スペインのモジュラー型ボックスホテル「DROP box」
スペインで、マドリードに次いで2番目に人口が多い都市バルセロナ。世界的スターであるリオネル・メッシを擁する、サッカーチームのFCバルセロナが有名だが、なんといっても、アントニオ・ガウディがデザインし、未だに建設中の世界遺産サグラダ・ファミリアが、建築家のみならず、毎年多くの外国人が訪れる歴史的観光地として有名だ。今回紹介するスモールハウスは、そんな歴史的建造物が多いバルセロナで、有機的な建築思想とは対極にある、モジュール型のリゾートホテルだ。
モジュール型のボックスホテルをデザイン・制作したのは、バルセロナに本拠があるクリエイティブスタジオ「in-tenta design ( インテンタ・デザイン ) 」で、2012年にmanel duró ( マネル・ドゥロ ) とmarta gordillo ( マルタ・ゴルディヨ) によって設立され、主にスモールハウスの制作を中心におこなっている。
ちなみに「in-tenta」はスペイン語の動詞「intentar ( インテンタール ) 」の規則変化の活用で、英語でいうなら「Try ( トライ )」の意味。そんな野心に溢れる挑戦的なスタジオが、今回新たに挑戦し、制作したのが、搬送が非常に便利なボックス型のスモールハウス「DROP box ( ドロップボックス ) 」。あらかじめ組み立てられたものを希望の場所に搬送してきて、その土地に合わせて素早くセッティングが出来る。オンラインストレージ&シェアリングサービスさながらの、利便性とモビリティがある。
トレーラーや船を使ってどこにでも運ぶことが出来るので、こんな人里離れた一面銀世界の大自然の中に、モジュラーを置くことも可能だ。
従来型のホテルとは一味違ったユニークな体験ができ、しかも、ホテルのように快適に過ごすことができる。
普通の建築のような基礎部分はなく、その名の通り、その土地に「Drop」するだけ。設置が簡単で、自然や周りへの影響も極力少なく抑えることができるので、時にはこのように、波打ち際ぎりぎりの岩の上に設置することも可能なのだ。
再生可能な素材を使用して、幅はたったの2.4メートルほどで非常に軽量で、発注から最短3日で製作可能。モダンなデザインの外装は、セメントか、細い材木を縦や横にストライプ状に張ったものとの2種類から選択することができる。
丘の上など斜面に建てたい場合は、支える柱を取り付けて建設することも可能だ。
様々な種類の「DROP box」があるが、大きいものはキッチンやトイレ、シャワーも付いており、4人家族でも十分な居住性だ。白木を基調とした非常にシンプルな作りの内装は、インテリアもシンプルで清潔感漂う空間になっている。白い壁に囲われている部分は、サニタリー部分となっていて、部屋の中心部にあっても違和感がなく、寝室との間仕切りも兼ねている。
建物の背部にサニタリーがあるタイプの「DROP box」は、清潔感のあるトイレとガラス張りのシャワールームが、アウトドアとの一体感を感じ開放感溢れる造りになっている。
ダブルベッドがすっぽり収まる寝室は、側面に大きな窓が取り付けられており、ベッドに横たわりながら、外の景色を楽しむことも可能だ。
2024年3月現在、11種類の「Drop」ハウスが販売されており、円柱型、pod型のDropハウスも発表された。
「どこにでも置ける」という利点があるモジュラーハウスホテルは、ゲストの要望に合わせて様々なところで非日常を体験できる。絶景を独り占めにしたい、波の音を間近で聞きながら眠りたい、オーロラを見たい、時には、冒険に近いリクエストがあるかもしれない。どこでも運べるモジュラーハウスホテルはそんな願いを叶えてくれそうだ。
このようなスモールハウスのプロダクト化が進むことで、多くの人がその思想や合理性に共感し、ミニマリズムの暮らし方も享受することができるのではないだろうか。さらに、自然災害の多い日本では、地震や台風などの災害時の仮設住宅としても活用できそうだ。
via:
https://www.designboom.com/
https://www.dwell.com/
https://in-tenta.com/