まるで実家のような温かさ。シニア×若者でつくる歳の差シェアハウスとは

一人暮らしにはメリットが多くあるが、課題もある。なかでも難しいのが家賃と孤独との向き合い方だ。

家賃に関しては、都内在住の方は特に「高い」と感じているかもしれない。23区内でもっとも高いのは港区の23.4万円、最安の足立区でも10.1万円ほどになる(2023年大和リビング調べ)。大卒の平均給与が23万円代であることを考えれば、給料の半分は家賃に飛んでしまうかもしれないのだ。

では、安くて手ごろなアパートを見つけ、十分な給与や年金をもらっていれば一人暮らしは快適だろうか?快適だと答える人もいれば、孤独に悩む人もいるだろう。一人暮らしをしていると、家に誰かがいる安心感や喜びを分かち合う機会が恋しくなることもある。

一人暮らしするなら、ある程度の出費と孤独には耐えるべき、なぜならどうしようもないから!と考えがちだが、実は家賃と孤独を一度に解決する夢の暮らし方が出てきている。それが、シニアと若者をつなぐシェアハウスだ。

シニアの孤独を学生で、学生の家賃をシニアの空き部屋で解決

60代といえば、子どもたちが家から巣立ち、家庭を持ちはじめるころ。同居していた親は逝去し、パートナーまたは1人で暮らし始める人が多い世代だ。かつて子どもたちや親たちと同居していた家の部屋が余りはじめ、掃除や管理のわずらわしさからアパートやグループホームに移る人もいる。

対して、10代から20代の学生は、都心の学校で学びを深めたいものの、都心の高すぎる家賃を払えず物件探しに苦しんでいる。学校まで数時間かかる下宿しか選べなかったり、家賃を払えず上京事態をあきらめることもあるだろう。

そこで、シニアの空き部屋と若者たちの家賃事情を組み合わせて、一緒に住みませんか?という新たな試みが生まれた。

例えば、アメリカのボストンに住まうある60代女性は、空いた部屋を月700ドル(日本円で約100,338円)で25歳の女子大学生に貸し出している。2023年時点のボストンのワンルーム価格が月2,300ドル(日本円で約329,682円)ということを考えれば、いかに安いかが分かるだろう。

via:https://www.washingtonpost.com/lifestyle/2022/07/15/multigenerational-housing-roommates-nesterly-senior/

同居の条件は、たまの買い出しとガーデニングを手伝ってもらうこと。一人暮らしだった60代女性は同居する若者から刺激をもらい、毎日が楽しいという。対して同居する若者も、60代女性を「本当の家族のよう」と述べ、かれこれ3年間同居しているのだという。

日本でも進んでいる「シニア×若者」のマッチング

シニア×若者のマッチングは、アメリカだけの話ではない。実は日本でもいくつか取り組みがおこなわれている。有名なのが、京都市内の銭湯に家賃・光熱費無料で住まいながら、番頭や風呂掃除をうけおう街銭湯の取り組みだ。

仕組みはシンプルで、銭湯は学生に空いている部屋を無料で提供し、学生は家賃を払わない代わりに風呂の掃除当番を受け持つ。毎日おこなうのではなく、住み込みしている学生数人でシフトを組み、週に2日ほど深夜帯の掃除を担当するのだという。

via:https://mainichi.jp/articles/20210622/dde/018/070/011000c

銭湯側の「深夜帯の風呂掃除のバイトを確保するのが難しい」という課題と、学生の「家賃の高い京都に住まうお金がない」という課題を掛け合わせて解決している。この取り組みは、銭湯が創業した20年前からおこなわれているというのだから驚きだ。

近年の物価高騰や後継者不足により、銭湯は姿を消しつつある。そんな日本文化としての先頭を守るという意味合いでも、シニア×若者のマッチングが役立っているといえそうだ。

京都に限らず、1サービスとしてシニアと若者をマッチングさせる全国サービスを展開する日本企業もある。高齢化が進む日本において、シニアの認知症予防や若者の固定費対策として、これ以上ない解決策ともいえそうだ。

住まいの悩みを掛け合わせて最高の解決策を生み出そう

一人暮らしのシニアはグループホームに入ればいいし、一人暮らしが難しい学生は奨学金を借りればいい…ひとつの問題だけにフォーカスすると、それ単体を無理やり解決するような考えしか出てこないことがある。

家が余ったシニアと、家を探す若者。それぞれの課題を組み合わせて考えたとき、問題解決以上の解決策を生み出せることがある。「一人暮らしはこんなもの」と決めつけず、柔軟な考えで住まいの問題に取り組んでいくことが大切だ。

参考サイト:
The Washington Post.”One roommate is 85, the other is 27. Such arrangements are growing”.
https://www.washingtonpost.com/lifestyle/2022/07/15/multigenerational-housing-roommates-nesterly-senior/

Your Stay.
http://your-stay.com/

D-room.”東京都の家賃相場”.
https://www.daiwaliving.co.jp/chintai/tokyo/souba/2/

エイブル.”ボストンの家賃相場について”.
https://able-nw.com/boston/guide/rent/

毎日新聞.”なにコレ!? 京都の銭湯、学生と共存 風呂掃除担当、家賃・光熱費は無料”.
https://mainichi.jp/articles/20210622/dde/018/070/011000c