ニュージーランド西海岸、深い森の中にそっと佇む「Biv(ビヴ)」は心と体をととのえるための特別な場所。かつてこの地で金鉱を求めて暮らしていた人々の小屋を、現代の感性で再解釈し、居心地よく、そして美しく仕上げられたこのキャビンは、Fabricによる設計で生まれた。
目指したのは、華美すぎず、過不足ない豊かさ。自然と調和しながら、静かに五感をひらく宿泊体験だ。
金鉱小屋をヒントに、最小限で最大限の心地よさを
建物のかたちは、金鉱時代の外付け煙突から着想を得たユニークなシルエット。屋内の天窓は煙突の上部を思わせ、空をまっすぐに見上げる開放感をもたらす。
大きな窓やガラス張りの壁が森の景色を余すことなく取り込み、自然とのつながりを常に感じさせてくれる。内部はクロスラミネーテッドティンバー(CLT)による木の空間。シンプルで無駄がなく、それでいて手ざわりも温もりもある、特別な「ちょうどよさ」に満ちている。
地面に接する面積は最小限に抑えられ、頑丈なコンクリート床が数本の杭で支えられている。造成や外構もあえて行わず、森に溶け込むようなたたずまいに。環境への負荷を減らしながらも、長く快適に使える構造を選び抜いた。
火と影と星空と。静寂を味わうためのしかけ
Bivの内部には、夜を落ち着いて過ごすためのしかけがいくつも用意されている。控えめな照明が灯りの輪郭をやわらかく浮かび上がらせ、中心には揺らめく薪ストーブ。ペンダントライトの光が木漏れ日のように壁に影を映し出し、日中の森の情景が夜にもそっと残る。中二階からは、星空や雨の降る様子をゆったりと眺めることができる。
森の色や影がそのまま室内に映り込み、まるで木々がキャビンの中に入り込んできたかのような錯覚すら覚える。すべてのディテールは、外と内の境界をあいまいにし、この土地の自然をより深く味わうためにある。
コンパクトでありながら、高い快適性と環境配慮を両立させた「Biv」は、まさに西海岸という場所に根ざした体験そのものだ。ここで過ごすひとときが、きっと心の奥に静かに残っていく。
via:
archdaily.com
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