ミニマルであることが、かえって暮らしを贅沢に。ニュージーランドの「Cherry Picker tiny house」
ここは南半球、オーストラリアの東側に位置するニュージーランド。
少し前にラグビーW杯のためオールブラックが注目されたが、「人口より羊の方が多い国」としても知られている。
日本と似たような形で北島と南島に分かれており、日本と同じ島国で基本的にどの場所でも海に近い。
今回のタイニーハウスはその東、太平洋側の海岸線沿いの近くに佇み、松の森に囲まれながらひっそりと丘の上にその姿を表す。
このタイニーハウスの名前はオーナーの名前を取り「Cherry Picker tiny house(チェリーピッカータイニーハウス)」。
ここは誰かの住まいとしてではなく、多くの人がミニマルな住まいを体験できる長期滞在者向けのゲストハウスとして建てられた。
豊かな空間で見たい景色を捉えるために
家の大きさは約22.3平方メートルほどとタイニーハウスらしく、こじんまりとしている。
外壁は黒く塗られた軽量のビニル材で壁を貼り、端にアクセントとして白く塗られた杉材を使い、窓のフレームや入り口のフレームとして使っている。そして屋根は赤色の波状の金属屋根で、色の組み合わせも独特で楽しい。
また「Cherry Picker tiny house」は、建てる場所にもこだわり、自然を見渡せる丘の上に建てたのだという。
しかし小高い丘の上に建てられていると、景色が良くなることがメリットとなるが、逆にデメリットもある。例えば、遮るものが何もない高い場所では風が強く吹きやすいなど、自然から受ける影響がとても大きいのだ。
今回のスモールハウスでもそれは例外ではないが、後ろの玄関部分をあえて隠してシェルターを作ることで、強風の影響を緩和している。
そしてこのタイニーハウスは、日当たりや景色の見え方を考慮して、窓を取り付けている。
家の玄関を北向きに設置することによって日当たりの良さを良くする工夫がなされ、計算され取り付けられた窓から入る光に溢れ、白い清潔感が漂っている。
見たい景色や身を置きたい空間の雰囲気を考慮して、建物を配置する場所、窓を設置する場所などをフルカスタマイズできることは、タイニーハウスの大きな魅力の一つだろう。
中に入ってみると清潔感がありつつも木のぬくもりが感じられ、ここでの快適な生活が想像できる。
内装の壁は白い合板を使い、安心感が感じられる。木材の温かみを出しつつも、清潔感を出すのに最適だ。
狭さが生み出す人への優しさ
ミニマルな空間であるものの、中にはキッチンもあり、冷蔵庫、シンク、コンロもあるので生活に必要なものは全て揃っている。キッチンが備わっていれば、タイニーハウスでの暮らしに初めて挑戦する人にとっても安心感があるだろう。
階段は収納スペースとしても活用されている。小さな空間ではあるものの、限られたスペースを最大限に活用することで、生活に必要なものをしっかり準備した上でゲストを迎えることができているという。
この収納スペースも兼ねた階段を上がった2階部分、つまりロフト部分は寝室となっており、ダブルサイズのベッドがすっぽり入るほどの大きさだ。
ベッドの枕部分に窓、そして天井を見上げれば天窓が付いている。
眠りにつくときは綺麗な星空を見ながら眠りにつき、朝が来れば朝日の光がまぶたの上に自然と落ちてくるため、寝起きが悪い方でもすっきりと起きることができる。
また、ベッドは2階部分だけではなく、このソファーも引き出せばベッドに変身するため、
お年寄りや足が不自由な方など、階段を上るのが難しい方でも安心して滞在できる。
狭い空間で快適に過ごすための工夫が、バリアフリーな空間づくりにも寄与しているのだ。
ゲストからは、「実際に暮らしてみると、約22.3平方メートルほどとは思えないほど広々とした生活を送れることに気づいた」との声が上がっているという。
様々な要因が考えられるが、一つはこの家を囲んでいるテラスにあるだろう。この木製テラスは側面の4面のうち2面を囲んでおり、お茶をしたり、ダイニングスーペースとして使えるだけではなく、例えばヨガなどの運動をやるなどいろいろな使い道を考えることができる広さがある。
ここにはシャワーも取り付けられているので、アウトドアで自然を感じながらシャワーを浴びることができる。このシャワーとデッキを活用すれば、子供向けのプールやテントサウナを設置したりなど、趣味を楽しむ場や、大切な人との思い出作りの場としても活躍するだろう。
ミニマルであることが、かえって暮らしを贅沢に、そしてぬくもりが溢れる、人に優しい住まいをつくる。そんな暮らしの在り方を教えてくれているのが、この「Cherry Picker tiny house」だ。
ニュージーランドにはオーストラリアと似たようなタイニーハウスのカルチャーが根付いており、ニュージーランド独特の牧歌的な雰囲気で暮らす生活はまた味わい深いものとなる。
そんな生活を気軽に体験することのできる「Cherry Picker tiny house」のようなゲストハウスがあることは、このようなカルチャーが世代を問わず人々から愛され、守られ続けている理由の一つだろう。
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