オブジェのような建築廃墟。ローマ近郊で朽ちていく「カーサ・スペリメンターレ」
ローマ近郊の海辺の歴史的な町フレジェネに、隠された建築廃墟がある。宇宙的とも未来的とも見えるオブジェのような建造物は、異次元世界の雰囲気を醸している。
この「カーサ・スペリメンターレ(実験の家)」は、イタリア人建築家 ジュゼッペ・ペルジーニ、妻のウガ・デ・プレザン、そして後に息子のレイナルド・ペルジーニによって、1968年から1975年の7年間かけて建てられたものだ。
別名カーサ・アルベロ(ツリーハウス)として知られるこの建物は、フレジェネの海岸近くの松林の中に、週末の実験的な別荘として建設された。1995年に建築家が亡くなって以来、この建物は廃墟と化しており、遠い過去から忘れ去られたランドマークとなっている。
カーサ・スペリメンターレには、打放しコンクリートなどを用いた彫刻的な建築表現である「ブルータリズム」の斬新な建築技術が実験的に使用されている。建築家のペルジーニは、1960年代から、コンピュータプログラミングを建物の設計に適用することを最初に検討した建築家の一人。ペルジーニにとってカーサ・スペリメンターレは、回転構造とプレハブ要素のアーキテクチャの可能性を調査するプロジェクトでもあった。
樹木の中に高くそびえ立つカーサ・スペリメンターレは、立方体と球体のモジュールからなる建物が、コンクリートの枠組みの中に、幾何学的に組み合わさっている。モジュール構造により、住みながら自由に拡張することができるように設計されているのだ。
メインの建物と地上を結ぶ赤い階段は、吊上げ橋のように地面から引き上げることができ、離陸する宇宙船のように誰も中に入ることができなくなるという。
球体の部屋は、メインフレームからぶら下がっているものと、敷地内に別の場所にある直径5mの離れのゲストハウスの2つがある。
メインの建物は、立方体の透明なウィンドウボックスを散りばめた、積み上げられたコンクリートボックスを特徴としている。
内部は、寝室、キッチン、バスルームで構成され、2つの部屋を含む3つの3mのキューブのモジュールで区切られている。バスルームは3mx1.5mの2つのモジュールで区切られ、大きな円形の窓から中を覗くことができる。
カーサ・スペリメンターレは、しばしば破壊行為の対象になり、若者たちの落書きの遊び場になっている。コンクリート上部構造の金属結合部分のいくつかは、構造的破損を起こしているという。
建築家・研究者のパトリック・ウェーバーとサビーネ・ストープは、不安定な状態にあるカーサ・スペリメンターレの建築の威容さを総合的に記録するためにデジタル保存に取り組んだ。「カーサ・スペリメンターレは、実験的な建築の傑出した例です」と彼らは言う。
ウェーバーとストープは、写真家のアンディ・タイと3Dスキャン会社 ScanLABと共同で、カサ・スペリメンターレの3Dモデルを共同制作した。
「カーサ・スペリメンターレは、放置されその物語が永遠に失われる前に、世界中の専門家や研究者がそこから学ぶことができるように、デジタル化される価値のある建築です」と2人の研究者は述べているという。
カーサ・スペリメンターレの3Dプロジェクトは、2019年にシュトゥットガルトのヴァイセンホフギャラリーで開催された『バウハウスの100年』のイベントのオープニングに展示された。