「お茶でも飲みな」「これ食べて」千葉で出会った愛あるおせっかいを広めたい

みなさんは、人とすれ違う時にあいさつをするだろうか?

田舎に住んでいる私は、あいさつはする派だ。ランニング中すれ違った人や、狭い田舎道を車ですれ違う時に、軽く頭を下げるポーズをする。

対して、都市に住んでいる人はどうだろう。毎日何十人、何百人とすれ違うなか、全ての人にあいさつをして会釈をするのは不可能だ。

かくいう私も、都市部に住んでいたときは誰にもあいさつなんてしなかったし、周りもしていなかった。

だからこそ、千葉という都会で、フツーにあいさつが交わされていることに驚いたのである。

私たち、どう見ても旅行者(よそ者)ですが…

「千葉だって、知り合いには声かけることはあるよ」なんて意見が来そうだが、当時の私(&友人)は100%観光客だった。

誰もいない道もずんずん進んでゆく

・佐倉の観光マップを広げたまま住宅街にたたずむ
・整備されていない農道を歩いて酒蔵へ向かう
・成田の観光マップを広げて次の行き先を言い争う
・千葉名産のピーナッツをガラス越しに吟味する

正直なところ、私が住んでいる田舎では、こういった旅行者に声をかける習慣はあまりない。集落内の人間以外は「よそ者」として認識しているためだ。

対して、佐倉の人びとは気さくに声をかけてきた。

佐倉のお土産屋さんで、イワシの缶詰を買ったとき。「あの、この後歴博(国立歴史博物館)に行かれますか?タダのチケットがあるんですけど」と話しかけてくれたレジのお姉さん。佐倉が誇る国立歴史博物館の良さを、多くの人に知ってほしい-というのは建前で、余っているチケットを期限内に配り切ってしまいたいのだという。

佐倉の商店街でピーナッツを吟味していたとき。「ピーナッツは食べて初めてわかる。手出してみなさい」と、手のひらいっぱいにピーナッツをくれたご主人。ピーナッツのなかでも特別な「なた豆」とコーヒーをご馳走になり、帰りにお土産用ピーナッツまでいただいた。

店主の方がわざわざ解凍して出してくれた、特大サイズのピーナッツ

酒々井(しすい)で直売所と誤って侵入してしまった農家さん。「おいしいから持っていきなよ」と、袋めいっぱいに入ったイタリアのそら豆をくれたお兄さん。野菜の声を聞けばわかるんだ、と食べさせてくれたさやえんどう、とんでもなく甘かった。

おせっかいって、いいかも。

一緒に行動していた友だちは不思議がっていた。「どうしてみんな、ただの旅行者と関わってくれるんだろう?」

答えがわかったのは、成田だった。

千葉旅行中、成田周辺の人混みにフラフラになったわたしたちが流れ込んだのは、涼し気なバルのカウンター席。そこでもやはり、たまたま横の席になった人が、観光マップの読み方を教えてくれた。

ランチのパスタがたいへん美味しかった…

おすすめの行き先を聞けば、友人だというバルの店長に聞いてくれる。佐原の街並みがいいよ-と教えてくれた後に、こう言った。

「おせっかいだよねえ」

ハハッと笑って流れた言葉だったが、なんとなく腑に落ちた。

これまでにわたしたちが出会った千葉の人たちは、わたしたちにおせっかいを焼いてくれていたのかもしれない。

この子たちは今困ってるんじゃないか、あれが役に立つんじゃないか…そんな知恵をはたらかせて、わたしたちを助けようとしてくれていたのではないか。

そう思ったとき、なんだか面白くてニヤついてしまった。そして、私も誰かをこうやってニヤつかせたい、とも思った。

「愛あるおせっかい」を連鎖させてゆけ!

おせっかいされる方はカンタンだが、おせっかいする方は大変だ。おせっかいする側はされるのを待つだけでいいが、する側はおせっかいを行動に移す必要があるからだ。

だけど、一度おせっかいしてもらえたら。一度関心を持ってもらえたら、自分が誰かにおせっかいするのはそう難しくない気がする。

佐倉、成田、酒々井で受け取ったナイスなおせっかいを、わたしは地元で広げていけたらと思う。あなたもここに遊びに来たら、急に話しかけられるかもしれません。



QUOTE

だけど、一度おせっかいしてもらえたら。一度関心を持ってもらえたら、自分が誰かにおせっかいするのはそう難しくない気がする。