速バスはお早めに予約してください。すぐに売り切れます。
注2 )車でお越しの場合は湖畔の無料駐車場に停めてください。
協 力:フジヤマ・クオリティ