トレーラーの形をしたその建物は、一見するとどこか無機質で静かな存在だ。けれど一度設置すれば、その姿は大きく変わる。両側のウィングがパタリと展開し、円形のデッキが広がると、その上にふわりとエアードームが膨らみ、空間は一気に拡張する。これは、ルクセンブルク発のモバイルスリーピングハット「E22SSPIU!」。動かせる、変形する、そして空気で“ふくらむ”-そんな驚きと発見に満ちた、新しい暮らしのかたちだ。
トレーラーから円形デッキへ、そしてドームへ
「E22SSPIU!」は、建築ユニット“2001”によって設計されたモバイル居住ユニットで、ルクセンブルク南西部のエシュ=シュル=アルゼットを拠点に開発された。
移動時はステンレス製のトレーラーとしてコンパクトにまとまっているが、設置後は大変身。両サイドのウィングが展開して直径9メートルの円形プラットフォームを形成し、その上にダブルシェル構造のエアードームがふくらむ構造だ。床材にはコルクが用いられており、足触りのやさしさと環境負荷の低さが両立されている。
ドーム内は、最大6人が就寝できる快適な空間。気候変化にも柔軟に対応できる設計で、都市部や自然環境を問わず、さまざまなロケーションにフィットする仕様となっている。
住まいが問いかける、建築と資源のこれから
このプロジェクトの背景には、建築が自然資源(特に土、水、エネルギー)にどれほど依存しているかという問いがある。
E22SSPIU!は、極限まで資源の使用を減らしながらも、豊かな居住体験を可能にする実験的な住まいだ。移動可能で、必要なときに展開し、不要になれば元の形に戻せる。そんな柔軟さが、未来の建築の在り方を示している。
都市の文化や環境を移動しながら体験することができるこの“動く住まい”は、まるで都市を旅する宇宙船のようだ。日常を少しだけ拡張してくれる、未来型の暮らしの選択肢が、ここにある。
via:
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