未来の街並みを眺めるパリのバルコニー

家とは、箱か。否か。

マグニチュード6以上の地震が、全世界の20%も発生する日本。
さらに密集する木造建築は火災も起こりやすく、海や山に囲まれている場所では津波や土砂崩れももちろん起こるこの国では、家というものはいつか壊れるものとう印象が強い。

一軒家に関しては、新築が最も高く売り買いされ、中古の値段はかなり下がってしまう。どこかで、家は消費物としてのイメージを自然に持っている人も多いはずだ。適齢期になったら、買う。大学に通うために、借りる。その居住区で生きるための箱。

photo by Misa Sugiyama

日本に対し、欧州は古いまま残っている街並みに価値があるとされ、街の景観に対する意識が高い。
とくにフランス・パリにフォーカスすると、街を眺めることができるテラス・バルコニー付きの不動産がなんと全体の21%に及ぶ。これは、自分の買う家が街並みをつくるという意識が、街を眺めることができるテラスやバルコニーを生活の中で重要視するということに表れているように感じられる。
その窓辺で、朝食を食べたり本を読んだり、ワインを乾杯する。そんな暮らしの楽しみの一部には、街並みを眺められることも要素のひとつなのだろう。

photo by Misa Sugiyama

パリという街ができるまで

17世紀以前、パリでは現在と違ってほとんどの住宅が木造だった。
しかし、ロンドンの大火事などの影響で、「密集した都市部では木造建築が大火の原因になる」とされ、街路沿いの木造建築が禁止に。そのため、建物構造が木造から石造りやレンガ造りへと転換していき、現在のような石造りのアパルトマン(マンション)が街を占めるようになった。

photo by Misa Sugiyama

さらに、街の景観を維持する目的で道路幅に応じて建物に高さ制限が設けられ、屋根の傾斜や外観の規制も定められた。これにより、街の建物の高さが統一され、均整のとれた街並みが作られるようになったそう。
アパルトマンの階数は屋根裏を入れて7階建てが一番多く、ベランダは3階と5階のみに設置するという細かい規制も。美しく、今でも多くの観光客が訪れる街並みには、厳格なルールが定められている。

photo by Misa Sugiyama

パリをはじめ、そういった美しい街並みの中の不動産は、築50年、100年といった物件も売買されるなど、価値が認められている。
これらのアパートを購入し、DIYをしたり、ペンキで壁を塗り替えたり、と自分だけの家に変えていくのは、よくあること。

不動産だけでなくインテリアも同じで、イタリアやオランダ、フランスはアンティークの家具は高値で取引される。長年愛されてきたものというものは、その国の文化を残すことにもつながるのだろう。

photo by Misa Sugiyama

私たちの選ぶものが街をつくる

消費する対象としてではなく、日本の街並みを、自分が作るのだという愛着を持って暮らしていくこと。
これは、私たち日本人が取り入れるべき新しい形なのではないかと思う。

新型コロナウイルスの流行により、リモートワークは珍しい働き方ではなくなった。フルリモートで仕事をしている人も増えた今は、暮らしに関する意識が変わっていくチャンスなのかもしれない。
新しいものを安く買う。安ければ安いほどいいという消費活動ではなく、私たちや、私たちの子どもたちが生きる未来に、どういったモノを残していくのか。

それは、「どんなインテリアを使っていくか」なのかもしれない。木材よりも成長スピードが速く、エシカルな素材として注目されている竹や、何度も使えば使うほど味を増していく麻など、暮らしの道具の素材選びも、選択肢が広がる。
それは、「どんな家に暮らすのか」なのかもしれない。経済活動は数値化され、選ばれる確率の高いものが新しく作られる傾向がある。自分が選んだものは、そのまま時代を作っていく。

photo by Misa Sugiyama

街を、作っているのだ。誰もが。
私たちが暮らし、未来に残す街を作っているのだとしたら、どんなものに価値を感じ、どんなものを選んでいくのか。

パリでは、朝一番に窓を開け、街並みを眺め、つい笑顔になれるバルコニーというものが、過去の人々が選んできたものを見せてくれているのだろう。

 

参照元

https://wealth-park.com/ja/wealthpark-blog/20200604_parisian-real-estates/https://www.parisperfect.com/blog/2021/06/paris-balconies/https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary12https://laferme-online.com/2020/10/03/france-lifestyle/https://allabout.co.jp/gm/gc/29018/



QUOTE

私の暮らしが、街をつくる。街を、作っているのだ。誰もが。
私たちが暮らし、未来に残す街を作っているのだとしたら、どんなものに価値を感じ、どんなものを選んでいくのか。