
町田山崎団地を舞台に、団地に住まう人とまちの人とが入りまじり、団地ならではの豊かな暮らしや心地いい日常の景色を共に創り・発信していく取り組み、「まちやまプロジェクト」。
そのプロジェクトの一環として、団地や町田にまつわる取り組みをしている方のインタビューを発信しています。今回は、2025年にスタートした「未来団地会議」という、山崎団地のにぎわいを育てるコミュニティで活動中の3名にお話を伺いました。
「未来団地会議」とは?
UR都市機構とYADOKARIが手を取り合い、2024年の夏からスタートした「まちやまプロジェクト」。緑があふれ、遊歩道や公園が点在する、のびやかな暮らしの広がる町田山崎団地。この場所を舞台に、団地に暮らす人とまちの人、大人と子どもが一緒になって心地よい日常をつくり出していく取り組みです。
そして、このプロジェクトのビジョンを可視化し、実践していくためのイベントとして「まちやままるごとスコーレ」を開催してきました。忙しない日々の中で少し立ち止まり、人生の”学び”や”余暇”をテーマに、大人も子どもも入りまじりながら、団地でのこれからの過ごし方を実験していく場です。
団地に住んでいる方もそうでない方も、山崎団地を舞台に好きなことに挑戦できる機会としても、地域に開かれています。2024年の夏から回数を重ね、次回は6回目を迎えます。(2026年3月8日予定)
今後も多くの方の”やってみたい”を実現し、まちのにぎわいを広げるために生まれたのが、今回取り上げる「未来団地会議」というコミュニティです。出店に向けたアイデアを共有しながら育てていく場として、2025年の夏からスタートしました。
人の数だけ物語あり、それぞれの関心を持ち寄りトライする
ここからは、未来団地会議の参加者である八塚さん・田村さん・首藤さんに、まちやままるごとスコーレでの出店内容や企画の経緯、山崎団地の好きなところをお聞きしていきます。
同じ場所に集い活動をされているみなさんですが、これまでのバックグラウンドや関心領域は様々。八塚さんは暮らしに工夫をプラスできるDIY、田村さんはヨガをはじめ持ち帰れるセルフケア、首藤さんは世代や性別を越えて楽しめるアートのワークショップと、三者三様の分野で活動中です。

ーまずはみなさんの普段のご活動と、未来団地会議に参加されたきっかけを教えてください!
八塚さん:
普段は参加型のオフィス作りをしていて、社員さんと一緒に企画を考えながら空間づくりをするファシリテーターなどを担当しています。それ以外のお休みの日に、商店街で屋台作りをしたり、誰かの「こういうの作りたいんだよね」というアイデアをワークショップ化してみんなでDIYしたり、そういう”作る遊び”をしています。
元々は町田の賃貸マンションに住んでいるだけで、地域のつながりは全然ありませんでした。近所の知り合いは大家さんくらいだったんですけど、町田のシバヒロという場所で「一箱古本市(古本のフリーマーケット)」が開催されることを知って。本もあるし面白そうだから出店してみようと思って参加したのが、地域と関わるきっかけでした。
最初は古本だったのが、出店時に使っていた手作りの本棚に興味を持ってくれる人がいて、そこからちゃぶ台やベンチ作りなど一緒にものを作るようになったんです。そしたら、近所の山崎団地でも新しい取り組みが始まるということで参加しました。
田村さん:
私はずっと町田で暮らしていて、山崎団地は子ども時代の遊び場でした。
現在は、デイサービスと呼ばれる高齢者の通所介護を行う施設で勤務しています。
暮らしの中でサポートが必要な方と関わり、その方らしいペースを大切にしながら、日々現場で過ごしています。
また、長年母の介護もしてきて、それが一旦落ち着いた時に「私ってなんだろう、何ができるかな」って思ったんです。自分の専門性を考えた時に、身近な人の介護をしてきた当事者であること、そして仕事として介護に関わってきたこと。
その二つの目線を持っているからこそ、何かできるんじゃないかと感じています。
もともと、KAIGO LEADERS の「SPACE」という、介護に関心のある人たちが集まるオンラインコミュニティに参加していました。学び合い、助け合い、挑戦できる場所があり、つらい時には相談し、支え合える関係があったことで、家族介護を続ける中でも、自分自身が孤立せずに過せたのだと思います。そんな中で、セルフケアの大切さを強く感じるようになり、家族介護者の方に向けたお話の場に、参加する機会をいただきました。みなさんそれぞれに悩みを抱えていて、その気持ちもとてもよく分かるので、その時間が少しでも心が軽くなり、感じたことや知識を持ち帰ってもらえる場になればと思い仲間と参加しました。
自分の生活の土台が整って、やりたいことも見えてきたところで、ちょうど山崎団地の「まちやままるごとスコーレ」のお知らせが目に止まったので参加してみようと思いました。

首藤さん:
私は大学進学で上京して、キャンパスが近いという理由で山崎団地に暮らし始めました。高校生の時から美術作品を作っていて、展覧会などをつくる中でイベントの企画・運営する側にも興味が出ていたので、大学では教職と学芸員の授業を取っています。
教育の提示と受け取りっていうコミュニケーションが、すごく心地いいなって感じることが多かったんです。学芸員は社会教育の側面がありますし、学校教育に限らず学びを得られる場として、イベントや展覧会を企画・運営する過程に魅力を感じていました。
大学1年生の頃、綾野さん(町田山崎団地名店街 会長)のお店「もつ鍋処 さくら」でバイトしていて、ある時私が「イベントとかやりたいんですよ」ってポロっとこぼしたんです。そしたら綾野さんが「今週の土曜日に”冒険遊び場”があるから遊びにおいで」と誘ってくれて。冒険遊び場は毎月第四土曜日に開かれている、子どもや大人が集まって自由に遊ぶ会で、他にも防災イベントの「DANCHI CARAVAN」など、団地の様々な催しに行かせていただきました。そこからURやYADOKARIの方とお話するようになって、「まちやままるごとスコーレなら私もイベント企画ができる」と思って参加することになったんです。
ーお三方のお話だけでも、まちやまを舞台に色々な人が集まっているのだなと感じました。まちやままるごとスコーレでの出店の内容と、企画の背景を教えていただきたいです!
八塚さん:
やっぱり「みんなで何かを作る」ことをやりたいと思って。団地の中でやるイベントなので、せっかくなら暮らしの工夫にもつながって、一緒に作る体験ができるようなものがいいなと考えていました。なるべくハードルが上がらないように手軽にできて、通りすがりの人でも参加できるものとして、小さなちゃぶ台作りを思いついて。普段端材を活用することが多いのと、自分が作れるものや持っている工具が家具寄りなのでぴったりでしたね。

田村さん:
介護のオンラインコミュニティ内で行われている「自由研究」の中で、家族介護者向けのコミュニティについて学び合う機会がありました。そこで、シェアハウスのリビングみたいな感覚でいつでも相談ができて、ただそこに居るだけでもいいし離れてもいい、自由に出入りして尊重し合えるものがあったら気が楽だよねっていうアイデアが出て。
最初はオンラインで考えていたんですけど、やっぱりリアルでつながる場所も必要なんじゃないかって感じていて。未来団地会議で自分がやりたいこと、できることを話す時に「町のリビング」があったらいいなと思ったんです。
これまでセルフケアとしてヨガを取り入れてきて、人に伝えるための勉強もしていたので、まずは持ち帰れるセルフケアをテーマに、心地いい場作りから挑戦しました。
首藤さん:
イベントで出店するにあたって、まず大学生のグループが欲しいと思って、同じ専修の子たちとサークルを作りました。それぞれのやりたいことをやろうというコンセプトで、名前は「ぼくらのサークル」です。
出店内容をどうしようか考える時に、同じ大学の先輩が自治会事務所で子ども向けのお絵描き教室を開いていることを知ったんです。冒険遊び場などで子どもたちが団地に集まる様子を見ていたし、私も学芸員や教職で学んだことを活かせるのではと、そこからヒントを得ました。サークルのメンバーも同じアート系の専修なので、一緒に企画ができることとして、まずは子ども向けのアートワークショップを考えていきました。
一歩踏み出すと見えてくる、ワクワクする未来像
ー実際に出店してみていかがでしたか?また、今後やってみたいことについてもお聞きしたいです。
八塚さん:
前回の出店で保育園の男の子が作っているところに、通りがかりのおじいさんがつきっきりでコーチを始めるっていう場面があって。これまでは体験を提供する人と、受け取る人がその場にいる感じだったけど、第三の関わりが生まれたのは面白いと思って。
これだけ広い団地だから、色々な仕事をしてきた人がいるだろうし、実はちょっと知識があって教えられるとか、そういう人の出番にもなったら、それはそれで楽しいと思います。この地域にどんな人がいるのか、もっと掘りたいですよね。

初回から継続して参加をしていますが、出店をしているところに「作ったちゃぶ台こうやって使ってるよ」って報告をしてくれる人もいて。一回でさよならじゃない、関わりがつながっていくのは、団地の中でやっている面白さだと感じました。普段の買い物のルートの横でやっているので、おばあちゃんたちが色々話した挙句、作らないで帰るとか(笑)タクシーの運転手をやっている方が仕事の大変さを語るとか、そういうのもいい場面だなって思います。

今後やってみたいことは、団地の中にみんなでシェアできる作業スペースが欲しいなと考えています。体験でものづくりに興味を持った人や、近所で何か作りたい人が気軽に集まって使える場所。”みんなの図工室”を作りたいです!
田村さん:
出店してみて、人とのつながりが戻ってくる感覚がありました。やってみるから良かったらどう?と声をかけたら、何十年ぶりに会えた人とかもいて。きっかけがあるってすごく大事だし、思ったことを行動に移せる環境があるのは本当に大きなことだなっていうのを身をもって体験しました。
前回は広場でのヨガとセルフケアにまつわる本の展示をしましたが、社会とのつながりの側面も大きな視点として重要だと考えていて。こういった集まれるきっかけが緩やかに続いていくことで、孤独を防いでいけるかもしれないと思いました。

だから、これからも、セルフケアと、社会とのつながりをつくるケアの両方を大切にしていきたいと思っています。一度立ち寄って、またそれぞれの旅に戻っていくような、人生のトランジットスペースのような感じ。私がやっているヨガは椅子に座ってできるなど、性別や年齢も関係なく、どなたでも参加いただけるものです。みんなで呼吸をして、余白を作るきっかけができて、自分らしく好きなことに向かえる土台となるような場づくりを続けていきたいと思っています。

首藤さん:
子ども向けのワークショップをしようと方向性が決まった後に、子どもの発達段階に合わせた内容がいいかなと思いました。教職や学芸員の授業で学んだことや、メンバーの意見も合わせていって、まずは誰でも挑戦できるフィンガーペインティングをやってみることにしました。
「絵を描こう」と言われるより参加しやすいし、指で直接絵の具や紙に触れることで、より色々な感覚に意識が向きやすくなるそうです。当日は大きな模造紙にペイントするコーナーが大人気で、みんな大胆かつのびのびと好きな色をのせてくれました。
ただ、ワークショップで何をするのかは大袈裟に言うと何でも良くて、これをやることで人が集まれて、おしゃべりできるのがいいなと思いました。

前回は毛糸を使った簡単な編み物ワークショップをしましたが、その時はおばあちゃんたちも懐かしいと言って参加してくれたんです。少しずつ交われる世代が増えてきて、自分のできる範囲が広がっている感覚があります。次はおじいちゃんたちも参加してくれるもの、誰でも楽しめるようなものを企画したいです。

「あったらいいな」を受けとめてくれる場所
ー最後に、山崎団地やまちやままるごとスコーレの好きなところを教えてください!

八塚さん:
大学で建築の勉強をしていたので、団地といえば”建設当時の最先端”の住まいと認識していました。部屋の間取りから商店街などの機能まで、白紙から理想の暮らしを描いて計画的に作られたものですから。でも実際にはそう計画通りに上手くはいかないよねって斜めに捉えていた時期もありました。学生の頃は粗を探しちゃうというか。
でも、社会に出て色々な経験を重ねていく内に、作った人の意図を感じられるようになって、スコーレで久しぶりに団地に来た時に、一周回って「団地、超いいじゃん!』って思ったんです。無理してたくさん住棟を建てるのではなく、地形に合わせながら建物同士の距離をしっかり取っているから、日当たりは抜群。広場もたくさんあるし。70年代に描いていたキラキラな暮らしの要素が、今でもちゃんと生きているなって。
これはマンションに住んでいるだけでは分からなかったことで、スコーレのように団地に住むだけでなく、関われる余地、やってみる余白があるところも団地の面白さだと感じています。
田村さん:
人生の場面の切り抜きというか、そういう感覚が続いているんですよね。隣の木曽団地のお肉屋さんは、私がちっちゃい頃からあそこで焼き鳥を焼いていて、大人になってから夫と一緒に顔を出してみたりして。そういえば子どもの頃、駄菓子屋さんのぐりーんハウスでミサンガ作ったなとか。
それぞれの思い出がこの場所に積み重なっていると思います。伝統って、こうしてつながっていくのかなって。
だから、私みたいに距離や気持ちが離れていた人も、まちやままるごとスコーレが戻ってくるきっかけになるんじゃないかな。「いい場所にしよう」「こんなことやってみよう」という思いを受け止めてくれる環境があるから、私も戻ってこれたので。単純にこの団地や、集まる人の作る空気が好きですね。
首藤さん:
一人暮らしだけど寂しくないのは団地のおかげだと思っています。夕方に歩いていれば、誰かのお家の夜ご飯の匂いがするし、実家みたいな安心感があります。私が育ってきた環境からしても、都会より田舎の方が好きなんです。山崎団地は田舎まではいかずとも自然が豊かなので、散歩やランニングをしていると季節特有の匂いを感じられるところも好きです。
まちやままるごとスコーレで特に印象に残っているのが、6月のナイトシネマです。初夏の団地って、葉っぱも青空もすごく鮮やかなんですよね。その中で子どもたちの笑い声が聞こえて、夕焼けの中みんなで映画を見ている風景が心に残ってます。出店の準備で忙しくなる瞬間もありますが、ゆったりと過ごす団地での時間の中で、一生これをやっていたいなって思えるんです。

あと、スコーレっていう言葉も元々知っていて、いいなと思っていました。
八塚さん:
介護などのケアから、ものづくりやアートも全部暮らしにつなげていけるから、色々な人が絡む余地がありますよね。
田村さん:
色々な視点や価値観を持っている人たちが、この場所に集まって生きてるんだなって、今でも感じるし。なんか、団地ってすごくない?
一同:笑
まとめ
同じ場所で挑戦する同士である皆さん。終始、和気藹々とした雰囲気でお話が進んでいきました。お互いの「やってみたい」が出てくると、「それいいね!」とワクワクが広がっていく様子が印象的でした。一人ひとりの新たな一歩が、近くの人へ少しずつ伝播することで、町のにぎわいが広がっていくのだと実感できるような時間でした。
団地を舞台に、「やってみたい」を実験してみたい方、日常のにぎわいを一緒に作ってくれる方、いつでも町田山崎団地にてお待ちしてます!
