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タイニーハウス、最前線

【海外事例】森の中の即興建築 森に開いた小さなお家「 Picalo Cabin」

2025.10.14

ニュージーランド・コロマンデル半島にある「Driving Creek Railway and Pottery(DCR)」の敷地に、小さな小屋が建っている。その名は「Picalo Cabin」。建築家Gerard Dombroskiが、現地にある廃材や使われなくなった構造物を集め、1か月という短い期間で仕上げたタイニーハウスだ。

きっかけは、彼がDCRで薪窯の修復作業に参加したことだった。滞在中に「また戻ってきて、何かをつくってみないか」と声をかけられる。ただし条件は厳しい。新しい資材を買うことはできず、敷地内で見つけたものだけを使う。そして制作期間は1か月。建築家としての直感と柔軟さが試される挑戦が始まった。

カヌカの森に建つ、3週間の建築実験

建設地に選んだのは、カヌカの木々が覆う丘の斜面。そこに放置されていた古いスチールフレームを見つけ、かつてジップラインのプラットフォームとして使われていたそれを基礎に据える。ここから「森の天井を見上げる部屋」というコンセプトが生まれる。天窓からは揺れる枝葉と空が広がり、横に視線を向ければ木々のカーテンが包み込む。森の動きをそのまま感じられる空間になった。

小屋の造形には、彼の趣味であるスケートパークの要素も反映されている。曲線的な屋根や流れるようなフォルムは、スケートボウルを思わせる。資材の多くは廃材の再利用であり、地元住民やアーティストから譲り受けたものも少なくない。ひとつひとつの素材に記憶が宿り、それらを編み直して小屋は形になった。

限られた時間と森が導いた小屋

工事は2月初旬に始まり、わずか3週間余りで完成した。朝はカフェでコーヒーを飲み、日暮れまで作業を続ける日々。地域の人々や他の滞在アーティストとの交流も、この小屋に温度を与えた。短期間の実験的建築は、リスクを恐れずに発想をそのまま形にする機会であり、彼にとってかけがえのない時間だった。Picalo Cabinは、その挑戦の証として今も森に佇んでいる。

via: archdaily.com

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