"いらないもの"を"欲しいもの"へ、世界に広がるアップサイクル

【特集コラム】第1回:アップサイクルとは?モノ・コトの循環を生み出すムーブメントの広がり

田村千夏プロフィールアイコン | 2015.3.12
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upcycle top2 未来住まい方会議の読者のみなさんは「アップサイクル」という言葉をご存知ですか?
アップサイクルとは、リサイクルやリユースと同様、廃棄物を再利用して循環させる考え方のひとつですが、具体的に何が違うのでしょうか?


一般的に「リサイクル」とは、たとえばペットボトルを溶かしてフリースの原料とするなど、モノを物質レベルで変形させて再資源化することです。また、空き瓶を洗浄して再使用したり、古着のように人に譲ったり所有者を変え、モノの形を変えずにそのまま再使用するのが「リユース」です。

「アップサイクル」は、廃棄物や使わなくなったモノを、形質は変えずに素材として利用したり、元のモノの特徴を生かしてより良いものにつくり変えることで付加価値を高めようとする考え方とされ、近年、ファッションやデザイン、プロダクトなどの分野で注目されています。

いまや環境のことを考えるのは当たり前の時代になり、数年前には「エコ」や「ロハス」などの言葉が流行りました。 この連載では、そんな時代の流行文句のひとつになりつつある「アップサイクル」について、活動やプロダクトなどの最新動向から、ブームで終わらないための今後の持続可能な展開まで、掘り下げて考えていきたいと思います。

アップサイクルの先駆け?”FREITAG”

たとえば、日本でも不動の人気を誇るFREITAG(フライターグ)の商品。これもアップサイクルプロダクトと言えます。
フライターグの創業は1993年、フライターグ兄弟がトラックの幌とシートベルトを利用して耐水性のメッセンジャーバッグをつくったことに始まります。元々は廃棄物を利用する目的というよりも、耐久性のある素材として幌に着目したようですが、古くなれば廃棄されてしまう幌を再利用することで新しい価値を見い出した例です。この製品は、大きな幌から切り出すため、1点1点模様や質感が異なることも魅力のひとつとなっています。




当時はまだアップサイクルという言葉は定着しておらず、「Up cycle(アップサイクル)」という言葉が初めて使われたのは、1994年のドイツ誌に掲載された記事においてと言われています。当時のリサイクル品は、元のモノよりも価値や品質が下がっていることから「Down cycle(ダウンサイクル)」であり、その反対の概念として「Up cycle」という言葉が示されました。 それ以降、アップサイクルに注目が集まるようになり、世界のいろいろな街でムーブメントが広がってきています。

 

リサイクルとアップサイクルを併走”テラサイクル”

2001年にアメリカの現役大学生だったトム・ザッキー氏によって創業されたTerraCycle(テラサイクル)は、焼却処理ができず埋め立て処理をするしかなかったパッケージや製品を世界各国から回収し、新たな原料や商品として生まれ変わらせています。アップサイクル品としては、ポテトチップスやお菓子などのパッケージをバックパックやペンケースにしたものなどがあり、カラフルでポップな絵柄がそのまま表面に表れることで、ゴミを再利用していることがダイレクトに伝わってきます。



Via:TERRACYCLE

このように、大量生産・大量廃棄によって生み出され続けている廃棄物を、デザインやクリエイティブな思考をもってアップサイクルすることで、よりポジティブにモノの循環を見直すきっかけとなることが期待されているのです。

 

モノだけでなくヒトの活動も循環!世界のクリエイティブリユース

必ずしも商品化することだけでなく、廃材を利用したアートワークや、そのきっかけをつくる社会的活動や取り組みは「Creative Reuse(クリエイティブリユース)」とも呼ばれ、アメリカやオーストラリア、フィンランドなど各地に拠点がつくられています。 NPOなどが主体となって廃材バンクのような場所を設け、子ども向けのワークショップを開くなどさまざまな活動が展開されています。 2013年8月に発刊された『クリエイティブリユース 廃材と循環するモノ・コト・ヒト』の著者、大月ヒロ子さんは、世界各国で実践されている「クリエイティブリユース」の活動拠点を訪ね歩き、日本にも自ら「IDEA R LAB」という拠点をつくり、普及活動をされています。

本の中で紹介されている世界の活動拠点の中からいくつかを、ここで紹介させていただきます。

ボストン・チルドレンズミュージアム

最初にご紹介するのはボストンにあるミュージアム。この中に廃材ショップがあり、ゲームや教材の部品、発泡の保護材、紙箱や木材など、街から集められた廃材が豊富に取り揃えられています。ショップの中には簡単な製作コーナーもあり、手に入れた素材をその場で切ったり貼ったりできます。 子どもたちが普段与えられる工作材料とはひと味違う、廃材という魅力的な素材を手にし、想像力を働かせてつくることを楽しみながら環境やモノの循環について考えることができる場なのです。




Via:Boston Children’s Museum
Boston Children’s Museum Pop-Up Recycle

 

レミダ クリエイティブ・リサイクリング・センター

アートを中心とした幼児教育文化で知られる北イタリアのレッジョ・エミリア市につくられたのは、廃棄物をストックして市民に提供する組織。家庭から出る廃材は扱わず、工場や企業から出る廃棄物を回収しています。 この組織が、廃材を提供してくれる企業とそれを創作活動に使用する教育機関や美術大学、福祉施設などをつなぐことで、廃材を軸とした教育の循環を生み出しています。




Via:REMIDA
The Remida Project

 

リビルディング・センター

クリエイティブリユース関連のNPOも数多く存在するというポートランドにあるのは、建材や什器類、設備類、塗料などを扱う組織。建物の解体から、その際に出る不要な建具や什器などの引き取りまで行い、それらを巨大な倉庫に陳列し、低価格で販売しています。この仕組みによって、建物のおよそ9割の素材が再活用できると言うから驚きです。 倉庫に並ぶ品々を組み合わせたらどんな空間ができるか、想像するだけでワクワクしてきます。DIYやリノベーションをしようという人にはまさにお宝の山ですね。



Via:The ReBuilding Center

今回、ご紹介してきたように、アップサイクルやクリエイティブリユースのムーブメントは世界各地で広がっており、日本でも数年前からアップサイクルをコンセプトとしたさまざまな活動やプロダクトが生み出されています。 大事なのは、廃棄物は最初から廃棄物だったわけではなく、それぞれに誕生から廃棄に至るまでのストーリーがあるということ。それらのストーリーが、アップサイクルによって次なるストーリーへと繋がっていくことに意味があるのではないでしょうか。

次回は、その観点を大事にしつつ、日本で行われている活動やプロダクトについて、具体的に紹介していきたいと思います。

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Writer 田村千夏

たむらちなつ。東京在住、出版社勤務を経てフリー。

大学で建築設計を学び、建築をつくることだけでなく、建築や街ができるプロセスや、そこに関わる人々の手痕を伝える編集的な仕事に惹かれる。
もっと建築の可能性を探っていきたいという思いから「未来の住まい方会議」に参加。

近年中に地方へ移住を計画中。地方に軸足を置いた活動の広がりや、地方から発信していくことにも興味がある。

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