おばあちゃんからもらったバンライフ。トラビス・バークの「夢」の恩返し
世界的なアドベンチャー・フォトグラファーとして知られるトラビス・バーク。彼は、おばあちゃんから譲り受けたバンをDIYでレストアして、81ドルの資金で冒険バンライフをスタートした。灰色の無愛想なバンの愛称「ベティ・ザ・グレイウルフ」は、おばあちゃんの名前をとったものだ。
カリフォルニア州サンディエゴのノースカウンティーで育ったトラビスは、サーフィン、スケート、スノーボードが趣味の、典型的な南カリフォルニアの若者の生活を送っていた。趣味のためのお金を稼ぐために倉庫で働いたり、バスボーイをしたり、食料品の袋詰めなど、様々な職業を経験。消防検査会社では、真夜中のレストランの換気システムに這い上がって、換気口の内側からグリースをこすり取る悲惨な作業に従事していた。
退職した両親が西海岸の長距離自然歩道をハイキング旅行していたとき、トラビスはヨセミテ国立公園で2人と会う際に、一眼レフカメラを購入。帰宅後には、コミュニティカレッジに入学して、様々なワークショップに参加した。その後、インターンとして働き、プロの写真家のアシストを通して、写真のスキルを身に着けた。
そしてある日、テキサスのベティおばあちゃんから電話がかかってきた。
「前庭に古いキャンピングカーのバンがあるけど、取りに来れるならあなたに譲るわよ」
それがゲームの始まりだった。
トラビスは飛行機でテキサスに飛び立ち、おばあちゃんをめいっぱいハグして、バンを手に入れた。数ヶ月間実家で過ごした後、持ち物のほとんどを売り払って、バンを移動式の住居兼写真スタジオに改造。バンの内部をレストアし、バッテリーとコンピューターを充電するために屋根にソーラーパネルを設置、メカニックを調整して、DIYで機能的な快適さを実現した。
トラビスは、銀行口座に81ドルを入れると、アドベンチャー・ロードトリップにでかけた。西海岸からカナダに向かい、バンクーバー島でサーフィンを楽しんだ。それから東に向かい、アルバータ州からアメリカ北東部へと走り、紅葉の変化をカメラに捉えた。
「決まった旅行スケジュールはありませんでした。パートナーもいなかったので、実際に到着してから次のプランをつくっていました」とトラビスは言う。
旅の途中でトラビスのキャリアが開花し始める。彼はアンバサダーやスポンサーフォトグラファーとして様々なブランドと仕事をすることができるようになってきた。十分な収入を生み出すことで、4年間のバンライフを送れる自由を手に入れた。
トラビスは、「ベティ・ザ・グレイウルフ」に乗って全米各地を旅した。秋にはバーモント州の裏道を訪れ、満天の星空の下で美しい橋を撮影した。ワシントン州では危険ながらも驚くほど美しい氷の洞窟を撮影し、ユタ州では何ヶ月もかけて世界で最も長く深いスロットキャニオンを探索。トラビスの息を呑むような写真は、自然界の果てしない美しさを表現している。
トラビスは現在、サンディエゴの固定された住宅に住んでいる。写真ビジネスは順調で、長年の友人4人をサポートするために、彼らをスタジオに雇うこともできた。
「本当にすべておばあちゃんのおかげだと思っています。バンがなければ、人生で飛躍を遂げ、夢を追いかけることはできなかったでしょう。
わたしのキャッチフレーズは『情熱的に生き、夢を追いかけよう』です。おばあちゃんは、わたしに夢を追いかけるチャンスを与えてくれました。そして今わたしは、他の誰かの夢を追いかけるのを手伝う立場にあります」とトラビスは語る。
トラビスは2018年に、「究極のストーリーテラーコンテスト」を開催。写真家、作家、ビデオグラファーなど、あらゆるタイプのクリエイターが対象だ。優勝者には、カスタムバン「ベティ・ザ・グレイウルフ」と6,000ドル相当の機材、そしてトラビス本人のコーチングのチャンスが与えられた。
一台のバンが変えた、一人の男の人生。
小さな移動する空間が眠っていた好奇心を開花させ、夢を叶えるきっかけになるかもしれない。