世界と自分を切り離してみる。一人の時間を味わうためのタイニーハウス「Birdbox」
ここはヨーロッパ、北欧のノルウェー。
北欧神話が息づき、サマーハウスなど古くからスモールハウスやミニマリズム的な価値観が根付く国だ。
この人里離れた丘、いや、崖の上にポツンと置かれているのが「Birdbox(バードボックス)」。
ノルウェーの建築会社「Livit(リビット)」の共同創設者であるTorstein(トルステイン)によってデザインされたスモールハウスだ。
世界と自分を一度切り離して、一人きりの夜を過ごせる空間を
キュービックな四角フォルムの真ん中に丸い鏡のような大きな窓が取り付けられ、非常に近未来的なデザインという印象を受ける。
そのような近未来的なデザインをしている一方、設計方法としてプレハブ形式という伝統的な方法で現地で組み立てることなく運ばれてくる。
このBirdboxは2タイプあり、7.6平方メートルのMiniと12平方メートルのMediがある。
サイズも小さく、簡単に運搬が可能なため、このような僻地にも置くことができる。
今回のケースではヘリコプターを使用し、運搬したようだ。
コンセプトは、「世界と自分を一度、切り離して、一人きりの夜を過ごせる空間を」というもの。
こう聞くと少し寂しいようにも聞こえるが、現代においては誰ともとつながっていない状況を作る方が難しく、大自然を身近に感じられていない人々が多い中、このようなスモールハウスとその経験全体は非常に貴重なものだ。
絶景、そして災害と共にあるBirdbox
ご存知の通り、ノルウェーは気温が低い。
そのため、Birdboxは断熱材をふんだんに使用し、雪が降ろうとも、強風に晒されようとも、天候に左右されない頑丈なフィルターとしても利用ができるそうだ。
また、大自然の変わりやすい気象条件から守るため、防水パネルを採用しており、非常に堅牢で、構造もシンプルなため、メンテナンスに驚くほど手間がかからない。
外から見える円窓を中から覗くとこのような景色を楽しめる。
正面と側面に大きな円窓があり、そして、それがフレームとなり外のノルウェーの大自然を丸く切り取っている。
ノルウェーのフィヨルドの絶景を独り占め。
これ以上の贅沢は他にないだろう。
この小屋は地面に基礎などを作りその上に建設しているわけではなく、細長い鉄柱を足として、その上に水平になるように固定するという方法をとっている。
これにより、周りの自然に与える影響を最小限にして、それだけで自然に優しい家となる。
また、ソーラーパネルを取り付け、そこから電力供給をしているため、オフグリッドハウスとして機能し、環境にも優しい。
だからこそこのような僻地であっても、住める環境を作り出せるのだ。
トイレやシャワーなど洗面所はオプションとして写真の細長いボックスのように付けられる。
一人の時間をもっと濃密なものにするために
現在はノルウェー、北ノルウェーのFauske(ファウスケ)とLangeland(ラングランド)にこのBirdboxがあり、LivitのCEOであるAsbjørn Reksten Stigedal(アスビョーン・レクステン・スティゲダル)によれば、今後ノルウェー各地にこのような小屋を設置し、もっと多くの人にこの小さな空間と共にある特別な時間を体験してもらいたいというビジョンがあるそうだ。
在宅ワークを行う中で、人と出会い、交流する機会が少なくなっていることに戸惑っている人もいるのではないだろうか。
さらに、コロナ下において、なかなか外に出ることができず、辛い思いをした経験のある人も少なくないだろう。
しかし、このようなスモールハウスは、たとえ他人と会うことが出来なくても、密を避けなくてはならなくても、一人でいる時間を、非常に濃密なものへと変えることが出来る。
一度このような体験をすれば、自分が本当に何を望んでいるのか、どんな時間を過ごすことに心地よさを感じるのか、ということも見えてくるかもしれない。
「精神と時の部屋」のような修行とまではいかないまでも、現在の状況を逆手にとって、環境を変えてみるのもいいかもしれない。それが近くにあるノルウェーの人たちを羨ましく思う。
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