"いらないもの"を"欲しいもの"へ、世界に広がるアップサイクル

【特集コラム】第2回:プロダクトからお店まで、アップサイクルから生まれるモノと空間

YADOKARIライターズプロフィールアイコン | 2015.3.17
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廃棄物を再利用してより良いものに生まれ変わらせ、新しい価値と循環を生む考え方として注目されている「アップサイクル」。

連載第1回ではアップサイクルの定義と世界におけるムーブメントについて触れましたが、アップサイクルの考え方は数年前から日本にも急速に浸透し、アップサイクルをテーマにした活動やプロダクトを多く見かけるようになりました。

連載第2回となる今回は、日本で展開されている”アップサイクルなモノやコト”について紹介していきたいと思います。

アップサイクルを支えるデザインと技術

技術力を誇る日本だけあって、日本で開発されているアップサイクルプロダクトはデザインセンスもクオリティも高く、廃材を使っていると感じさせないものがたくさんあります。

NEWSED

2011年に設立された非営利活動法人NEWSED PROJECT(ニューズドプロジェクト)は、クリエイターと共同でアップサイクルによる商品開発を行っていて、その商品を取り扱うショップは全国各地に広がっています。

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2013年より「NEWSED UPCYCLE DESIGN AWARD」というコンペを開催し、廃材のシートベルトやエアバッグ、鍵、木琴端材など指定した使用可能素材を元にプロダクトに展開するアイデアを募集、入賞作品を商品化しています。
アクリル素材のピアスやバッジなど……「見たことある! アップサイクル品だったの?」と驚かれた方も多いのでは?

1月には代官山 蔦屋書店やPASS THE BATON GALLERYにて期間限定のNEWSED POP UP STOREが開かれ、「NEWSED UPCYCLE DESIGN AWARD2014」の受賞作品の販売なども行われました。

何気なく上着をかけていた学校の椅子の背もたれをハンガーとして生まれ変わらせるなど、素材のストーリーを大切にしながら生み出されたプロダクトたちは、また新しいストーリーを紡いでいきます。

 

KATAMAKU

「NEWSED UPCYCLE DESIGN AWARD」の前身に、「ゴミコン」というコンペがありました。「ゴミコン2011」の応募案のひとつである「KATAMAKU(カタマク)」が”eco japan cup”という環境ビジネスに対する助成金を得て2012年より商品化されています。

「KATAMAKU」はスタジアム用の膜素材の端材を利用したプロダクトで、膜素材の耐久性を活かしたペンケースやドキュメントケースなど、シンプルでスタイリッシュなシリーズです。

デザイナーは、建築設計を専門とするメンバーで構成された”k2m design”。
事業計画として、建築用膜材メーカーや膜材卸業者から端材を買い取ることでステークホルダーがwin-winの関係となることや、都内の町工場に抜き加工から組み立てまで委託することで、地域の雇用創出の循環を生み出すことも考えられています。

スタジアム用の素材は非常に硬いため、通常工業用ミシン等での加工が必要となりますが、「KATAMAKU」は生地を刃型でプレスして抜いた展開図を折り込むだけで組み立てることができます。試行錯誤して構築されたデザインとシステムが、コスト的にも合理的で、縫い目のない美しいシルエットを生み出しました。

今後は、革や柄のあるテント素材、広告垂幕の端材などを用いた新しいラインナップの開発や、地域的に発生する端材・廃材から地域活性化を目指したプロジェクトなどが検討されています。

 

アップサイクルの空間的な試み

アップサイクルのコンセプトが、モノに留まらず空間にまで展開されている事例もあります。

SEMI FLAG SHIP STORE

2011年に立ち上げられた「蝉 semi」は、季節やイベントごとに新調され、廃棄のサイクルが短い広告垂幕や商店街のフラッグなどを再利用して、ハンドメイドのバッグを製作しています。「蝉」というネーミングは、短命な素材のストーリーから付けられたもの。
商品はONLINEショップや都内のセレクトショップのみで販売されていましたが、2014年12月、大田区蒲田の住宅地に「蝉 semi」の専門ショップ「SEMI FLAG SHIP STORE」がオープンしました。

©蝉 semi

©蝉 semi

この場所は、木造賃貸アパートの再生を中心にさまざまな活動を展開している”NPO法人モクチン企画”が進行中の「カマタクーチプロジェクト」の1角。このプロジェクトは、蒲田に事務所を構えるモクチン企画が、リノベーション会社のブルースタジオと連携し、事務所前の空き地および、隣接するアパートの空き室を含めたエリア一体を活用して若手のクリエイターを呼び込み、街そのものを発展させていこうというものです。その第1号店として「SEMI FLAG SHIP STORE」がオープンし、今後の展開も期待されます。

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©蝉 semi

©蝉 semi

「SEMI FLAG SHIP STORE」は、壁の塗装など「蝉 semi」のメンバーがDIYで施工した部分もあり、未完成なイメージを活かしたこだわりの店舗です。
店舗には商品のほか、役目を終えた広告垂幕など各種素材が並びます。商品がアップサイクルであるだけでなく、その店舗もアップサイクル的なコンセプトでつくられていることで、訪れる人にも創造的な刺激を与えてくれます。

©蝉 semi

©蝉 semi

©蝉 semi

©蝉 semi

このお店では、バッグの表裏や持ち手の素材を実際に目で見て、手で触れて選ぶことができ、世界にひとつだけのオーダーメイドバッグを手に入れることができます。店舗の概念に捕われないラフな空間を活かして、今後さまざまなイベントやワークショップが開催される予定です。

©蝉 semi

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©蝉 semi

 

吉祥寺 焼き鳥屋てっちゃん

吉祥寺のハモニカ横町にある焼き鳥屋「てっちゃん」は、”産業廃棄物処理会社ナカダイ”が小売りしている廃材(マテリアル)をインテリアに活用することで、焼き鳥屋とは思えない独特の空間へと生まれ変わりました。内装設計は隈研吾建築都市設計事務所。さまざまな素材を発見し建築設計に活かすことで知られる隈研吾さんが、ナカダイが提供するマテリアルを建築空間に展開する可能性を示した事例と言えます。

使われたのは、自動車のスピードメーターカバーの製造過程に排出される「アクリルだんご」と呼ばれる端材。透明と不透明の中立状態をもつ「アクリルだんご」は、エントランスのガラス面やカウンター、椅子の座面に高級感とチープさを絶妙なバランスで与えています。

また、同時に改装された串焼き屋「ニワトリ」の内装には、LANケーブルの製造過程で出る糸状の端材が使用されています。色とりどりの繊維が壁面を覆い、塗りやクロスの壁では表現できない独特の雰囲気をつくり出しています。

ナカダイについては次回詳しく触れたいと思いますが、産業廃棄物をインテリアに活かすとのは実に面白い取り組みで、使い方次第で建築空間の可能性が広がることを期待させます。

 

アップサイクルが当たり前の社会へ

今回ご紹介した以外にも、たくさんのアップサイクルな取り組みが展開されています。

アップサイクル品だから買う、あるいは廃材を利用したインテリアだから良い、という考え方ではなく、素敵だと思って手に取ったモノや訪れた場所がアップサイクルのストーリーを持っていることで、さらに魅力が増し、モノと場所と人の循環を促していく。そうした関係がコンスタントに築かれること大切だと思います。
また、サスティナブルなアップサイクルプロダクトの誕生には、素材として利用できる廃材の発見から実用化までのプロセスも重要です。次回は、産業廃棄物の中間処理から、リサイクルやリユースに留まらない捨て方のデザインまで、幅広く事業展開している”株式会社ナカダイ”の取り組みに焦点をあて、アップサイクルプロダクトの素材となる、廃材を提供する側の視点に迫りたいと思います。

■アップサイクル特集第1回はこちら ⇒ 【特集コラム】第1回:アップサイクルとは?モノ・コトの循環を生み出すムーブメントの広がり

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