実践型まちづくりワークショップ「DELight(ディライト)プロジェクト-ちょっといいミライをこのまちで-」集中ワークDay1レポート!!
2023年3月2日から20日の19日間と4月22日にかけて、東急田園都市線たまプラーザ駅とあざみ野駅の周辺を舞台に開催される実践型まちづくりワークショップ「DELight(ディライト)プロジェクト-ちょっといいミライをこのまちで-(運営会社:東急株式会社、協力:YADOKARI株式会社)」。
このワークショップでは、本格的なまちづくりや地域活動を体験できます。第1回目となる今回は、大学生・大学院生が募集対象。たまプラーザ駅周辺とあざみ野駅周辺を対象として、19日間のアイデア計画フェーズと、4月22日(土)のアイデア実行フェーズの2部構成で取り組みます。
テーマは「住民・来訪者、だれもが楽しくなる、生活者目線の場づくりを考えよう」。ここから、「まちにあったらいいモノ・コト」を考えていきます。
3月2日、3日は参加者が集まり、2つのグループに分かれてイベントの内容についてアイディアを膨らませます。
本記事では初日となる3月2日のワークショップの模様をレポートします。
■ワークショップスタート!
会場となるのはたまプラーザ駅から歩いて5分ほどのところにある「WISE Living Lab」。
「次世代郊外まちづくり」の情報発信や活動拠点として整備された施設で、まさに今回のワークショップにはぴったりな場所です。
スタートは9時。時間前からすでに参加者のみなさんが勢ぞろい。今回、グループは2組。グループA(會田 亮太さん/江田 俊介さん/吉岡 遼平さん/山本 彩奈さん/松隈 大地さん/根岸 薫海さん/江原 凜さん)、グループB(関口 航太朗さん/佐古 瑛大朗さん/渡邉 さくらさん/山﨑 愛さん/宮澤 哲平さん/澤野 莉香子さん/金澤 心平さん)に分かれてグループごとに着席し、軽く自己紹介をし合うなど、すでに和やかな様子でお話をされています。
まずは、今回のワークショップについての説明が改めて行われたあと、東急総合研究所の森家さんからたまプラーザ、あざみ野エリアについての解説が行われました。
参加者の皆さんは事前にフィールドワークを行い、エリアに関する知識を深めつつありますが、改めてその情報に耳を傾けます。
全国的なところではありますが、たまプラーザ、あざみ野エリアでも高齢化および若年層の減少が進んでいます。エリア内では1人暮らしが3割程度で、ファミリー層も多く住んでいますが、後期高齢者が増えています。エリアの再生にはやはり次世代のコミュニティの存在が大事になってきているのです。
そこで東急は、横浜市とともに価値の再創造のため、「田園都市で暮らす、働く、楽しむ」を目指しています。
コロナ禍前までは通勤が主でしたが、現在は在宅で仕事をする方も増えており、改めてどのように暮らすかが重要です。そういった点を踏まえてのまちづくりも、これからは注目ポイントになっていくのかもしれません。
ここからグループワークへ……の前に、アイスブレイクとして全員でラジオ体操を行うことに!
なぜか、慣れ親しんでいるラジオ体操第一ではなく第二でしたが、みなさん身体を動かして自然と笑顔がこぼれます。
■まずは互いのこと、まちを知るところから
グループワークは事前課題の発表からスタート。それぞれグループにチューターが加わり、名前と回ったエリア、そしてエリアの魅力や課題について、エリアに宛てたお手紙、つまりまちへの「ラブレター」と「ブレークアップレター(別れの手紙)」をグループメンバーの前で朗読していきます。
「ラブレターをみんなの前で読むのはちょっと恥ずかしい……」という声もありつつ、自己紹介とともに行っていきます。
照れながら読む手紙も、読み終えるとメンバーから拍手が起こっていました。
また、感想や質問も飛び、手紙の内容とともに地域への理解も深めていくだけではなく、メンバーそれぞれの人となりを垣間見ることができます。最初のグループワークを経て、すっかり打ち解けた様子です。
お互いのキャラクターがわかったところで、リーダー、サブリーダーなど、グループ内の役割分担を行なうほか、グループ名も決めていきます。ニックネームなどを決めてより距離を縮めるグループも。
役割分担が決まったグループからランチタイムへ。外でランチをいただくことも、まちを知るには重要になってきます。
■実例や実際のプレーヤーたちの声を聞く
午後の部は、地域のプレーヤーからお話を聞くところからスタート。実際に、まちで活躍しているプレーヤーたちがどのようなアウトプットをしているかは、今回のアウトプットのヒントにもなっていきます。
まずは、東急さんから、東急沿線の町でどのような地域活性化を行っているか、を池上とたまプラーザを具体例に挙げて解説していただきました。
東急株式会社 荻野さん
東急株式会社 中村さん
池上では「池上エリアリノベーションプロジェクト」を2019年3月から2022年3月まで行っていました。
現在、各地で増えている空き家。大田区は空き家がとても多く、どのように利用、活性化していくかをテーマにしたプロジェクトでした。プロジェクトが終わったあとにも、住民たちが自発的に活動する傾向が見られていると言います。
たまプラーザでも「次世代郊外まちづくり基本構想」が立ち上げられ、住んでいる人が、街をどうしていきたいのかボールを投げかけ、官・学・民・企業の4者で取り組んでいく形が作られつつあります。
株式会社タウンニュース社 佐藤さん
タウンニュースの佐藤さんからは、記者としての地域との関わり方についてお話が。
足でニュースを探し、取材し、原稿を作るだけでなく、地域のお店や会社の利益となるようにPR案などを提案することもあります。
そんな中で意識しているのは「元気」「誇り」「連帯」「自治」「正義」の5つ。特に現代社会において、「連帯」は震災のときなどでも重要になってきます。タウンニュースはそういった要の存在を担っている一部と言っても過言ではないかもしれません。
さらに日々、街を巡っている佐藤さんからは、たまプラーザは山や坂が多いといったことだったり、青葉区は男性平均寿命全国1位であること、横浜市営地下鉄が2030年をめどに新百合ヶ丘まで延びることでの変化といったお話が展開されました。
スパイスアップ編集部 柏木さん
続いてはスパイスアップ編集部の柏木さん。
自分たちのスキルを活かして街に貢献したいという思いから集まり、キッチンカー萬駄屋(よろずだや)をコミュニケーションツールに「動くメディア」として活動されています。
まちにはさまざまなコミュニティがありますが、多様化していくことでコミュニティごとの分断も。しかし、まちへの帰属意識をそれぞれが高めていくことでつながりができていきます。
スパイスアップ編集部 藤好さん
ユニークな活動に、質問も多く飛び交います。
「コロナ禍にどのようにして話を聞く工夫をしていたのか」「どのようにリピーターを呼んでいるのか」「キッチンカーに集まった初対面同士で仲良くなることはあのか」などより実地に近い視点での質問もあり、みなさん興味津々です。中には、「明日からでも萬駄屋さんで働きたい!」なんてメンバーもいました。
最後はYADOKARIの伊藤さん。YADOKARIはまちづくりイベントや、オウンドメディア支援など、暮らしに関わる企画を幅広く手がけています。
YADOKARI株式会社 伊藤さん
ここでは、東京都町田市にある「シバヒロ」でのイベントや、横浜市日ノ出町で開催したアート体験型マルシェなど、地域を舞台としたイベントの役割について紹介していきます。
日ノ出町では、食とアートとローカルという別々に発信されている魅力を連携した例が紹介されました。
そのほか、コロナ禍にオフィスの中にある公園を舞台としたイベントを紹介。ここでは公園を「働く場」として設定。改めて新しい働き方のあり方を問いかけていたのだそう。
まちの中での実践的なイベントは今回のワークショップの目指すところ。「どういうプロセスでイベントを思いつくのか」といった質問もとんでいました。
■いよいよブレストタイム!
ここまでたっぷりとインプットをしたところで、今度はアウトプットタイムです。グループごとに、「住民・来訪者、だれもが楽しめる生活者目線の場づくり」をテーマとしてアイディアを出していきます。
個人で考え、さらにグループでもアイディアを練ります。
その後の段階で取り入れられたのは「シャレットワークショップ」。
グループ内で2名、もしくは3名のペアに別れ、それぞれ短い時間でアイディアを出し合っていきます。そのあと、片方のメンバーが次のペアに移動。前のペアでの最良の案をここで提案し、優れた案に新しいアイディアも加え、ブラッシュアップしていきます。
ここまでのインプットも利用し、アイディアの出し方などにも反映されている様子が漏れ聞こえてきます。
熱心に話し合いながら、アイディアを3つまでまとめます。
■1日目の成果は?
外も日が傾き始めたころ、各グループの全体発表へ。この段階でどのような計画を考えているのか、プレゼンしていきます。
まず発表を行ったのはチームB。
チームBが提案するのは、エリアの多い坂を舞台とした展開です。
現段階では坂自体を楽しめる休憩スポットを作ったり、坂を上るたびに物語が完結するようなイベントを考えたいというアイディアです。
ネガティブになりがちな「坂が多い」を逆手に取ったものになります。また、無名の坂に名前をつける催しを行い、愛着を持ってもらおうという案も。
「坂ごとに推しができるといいと思う」という現代ならではのワードも飛び出しました。
ゲストからも「日常で行きたくないと思うところに行きたくなるようなイベントにしてほしい」というメッセージが。
続いて、チームA。
まず飛び出したのが「無個性」というワード。これにはゲストのみなさんもギョッとした様子を見せます。
「住民のみなさんがなかなか表現をしたがらないまちなのでは?」という点に着目したチームA。そこで提案するのが「まちと人の個性を気づき、育んでいく場」。
地域の色を作るように「たまプラの色」クレヨンで絵を描く、といった案のほか、匿名なら自分をさらけ出すことができるのではないか? というところからの「暗闇バー」の提案にはゲストからも「おもしろいと思う!」というポジティブな声がかけられました。さらに、たまプラ住民個性ボロ市というアイディアも。
チームAが着目しているのは、まちの住民同士のつながり。まちで暮らす人たちの間に会話が生まれる仕組みを作りたいという強い想いが感じられます。
ゲストからは「たまプラーザの住民は個性を出していいよ、と言ってどれぐらい出してくれるか……というぐらい、シャイな人たちが多い」。だからこそ、「個性を出しやすい環境を作るのがポイント」と暗闇バーを推す声がありました。
まずはたたき台を作り出すことができた両チーム。ここからどのように具体化させていくのかが楽しみです!