
小屋は屋外のものとは限らない。
家やオフィスなどの日常空間に、一段階小さな空間をつくることができる。
空きビルや倉庫などの大型空間を、適度に細分化することもできる。
空間を階層化していくことで生まれる、
「小さな居場所」を考えてみた。
家の中の小さな居場所
空間の中につくりたいのは、どんな空間だろうか?
子どもがワクワクする遊び場だったり、
自分だけの空間だったり、
ちょっと隠れられそうな、居場所だったり。
「箱以上、部屋未満」くらいの、小さな居場所が求められているようだ。
(厳密な意味で「小屋」と言えるものかは怪しいけれど)
みんなで使う外側の空間と、付かず離れず絶妙につながっている。
オフィスの中でも
そんな、境目が曖昧な別世界を、家ではなくてオフィスにつくってみたらどうだろう。
メリハリがつき、気分転換や創造力アップにつながるかもしれない。
個人で集中しつつ、仲間と接することもできる空間をつくることもできる。
デスクを少し工夫するくらいでも、同じような効果が期待できる。

Yahoo! JAPANのオープンコラボレーションスペース「LODGE」にて
小さな落ち着く居場所は、オフィスだけでなく本屋のようなところにあっても嬉しい。

蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設「柏の葉 T-SITE」にて
ちょっとした別世界は、空間におけるアクセントだ。
大きすぎる空間を最適化
そのままでは大きすぎて使いづらい空間を、小屋で最適化することもできる。
たとえば、空きビルの大きな部屋にコンテナ型のキャビンを並べれば、カプセルホテルに早変わり。
大型倉庫が、コンテナの活用で巨大オフィスに様変わりした事例もある。
「ひとつの大きなスペース」を、「ちょうどよいサイズのスペース群」に変えることで、活用の幅は大きく広がる。
「集団」と絶妙な加減でつながる「個人」のスペース
「社会」の中には、家族や会社といった「集団」があり、「個人」が属している。
今回取り上げた事例は(一部を除くと)、集団と絶妙につながりながら、個人でもいられる空間をつくっていると言えるかもしれない。
空間の中にもう一段階、境目がちょっと曖昧な居場所をつくってみるのは面白そうだ。
(了)
<文:谷明洋、イラスト:千代田彩華>
【都市科学メモ】 |
小屋の魅力
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空間の中に、居場所や別世界をつくることができる |
生きる特性
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小ささ、境界の曖昧さ |
結果(得られるもの)
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外側と絶妙につながった居場所、空間の階層化、廃墟や大型スペースの再活用 |
手段、方法、プロセスなど
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自由度を高く考える
屋内はすでに、安全性や居住性が確保された空間だ。たとえば、風雨をしのぐ強度や遮蔽性は考えなくて良い。どんな居場所や世界をつくりたいのか、自由に考えることができる。 |
外側との“つながり度合い”を考える
特に意識したいのは、外側との“つながり度合い”。閉鎖性が高く独立した空間をつくることも、オープンで周りと積極的につながっていく個人スペースをつくることもできる。開口部は完全に開け放つのか、開け閉めしやすいカーテンにするのか、それとも原則的に閉まっているドアにするのか、など、選択肢は広い。
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とりあえず市販品を買ってみる
比較的安価で、気軽に手を出すことができるテントでも十分に機能を果たすことができる。室内用テントのラインナップも豊富だ(調べてみて驚いた)。ダンボールハウスも選択肢に入れることができる。「室内用テント」「ダンボールハウス」で検索してみよう。画像検索もオススメだ。
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専門家に相談する
大きな空間の再活用は、ビルの空き部屋や倉庫などの施設を見つけるところから始まる。細分化して再活用したい施設がある場合、地域づくりの活動として協議会をつくったり、専門家に相談するなどの方法も考えられる。YADOKARIも、空き部屋を再活用してシェアドミトリーにする「点と線」をパッケージサービスとして提供しています。
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【Theory and Feeling(研究後記)】 |
「室内でテントを張ると、寒い冬でも暖かい」。むかし読んだ椎名誠の本に、そんなことが書いてあったことを思い出しました。
テントが発揮している機能は、空間の階層化とか居場所云々とかではなくて、単純な保温力なんでしょうけれど、意外と快適なんじゃないかと。こんど、試してみようかな。(たに) |
「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画です。下記の4人で調査、研究、連載いたします。